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【感想】リズと青い鳥

こんにちは。再びまとです。

今回は、2018年公開のアニメーション映画「リズと青い鳥」について感想を語っていきたいと思います。

今まで考察記事は出してきましたが、今回は考察というよりは、ここがすごい!的な感想メインでお話できればと思います。

残酷なまでの対比

この物語は、圧倒的な、残酷なまでの対比の物語なのです。
物語は、「鎧塚みぞれ」と「傘木希美」の二人を軸に展開していきます。

二人は京都府立北宇治高等学校吹奏楽部所属の高校3年生。
(察しの良い方、ご存知の方もいるかと思いますが、北宇治といえば「響け!ユーフォニアム」です。この「リズと青い鳥」は「響け!ユーフォニアム」の外伝作品なのです。)

鎧塚みぞれ(以下、みぞれ)はオーボエ担当で、控えめな性格をしています。朝早く練習に来るほど練習熱心ですが、その原動力は傘木希美(以下、希美)への思いなのです。
そもそも二人は同じ中学で、同じ吹奏楽部所属でもあったのです。
(同じ中学のキャラクターはもう二人出てきており、この二人は部長副部長で、この二人それぞれで1記事は軽く書けるほどなのですが、ただでさえ長くなりそうなこの記事をこれ以上、巻物レベルの長さにしてはいけないと、もうひとりの僕こと、ハイアーセルフこと、裏遊戯の忠言に耳を傾け、この辺りでこの二人に関しては筆を置こうと思います。)
みぞれが吹奏楽部に入学するきっかけは、クラスで一人でいたみぞれに声をかけた希美だったのです。
これ以降、希美はみぞれにとって極めて大きな存在となり、みぞれがオーボエを続ける理由は、オーボエが自分と希美をつなげてくれる存在であるからに他ならないのです。

一方、希美はフルート担当で明るい性格をしています。その明るい性格から後輩からも慕われており、フルートの練習にも熱心に取り組んでいます。
実は、北宇治の吹奏楽部3年生は1年生や2年生と比べると数が少ないです。(水色のリボンをしているのが3年生です。)
これは3年生が1年生のときにあったある出来事が関係しています。
今でこそ、北宇治は全国大会を目指す強豪校ですが、当時はそういったレベル、空気感ではありませんでした。そんな中、1年生は真面目に練習したい、といったやる気のある子が多く、3年生から冷たくされ、無視されるといったことが起こっていました。
そんな状況だったので、当時の1年生は半数近くが退部してしまうということがありました。
希美は、そうしたやる気のある1年生の筆頭で、結局退部することになってしまいました。
2年生のときに、関西大会出場を決めた部活に復帰したい、ということになり、そこでまた一悶着あります。詳細が気になる方は「響け!ユーフォニアム2」をぜひご覧ください。
重要なところだけ、ここで触れるとすると、退部するときに希美はみぞれに特に相談もせず、やめてしまうのです。
希美からすると、真面目に練習しているみぞれにやめるなんて声を掛けるなんてできない、ということではあったのですが、みぞれからすると、友達だと思っていた(しかも唯一の)希美が自分に相談もなしに部活をやめてしまった、自分は希美にとって大切な存在ではなかったという自己否定にまで行ってしまいました。
なんとか二人の関係は修復できたのですが、二人の溝は埋まることはありませんでした。

そんな中で迎えた3年生のコンクール。
自由曲は「リズと青い鳥」。
身寄りもなく、一人で森の1軒家に住む少女リズ。
彼女がいつもの通り、森の動物たちと戯れていると、綺麗な青い鳥を見つけます。
別の日、ひどい嵐が開けた明くる日。
青い髪をした少女が倒れているのを見つけます。
その少女とリズは二人で仲睦まじく暮らしていきます。
ただ、リズは少女が夜中にいなくなっていること。窓が空いていて、青い羽が落ちていることから、少女があの青い鳥であることに気づいてしまうのです。
少女をこの狭い家に閉じ込めてはいけない、とリズは思い、少女と別れるのです。

この一人でいた少女に、手を差し伸ばしてくれる救世主の青い鳥という構図は、前述の、一人でいたみぞれに声をかけた希美という構図と完全に一致しています。
曲中の、第三楽章「愛ゆえの決断」では、オーボエとフルートの掛け合いがあります。
みぞれはオーボエ、希美はフルート担当です。
この第三楽章を吹くにあたって、みぞれはリズの気持ちが理解できませんでした。
愛しているのに、自分を唯一愛してくれている存在を手放すことが理解できないのです。
そんなとき、外部講師の新山先生が、リズではなく、青い鳥の気持ちになって考えてみたらと言うのです。

ここで、構造が逆転するのです。
みぞれのオーボエは天才的です。新山先生が、進路として音大を勧めてくるほどです。
ただ、現在のみぞれのオーボエにはあまり感情的ではなく、高坂麗奈の言葉を借りるとすると、「すごい窮屈そう」「自分でブレーキをかけているみたいな」演奏なのです。

一方、希美のフルートは確かに上手いのですが、みぞれほどではありません。新山先生が音大を勧めてくることもありません。
みぞれが音大を受けるかもという情報で、自分も音大を受けようとするのです。

青い鳥はリズを愛しているからこそ、その愛する人、自分を愛していくれている人から別れを切り出されても、それを受け入れるしかないのです。
そのことに気づいた、みぞれは覚醒します。
その暴力的なまでの圧倒的な演奏に、希美は演奏を止めてしまうのです。

演奏後、二人は中学時代に流行ったという、ハグをしながらお互いの好きを言い合うという「大好きのハグ」をします。
序盤でも、一度ハグのシーンがあるのですが、そのときは希美から腕を広げていて、戸惑うみぞれを見て、「なんてね」といってごまかしてハグをしないのですが、今回はみぞれから抱きしめに行きます。
みぞれは希美が中学の時に声をかけてくれ吹奏楽部に誘ってくれたことへの感謝、希美の存在(笑い声、足音、髪 etc)が好きと口にします。希美は誘ったときのことはよく覚えていない、みぞれは努力家であること、みぞれの「希美の~が好き」ということに呼応して、「みぞれのオーボエが好き」と口にします。
ただ、それに「希美のフルートが好き」とみぞれが返すことはありません。
希美は自嘲的に笑い、ありがとうといってその場をあとします。
希美の演奏は、みぞれから認められることはないのです。

振り切ったように、希美は一般受験用にセンター試験の問題集を借ります。
希美は、みぞれという青い鳥を解放してあげることができたのです。
(みぞれの髪が青になっているのも希美ではなく、みぞれこそが「青い鳥」という暗示だったのかもしれません)



終わりに

思った以上に長くなってしまったので、今回はこのあたりで止めたいと思います。
他にも、最後に二人が別々の道を歩いていくところの描写や全体的な触れたら今にも壊れてしまいそうなほどの繊細な作画や、演技のところなど触れだしたらきりがないので、この辺りは「響け!ユーフォニアム」の感想やキャスト陣の他の出演作の感想等で小出しにしていけたらと思います。

お読みいただきありがとうございました。

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