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生長マインドのドメイン: (1)マインドドメイン

前回は、生長マインドの定義と概要について説明しました。
キーポイントを振り返ります。

・生長マインドとは、「自らの生長を信じきる心」
・対義語として、硬直マインドがある
・生長マインドがあるから、臨床研究ができる
・生長マインドは、性善説であり、信頼である

前回までの話で、ざっくり生長マインドのイメージを持っていただけると思います。
今回は、生長マインドのドメイン(構成要素)について考えてみます。

▶︎生長マインドのドメインには2つのマインドドメインと3つのアクションドメインがある

世の中には2つのものがあります。
目に見える(Visible)ものと目に見えない(Invisible)ものです。
では、心(マインド)は目に見えるでしょうか?

例. ゴミ拾いをしている人
行動(Action):ゴミ拾いを熱心にしている
心(Mind):社会に貢献したいという心を持っている(のだろう)

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この例からわかるように、心は直接的に目に見える観察可能なものではありません。
しかしながら、一般的に、アクションは、マインドから始まっています。 #認知的不協和の視点は忘れて
社会に貢献したいというマインドを持っているから、ゴミ拾いをする、という順番で考えるのが普通です。 #少なくとも今はそう考えて
この例で考えると、「ゴミ拾いを熱心にしている」→アクション、「社会に貢献したいという心を持っている」→マインドです。

御多分に洩れず、生長マインドにも、マインドドメインとアクションドメインの2つの領域があります。
全体像は、以下の図の通りです。

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今回は、生長マインドの根幹である2つのマインドドメインについて考えていきます。

▶︎マインドドメイン1:『自変』

生長マインドを考えるうえで、最重要なドメインであり、ほぼこれがすべてです。
なぜなら、『自変』は生長マインドというベクトルの方向性を指し示すものだからです。
もう一方のマインドドメインである『自信』は、決まった方向性への量的な大小に過ぎません。
生長マインドとは、一体どういう方向性のものなのかを規定しているのが、『自変』です。

定義:『自変』とは、自分自身が動き、変化・生長できるという心の方向性

1つ例をあげましょう。
鳥井信治郎、言わずと知れたサントリー創業者が、はじめてウィスキーを飲んだときのエピソードです。
ちなみに、サントリーは、「日本では絶対無理!!」と考えられていた本格的なウィスキー蒸溜所を日本ではじめて建設し、国産第一号ウィスキーを誕生させました。
その鳥井信治郎が、はじめてウィスキーを口にしたとき、こう感じたそうです。

その瞬間、喉元が熱くなり、
肚の中をウイスキーがぐるりと一回りしたような感覚がした
息を吐き出すと、鼻の奥からもウイスキーの香りが広がった
信治郎は目の玉を大きく見開いたーこれがほんまにうまいんかな?
『琥珀の夢』より引用

意外ですよね、直感的には「うわ、まずっ!」という感じだった。
ですが、口に出した言葉は、やはり超人的です。

へえ〜、うまいもんだすな。

です。
そのとき、内心では以下のように思っていたそうです。

大丈夫や、同じ人間が、あないしてうまそうに飲んでんのや。
慣れてきたら、あの酒の良さがわかるはずや。

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これが、『自変』です。簡単に説明します。

1. 今の自分と現実世界との間にギャップが生まれる(ウィスキーがまずい)
2. そのギャップを、自分を変えることで埋めようとする([私が]慣れたら良さがわかるはず)

これだけです。このマインドが、『自変』です。

この逆を考えてみましょう。

1. 今の自分と現実世界との間にギャップが生まれる(ウィスキーがまずい)
2. そのギャップを、自分を変えず、現実をねじ曲げる・拒絶する([あなたが]まずいから、もう飲まない)

これ、結構やっちゃいがちですよね。イソップ物語のすっぱい葡萄の話なんかも、これに該当するでしょう。

『自変』の心は地動説的であり、硬直マインドは天道説的です。
天道説から地動説へのパラダイムシフトは、一言で言えば「自分自身が動いて、変わっているんだ、それでいいんだ」です。 #自信を持って飛躍

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そして、この『自変』を持つか、持たないかというのは、はじめにも述べた通り、同一線上の大小の話ではなく、『ゲームチェンジ』の話です。

天動説的思考者のゲームは、模写です。
変わらない自分と、変わっていく外界がある。
この人にできる最良のことは、なるべく良い現実を探して、それを高精度に模写することです。

地動説的思考者のゲームは、原画の創造です。
自分自身が動き、変化・生長できるから、変わっていく外界と自分の間で特異的な1つの原画が生まれうる。
この人にできる最良のことは、最大限個性を発揮して、原画を描く力・感性を磨くことです。

前者は過去をあさり、後者は未来を創造します。

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何度でもいいますが、『自変』は、OSの話であり、ゲームチェンジの話です。

▶︎マインドドメイン2:『自信』

さて、『自変』はベクトルの方向性だと述べてきました。
対して、『自信』はベクトルのスカラー量です。
すなわち、『自変』の強さの程度を示す量です。
仮に、『自変』を持っていたとしても、『自信』が弱ければ、現実の生長や成果を生み出すことができないのです。

面白い例があります。

例. 1マイル4分の壁
1マイルを4分以内で走ることは、物理学的に不可能と思われていた
事実、それまでの37年間、誰一人として破る事ができなかった
ロジャーバニスターは、トレーニングに科学的な知見を持ち込むことで、この常識を覆した
1954年4月6日、オックスフォード大学のトラックで、1マイルを3分59秒4で走ってゴールしたのだ

ここまででも、十分に面白い話です。
ですが、本当に面白いのは、この後です。

一年も経たないうちに、なんとロジャー以外に23人もの選手が
次々と1マイル4分の壁を破るという結果を出した

おそらく、ほとんど全ての選手が、「自分自身が生長して、早くなって、前人未到の記録を打ち立てることができる」という『自変』のマインドを持っているのではないでしょうか。 #そうじゃなきゃ死ぬ気で陸上やっていない
その前提に立つと、違うのは、自信の強さなのです。
ロジャーバニスター記録前は、「とはいえ、ね〜・・・」という感じだったのが、
ロジャーバニスター記録後は、「あっ、実際できるんだ!!、だったら俺にも」に変わったのです。
真の意味で、ロジャーバニスターは世界を変えたのだと思います。
いま、大谷翔平がそうしつつあるように。

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まとめますと、「できそうだな」という『自変』への信頼度の強さが、行動への注力度合いに影響を及ぼしうるということです。
そして、その『自変』への信頼度の強さが、『自信』ドメインです。

▶︎『自変』と『自信』に満ちた人のマインド

ぼくは、この現実から新たに学び、自分が変わることができる!もっともっと生長して未知の自分になってゆける。(自変)
誰がなんと言おうが、ぼくはどんな現実からも生長していくことができる(自信)

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次回 >>>生長マインドのドメイン: (2)アクションドメイン