発症7日以内に3つの条件を満たした脳卒中後患者の95.2%の痙縮が強まる
▼ 文献情報 と 抄録和訳
脳卒中後遺症『痙縮』の早期臨床予測因子
Glaess-Leistner, Stefanie, et al. "Early clinical predictors of post-stroke spasticity." Topics in Stroke Rehabilitation (2020): 1-11.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[背景と目的] 脳卒中患者の40%が脳卒中後の痙攣(post-stroke spasticity: PSS)を発症し,疼痛,拘縮,姿勢障害などの難治性合併症を引き起こす。PSSの管理には早期の発症が最も重要であり,臨床現場ではPSSの早期発見が求められている。
[方法] この前向き観察コホート研究は、脳卒中後の急性期(7日以内)にすでにPSSの早期予測因子を特定するために、PSS評価の高い基準と、可能性のある予測因子を調査する包括的なプロトコルを用いて行われた。PSSは、脳卒中後7日以内と3カ月後に、Ashworthスケールに基づいて、上肢と下肢の主要な関節運動に対する抵抗感をREPAS(Resistance to Passive movement Scale)で評価した。PSSの予測因子を見つけるために、有意な臨床パラメータを用いた二値ロジスティック回帰分析を95%の信頼区間(CI)で適用した。
[結果] 145名の初発脳卒中患者のうち、34名(23.4%)がPSSを発症した。MRS(Modified Rankin Scale)、NIHSS(National Institutes of Health Stroke Scale)、MMSE(Mini-Mental State Examination)がPSSの強力な臨床的予測因子であった。MRS>2(オッズ比(OR):56.538、95%CI:17.150-186.394)、NIHSS>2(OR:57.137、95%CI:15.685-208.142)、MMSE<27(OR:6.133、95%CI:2.653-14.178)の組み合わせは、PSSの陽性適中率(95.2%)を示した(感度94.4%、特異度93.3%)。
[結論] 信頼性と妥当性のある評価尺度を用いてPSSそのものを評価する以外に、脳卒中病棟の診療で一般的な臨床尺度(NIHSS、MRS、MMSE)を用いることで、PSSのリスクが高い患者を早期に特定することができる。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
脳卒中の後遺症である痙縮・痙性は、非常に厄介な症状の1つである。
強い痙縮・痙性によって関節可動域が制限される、随意運動が制限される、さらに強まれば疼痛も出現してくる。
脳卒中後のリハビリテーションの効果を減衰させる要因の大きな1つだ。
急性期(発症7日以内)に脳卒中症状全般(NIHSS)、全般的介助量(MRS)、認知機能(MMSE)についてのカットオフ値以下が3つそろった患者の95.2%が痙縮を強めるという。
「脳損傷部位もかなり関わっている」という認識を持っていたので、それが全く予測に関わらない中で95.2%は驚きである!!!、と同時に「これは眉唾物である」という意識も少しある・・・、と思った。
初見でそのように思ったのだが、「陽性適中率」であることに解釈上の注意がある。陽性適中率とは、今回の研究でいえば、「3条件すべてに当てはまった人の95.2%が痙性・痙縮+となるよ」ということ。つまり、かなり狭いストライクゾーンに来れば95.2%ホームランにできるよ、という感じだ。図で見た方が分かりやすい。百聞は一見にしかず。
この論文の中に、3条件全てを満たした人数をまだ見つけることはできていないのだが、20-30人程度だろうか。その20-30人の中の話をしているので、それ以外の110人については、関係のない話であることに解釈上の注意が必要なのだ。
近年では、痙縮に対する効果的な介入方法も少しずつ確立されつつある。初期段階から着手できれば、痙縮という悪魔を除けられる世界に近づくかもしれない。
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