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ストレッチはストレッチしていない箇所の可動域まで増大する

▼ 文献情報 と 抄録和訳

健康な成人の可動域に対する非局所的な急性受動ストレッチの効果;システマティックレビューとメタアナリシス

Behm, David G., et al. "Non-local acute passive stretching effects on range of motion in healthy adults: a systematic review with meta-analysis." Sports Medicine (2021): 1-15.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 筋肉をストレッチすると、ストレッチされた筋肉や関節の伸展性や可動域(ROM)が増加するだけでなく、対側やその他の非局所的な筋肉や関節のROMが増加するという証拠が増えている。

[目的] 本メタアナリシスの目的は、片側ストレッチを行った後の受動的ROMのクロスオーバーまたは非局所的な変化を定量化し、潜在的な用量反応関係を検討することである。

[方法] 14の独立した測定法を含む11の研究が組み入れ基準を満たした。メタアナリシスには、性別、トレーニング状態、ストレッチの強度と時間などの調整変数を含めた。

[結果] 解析の結果、片側受動静的ストレッチは、非局所的な非ストレッチ関節の受動的ROMを中等度(研究内の標準平均差:SMD:0.86)に増加させることが明らかになった。性別、トレーニング状態、ストレッチ強度、持続時間などの調整変数は、結果に影響を与えなかった。ストレッチ時間には統計的に有意な差は見られなかったが、240秒以上のストレッチ(SMD:1.24)では非局所的なROMが大きく増加したのに対し、120秒以下の短いストレッチ(SMD:0.72)では中程度の改善が見られた。

[結論] 1つの筋群に対して受動的に静的ストレッチを行うことで、中程度の大きさの全体的なROMの増加を引き起こすことができる。ストレッチ時間が240秒以上の場合は、それより短い場合に比べて大きな効果が得られる可能性がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

これは画期的な介入方法を提案する研究だと思った。この方法を用いれば、ROM練習禁止や疼痛が強い箇所の対側をストレッチすれば中程度のストレッチ効果が得られる可能性がある。すなわち、ストレッチングによる弊害を最小限に抑えながらストレッチ効果を得ることができるかもしれない。健常者を対象とした研究を [A systematic review] [Meta-analysis]しているため、筋骨格系障害者、高齢者、脳卒中者などを対象とした場合の結果が気になる。