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アニメ『天官賜福』考察

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もう一度観たくなる? アニメ『天官賜福』一期・二期の解説&考察記事です。過去投稿記事を掲載。随時更新予定です。
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2024年8月の記事一覧

☆18 縮地千里

 今回は解説ではなく、ただの私見による考察。本当にどうでもいいことを長々と考えているだけの話だが、よろしくお付き合い願いたい。  通霊陣で半月関について尋ねようとした謝憐だったが、風師(フォンシー)が気前良く功徳を撒いて取り合いになっていたこともあり、誰も彼に返事をしてくれない。唯一霊文は事情を聞いてくれたが、関わらない方がいいと言われてしまう、「この天界では、追及しない方が良いこともあります」。  通霊を終えた謝憐は、半月関へ行くことを決意する。ついて行きたい三郎は、半月

☆17 空殻(あきがら)

 ようやく信者が出来、戸惑いつつも喜ぶ謝憐の前に、今度は別の村人たちが現れた。彼らはかなり汚れた格好の男を抱えていて、その衣からは砂がこぼれ落ちている。「仙人様。突然見知らぬ人が村へやって来て、その人が死にそうなんだ。助けてやってくれ」  日本語版原作小説(以下、原作と略す)では、「助けてやってくれ」と言ったのは菩薺村の村長だということになっている。道教の道士は薬に精通している者も多いので、謝憐の所へ連れて来たのだろう。仙人様なら不思議な力で癒してくれる、と思ったのかもしれ

☆16 仙楽太子悦神図

 一夜明けて、菩薺観の朝。  謝憐の寝相が面白い。三郎の右側で右を向いて寝たはずなのに、一夜明けると真ん中で左を向いている。三郎の姿はなく、まるで謝憐が寝返りをうってのし掛かり、三郎を追い出したかのようだ。  起き上がった謝憐は、供物卓の上方に掛かった絵を見つける。  この絵は『仙楽太子悦神図』という。天界の「四名景(よんめいけい:上天庭にいる四名の神官が飛翔する前の美談)」の一つ「太子悦神(たいしえっしん:謝憐が神武通りで人々に強烈な印象を残した話)」を描いたもので、華

★15 哥哥

 謝憐に誘われて、菩薺観に泊まることになった三郎。 「兄さん。この道観には足りないものがあるね」  みんな大好き「兄さん」の登場だ。初登場は囚人だった鬼を追い払った時(「やっぱり兄さんはすごいな。鬼も恐れて逃げ出した」)だと思うが、呼びかけているのはこれが最初のように思う。  「兄さん」は中国語の「哥哥」。拼音(ピンイン。中国語のローマ字による発音表記)だと「gēge」となるのだが、中国語に慣れない私にはこの発音が難しい。手元の辞書には「『哥』 gē コァ」と描かれている

☆14 手相

 鬼達との諍いを何とかやり過ごした謝憐は、菩薺村へ戻ってきた。満月の下(この日は旧暦七月十五日なので、十五夜だ)、謝憐は三郎に手相を見ようと持ちかける。  既に謝憐が三郎のことを、「鬼ではないか」と疑っていることがわかる場面だ。 先程(牛車が揺れて落ちかけた三郎の手を掴んだ時)握った手を振り払われたので、手には触れず、月明かりを頼りにじっくりとそれを見つめる。  実際のところ、謝憐は手相を見ることが出来ない。日本語版原作小説(以下、原作と略す)には「昔、貶謫された時も、ど

★13 中元節(ちゅうげんせつ)

 道の途中で牛車はいきなり停まってしまい、牛は動こうとしないばかりか少しずつ後ずさろうとする。道の奥からは、灯りを持った異様な風体の男達が近づいて来た。「三郎、今日は何の日だ?」「今日は中元節」。  「中元」とは、中国の暦で旧暦七月十五日をいう。「お中元」という言葉を思い浮かべた人もいるかもしれないが、正にこれが語源である。「お中元」は贈答習慣や贈答品を指し、同様の習慣に「お歳暮」がある。「歳暮」は字の通り、年の暮れ=年末のことだ。  何故この時期に贈り物をすることになった

☆12 三郎(サンラン)との出会い

 菩薺観を開いた謝憐は、道観の修繕費用を稼ぐため、昔の稼業「ガラクタ集め」を始める。その帰り道、菩薺村へ戻る牛車を見かけた謝憐は、これに乗せてもらうことにするが、その荷車には先客がいて…。  ガラクタ集めというのは、不用品回収業のことだろう。要らない物は只で引き取りますよと言って、集めて回っているのだと思う。  日本語版原作小説(以下、原作と略す)には、「眉目秀麗で風格も瀟洒、仙人のような風采を持っている者であれば、ガラクタ集めをするにも比較的有利になる」と書かれている。謝

☆11 謝憐、菩薺観を開く

 『天官賜福』関連の動画を観ていた時、「謝憐が何故自分で自分の道観を開こうとしたのかわからない」という疑問を持つ人がいた。なので今回はこの疑問に応える話をしていこうと思う。  ちなみに、謝憐が開いた道観は「菩薺観(ぼせいかん)」というが、菩薺とは白慈姑(しろぐわい)のことで、日本で正月などに食べられる慈姑とは品種が違う。多くは皮をむいて薄く切り煮たり炒めたりして食べるが、生食されることもあり、梨に似た味がするらしい。私は食べたことがないので、どの程度似ているのかはわからない。

☆10 アニメ2、3話の用語解説

 アニメ一期二話三話について、聞いただけでは分かりにくい言葉の漢字表記だけでも残しておいた方が良いかと思い、書いてみることにした。 「明光殿(ミングァンでん)」  北方を守護する明光(ミングァン)将軍を祀る廟。 「小蛍(シャオイン)」  破れた裾を隠そうとした謝憐に平手打ちをかまし、のち花嫁に化ける謝憐の着付と化粧を手伝った。 「小彭(シャオポン)」  賞金稼ぎたちの頭。当初、小蛍を花嫁に仕立てて鬼花嫁を誘き寄せようと企んでいた。ごろつきを引き連れて悪さばかりしている、

☆9 謝憐の過去(最初の飛翔)

 中原の国仙楽に、謝憐という太子あり。  …から始まる回想シーン。語りが花城と同じ声なので、花城自身が思い出して語っているように聞こえる…というか、そういう演出なのだろう、謝憐と花城が過去既に出会っているのだと、観ている側に想起させる。  仙楽国が裕福な国であること、謝憐が太子という立場であること、更にその立場を捨て修行の道へ入ってしまったことは、仏教の開祖・釈迦と似ている。違いは年齢と、釈迦が出家した時妻子がいたということか。  ではこの回想シーンについて、日本語版原作

★8 花城の衣装

 花嫁に化け、与君山にやって来た謝憐。山には陣が敷かれてあり、そこへ踏み込んだ一行は、狼と鄙奴(ひど)の群れに襲われてしまう。南風と扶搖は護衛を連れて陣の外へ退避。一人残る謝憐の元へ、鈴のような澄んだ音と共に誰かが近づいてきた。  第一話の名場面である。  日本語版原作小説では、この時の花城の姿について、かなり詳細な描写がなされている。右手中指に結ばれた赤い糸、手首につけられた銀の籠手、蓋頭の下の隙間から見えた紅衣の裾、銀の鎖がぶら下がる黒革の長靴、それぞれについて謝憐自身

番外:おすすめ本『BLと中国』

 6、7と、続けて極端な考察をしてしまい少々くたびれてしまったが、私としてはずっと考えていたことを書くことが出来たので、一応満足している。ここは是非花城に、「愚かだけど勇気がある」と言って貰いたいところだ。  というわけで、今回は『天官賜福』を離れ、最近読んで面白かった本を紹介してみよう。  タイトルは『BLと中国ー耽美(Danmei)をめぐる社会情勢と魅力』だ。著者は「周密(しゅう みつ)」、発行は「株式会社ひつじ書房」、初版2024年3月21日となっている。  帯には「

★7 陰陽説

 「五行説」に触れたなら「陰陽説」についても書かないわけにはいかないだろう。それに私は陰陽説に関して、どうしても言いたいことがある。  そのことはこの記事の最後に書くが、あまりのことにひっくり返っても責任は持てないので、ご注意を。  陰陽説は前項の五行説と合わせて、よく「陰陽五行説」と言われている。これを説明するとまた長くなってしまうので割愛し、とりあえず陰陽説について書く。  陰陽説とは簡単にいうと、全てのものは「陰」と「陽」に分類され、それはいずれかが劣っているとか優っ

★6 守護武神と五行説

*本文を始める前に*  以下は日本語版原作小説(以下、原作と略す)三巻時点での考察なので、もしとんでもない勘違いだったら、本当にごめんなさいして、この記事を全部書き直します。ご了承ください。  南風、扶搖の二人と共にその日の宿を求め、相逢小店で、与君山のある北の地を守護する裴茗(ペイミン)を祀っている「明光(ミングァン)廟」の場所を尋ねる謝憐。  ところが店主には、「そんなものはないぞ」と言われてしまい…。  中国の小説、アニメ、ドラマ等々において、日本人(否、おそらくは