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神経筋コントロールの『スタイル』

▼ 文献情報 と 抄録和訳

『Perceptual-motor styles』という新概念

Vidal, Pierre-Paul, and Francesco Lacquaniti. "Perceptual-motor styles." Experimental Brain Research (2021): 1-22.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[レビュー内容] ※Perceptual-motor → 神経筋コントロールと訳す
定型的な課題であっても、ノイズ、冗長性、適応性、学習、可塑性などにより、神経筋コントロールの行動は一般的に変動する。近年、様々な種類の行動変動の原因と意義が注目されている。しかし、この変動性の一部が個人のユニークな戦略に依存しているという考えは、あまり検討されていなかった。特に、神経筋コントロールの文献には「スタイル」という概念があまり出てこない。

一般的にスタイルとは、ある人、あるグループ、ある場所、ある状況、ある時代に典型的に見られる、自分自身や何かを行う際の特徴的な方法や習慣のことを指す。この言葉を神経筋コントロール現象学の領域に適用することで、行動の変動性の性質について、神経筋コントロールの変動性の研究で一般的に検討されてきたものを補完する新たな視点が生まれる。特に、スタイルの概念は、個人の行動や異なる刺激や治療に対する反応のマーカーを提供することで、個人に合わせた生理学や医学の開発に役立つ可能性がある。

ここでは、神経筋コントロールスタイルの概念を神経科学のさまざまな分野に応用する可能性について、健常者と疾病者の両方を対象に取り上げる。神経科学における神経筋コントロールスタイルという用語の導入が比較的目新しいことから、関連性の薄い研究を包含する危険性を冒してでも、検討するアプリケーションのタイプをできるだけ一般的にしたい。

<SuperHuman’s Pick up points>
・自由度の問題(**参考site)を解決する個人特異的な神経筋コントロールのスタイルがある
・芸術やエンターテイメントの分野では、スタイルという概念は、「何を」「なぜ」「いつ」「どこで」ではなく、「どのように」作品を実現するかを示すものとして伝統的に用いられている(★Vidalらは「スタイル」という用語を数多の視点から歴史的に紐解いている)
・各感覚モダリティ(視覚・体性感覚・前庭感覚)の神経筋コントロールに対する役割
・【面白い!】歩行の動き方による個人認証;『歩行認証』(たとえば下図の3人の歩き方は全然違う)
・運動学(キネマティクス)と脳活動を同時に計測すると・・・

スクリーンショット 2021-09-06 6.20.55

3人の被験者の姿勢構成を矢状に描いた棒グラフ(上から順に)。左から順に、快適な歩行、時速4kmでの歩行、レースウォーキング、ランニング。太い赤い横棒は頭部の動きを、その他の線は体幹と脚の動きを示している。
>>> Mantilla et al.(2020)

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

顔はあまり好きじゃないんだけど、なんかかわいい(かっこいい)んだよね。
写真と実際が、全然違いますね!!!
第一印象は「変なやつ」、けどあの雰囲気はなんだろう、触れるたび惹かれる。

こういった現象を引き起こす要因の1つが、「仕草」「動き方」自体の価値だ。

顔のパーツは決まっている、だけどその動かし方がかわいい(かっこいい)。
そのノートのめくり方が、手の動かし方が、なんだかかっこいいんだよね。
ヌーっとした感じなのに、一旦ドリブルをしはじめると和製メッシ!

などなど、静的と動的ではぜんぜん印象が異なる、ということがしばしばある。
骨格の形状、筋力、関節可動域、感覚機能などImpairment Level以下のファクター。
それら材料を収束・統合・活用した歩行・走行・パフォーマンスなどFunction Level以上の構造物。
身体機能というファクターから動作という構造物をつくっているのが、そう!、『個人』だ。
あなただけの『つくり方』という1個独立した価値が存在する。
その守備範囲は、運動制御・神経筋コントロールなどと呼ばれ、運動学習によって改変されうる。そして、そこには個人特異的な「癖」「認証可能な指紋(例えば歩行認証)」のようなものが存在している。
それこそが・・・、『Style;スタイル』

歩行時に前足部荷重が少なく、長軸への過負荷が加わる時間が長いことで、F-T joint由来の膝関節疼痛が発生している。
前足部荷重を可能にする骨格形状、関節可動域、筋力、感覚などのファクターは揃っている。
歩行に対する運動制御戦略の改変が望ましいと考えられる。

上記のような状況があったときに、

歩行のスタイルを変えたほうがいいかもね。

という話が職場内でできれば、そしてその意味が瞬時に共感される共同体があったとしたら、大変スマートだ。
またまた、名付け(ネーミング)の威力が発揮されている。

それにしても、著者らはこのレビュー論文に、この『神経筋コントロールのスタイル』という考え方に、人生の重心をどれほど傾けたのだろう?
なんという長文!、なんという引用文献数(283)!
高級酒を、ちびちびと飲むようにしてレビューし続け・・・、早、4ヶ月!!!泣 #下戸デス
Vidal先生!!!、ぼくは、あなたのリハ医学界に対する『スタイル』に敬服せざるを得ない。

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【あり】最後のイラスト

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