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生きてるうちにアーティスト転生 ~映画監督編~ 

アートなんかで食べていけない! 芸術なんて腹の足しにならない!
非常事態が起きれば真っ先に目の敵にされるモノなのだから。
 
でも、簡単に諦めがつかないほどアートの世界は魅力的。
つまらないけど腹の足しにはなる日常を人生とするか、可能性が未知数でもアートの世界に飛び込んでみるか。
葛藤は尽きません。
 
それならば、まず、一線を越えて表現の世界に飛び込んだ先輩方の話を聞いてみませんか。
 
その決断をした人は現に存在するのです。
その軌跡をたどってみましょう。

映画監督 高山直美さん

「やりたくて やってないことを やる」

昨年、自身初の長編映画「俺を早く死刑にしろ!」をクランクアップし、各地で上映されている高山さん。初心者から中・上級者向けに演技の講師をしたり、チームエヌズというご自身が旗揚げされた劇団で脚本や演出を務められたりと大活躍の昨今です。

舞台挨拶にて

しかし、高山さんは今から10年ほど前までは全く違った仕事についていたそう。いったいどんな経緯で現在の姿があるのでしょう。

高山「もともと30代半ばまではwebデザイナーとして会社に勤めていたんです。でもいずれは何かフリーランスで働きたいなとは思っていて。そこでエンタメ業界でのフリーランスという道を選んだんですよね」

ー何かきっかけがあったのですか?

高山「すごく落ち込んでいたことがあったのですが、そんな時でも何気なくつけたテレビのバラエティー番組に思わず笑った自分に気づいたんです。『こんな状態の人間を笑顔にできるエンタメってすごい』と単純に思ったんですよね。そのとき『あ、エンタメっていいな』と。逆にその落ち込みとのギャップがなかったら転機を迎えてなかったかもしれないですね」

ーきっかけは意外なところですね!
webデザイナーを辞めるまでには準備とか勉強とかをしたんですか?

高山「いや、辞めてからクリエーター養成講座といった感じの半年間のスクールに通ったくらいですね。子供のころからテレビが好きというかミーハーだったので、それでここまで来ちゃったところがあるかな。でも、初めの就職を決めるときにやりたいことの候補として、グラフィック系デザイナーかエンタメ系という2つの道があって、そのときは前者を選んだんです。でも、どうせ独立するなら『やりたくて やってないことを やる』という気持ちもあって、最終的にあまり迷いみたいなものはなくエンタメを選んだんですよね」

ーかっこいい!  多くの人がそこは尻込みしてしまう場面だと思います。

高山「むしろ、私の場合、過集中のほうが問題で。やると決めたことは自分はやりぬくだろうという思いはあったんです。でも、興味が湧くことがあるとそれに一直線すぎてなにも見えなくなるほうが危なっかしいというか。今でも、過集中しないように演出のお仕事とは全く別のことに興味を持ったりしてバランスをとっているようなところがあるんです」

ー実際スクールに通ってからどのように今の仕事につなげていったのですか?

高山「スクールに在籍している間に『高校生に進路についてお芝居で啓発する』という取り組みをするNPOと出会って、そこで脚本を書かせてもらいました。それが好評で何本も脚本を書くことになって。本当にそれまで脚本を書いたこともなかったので数をこなせたことがすごく勉強になりました。その後数年してお芝居を教えるWSを始めたところから今の演劇スクールや映画製作につながっていく感じですね」

ーそこはどんなふうにつながっていったのですか?

高山「『自分はこういうことをやりたいんだ!』ということを周りに話していましたね。私の場合ポイントポイントで話す、という感じではあったんですけど『この人はなんかいい!』と思った時はつながりを逃さないぞ、と。そうすると変化が起こっていったんですよね。演技を教える場所を提供してくれる人とつながれたり、映画のプロデューサーを買って出てくれる人に出会えたりと。みんな割と、自分のやりたいことを口に出さないでしょ? 恥ずかしいとか、バカにされたらどうしようとか思っちゃうのかな。でも、他人て興味がなければスルーするだけだし、そんなに自分以外のこと考えてないですよ。逆にいえば『そんなこと考えてるのなら、なんか手を貸そうか』って人がいたとしても、まずはこちらが発信していなければ相手のほうから気づいてくれるなんてことはありえないですしね」

ーたしかに聞かなければその人の考えていることなんてわからないですよね。口に出すのは恥ずかしいかもしれないけれど大切なことですね。

高山「そして人と出会うことがまず大事なことだと思う。今はSNSとかもあるし出会える機会は多いと思います。そしてそこで自分をどう露出していくかというのもすごく大事だと思います」

ー実際この仕事で働き出してから想定外だったことを教えてもらえますか?
また、前の仕事の経験が役に立ったことはありますか?

高山「一人でコツコツやるwebデザインと違い『目の前の人』が相手ということで、人間関係を構築する力やいわゆるコミュ力、そしてスルーする力、傷つけないような言葉かけを心がけつつも、なめられてもいけないっていうこのあんばいね(笑)。そこらへんは結構学ぶことが多かったです。例えば画家さんの絵の具や筆は喧嘩したりしないでしょうけど、演者は集めてくると揉めたりすることもありますから(笑)。でも一つの目的に向かって段取りをたてて、これをいつまでにして、この手配をしてという力は、前にやっていた仕事で培っていた分、作品を作ることに役に立ったと思いますよ」

ーこれはすごく気になるところなのですが、経済面では不安とかなかったのですか?

高山「人が求めるところを提供すればお金は手に入る、という風に考えていたのでそんなに不安はなかったです。私の場合、芝居を習いたい人に教えれば仕事にはなるだろうとかね。『教える』というのは一般的にお金に変えるためにやりやすい方法かな。あと、支出面ではそんなに何か贅沢をしようとも考えていなかったし。でもまあ、会社勤めのときに貯金していたのはよかったとは思いますね」

ー力強いですね。やはりお金への不安がネックになって思いきれない人は多いと思うのですが。

高山「なにか大きなきっかけがないと人は生き方や仕事を変えるなんていうめんどくさいことをしないものですからね。でも崖から突き落とされるようなことがあれば、結局なんとか泳いじゃうっていうか何とかしていくものでもあるんだけど。でもまあ正直なところ、勤めながら副業とか趣味とかでもいいのではとも思いますよ。誰かの求めるものを提供するとお金は得られるけど、純粋に自分が作りたいものを突き詰めたいというアーティスト志向の人は結構難しいかもしれない。でもアートって生きることに必要じゃないからこそ、人はそれを見られた時感動するものなんじゃないかな。生きててやっぱり何が良かったかって感動かな。だからアーティスト志向の人はどうしたらいいんだろう、、、感動したがってるお金持ちをパトロンにつけるとか?!(爆笑)」

「私はそんなに大変なことをやったわけじゃないよ」という口調で終始お話しされる高山監督。インタビュー前は苦労話がいろいろ出てくるかと思っていましたが、困難が来てもそこで立ち止まらず「じゃあどうすればいいのか?」という頭の切り換えがとても早い方だということに気づきました。さらにシンプルな決断力にも圧倒されっぱなし!
決断も才能のうち」それを強く感じた高山監督のストーリーでした。

#高山直美 #映画 #映画監督 #アーティスト #転生

高山直美監督作品

劇団チームエヌズ



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