見出し画像

リンクスランドをめぐる冒険 Vol.64 St.Andrews Part.2

前回のあらすじ
65歳ライターのスコットランド1人旅、いよいよ最後の目的地、セント・アンドリュースに到着。すでにオールドコースの1回目バロットはハズレ。一応、滞在は3日なのでチャンスはあと2回。とにかく街に入ろうと思ったが、どうも20年前とは様相が違って…。

セント・アンドリュースの九十九里浜

一瞬、マイアミか?と思った。

セント・アンドリュースに着いた初日、オールドコースの抽選に外れ、することもないのでオールドコースの周囲を車でゆっくり走った時のことだ。

確かに初日、青空が広がり、肌をゆっくりと焦がすにはちょうどよい陽光が差していた。
オールドコースの先には遠浅の海がある。
それからオールドコースの隣には無料の駐車場。
上半身裸で日光浴している若者がいて、キャンピングカーにテントを張ってデッキチェアでくつろぎながらお茶をしている老夫婦がいて、小さな子どもたちがキャッキャッと走り回っている。
もちろん、駐車場に駐められるスペースはない。

マイアミ、は確かに言い過ぎだが、千葉の潮干狩りぐらいは混んでいる(あくまで私のネガティブな感想だ)だろう。
無料駐車場の対面には道路を挟んで「ヒマラヤ」というパッティングコースがある。
本来、セント・アンドリュース・レディス・クラブ専用の歴史ある18ホールのパッティングコースだが、クラブが使っていない時は一般開放している。初心者用ホールもあり、ここでも小さな子どもを連れた家族が笑い声を発しながら遊んでいる。

ここが「ヒマラヤ」。たぶん初心者コース。画像の左側奥には駐車している車がびっしり。

なんで観覧車や回転木馬がないんだろう?
一瞬、本気でそんな考えが浮かんだ。

しばらくオールドコースの周囲を走らせたが(1番と18番を横切る市道は封鎖されていた)、駐めるところもなさそうなので、ホテルへ向かうことにした。

無駄に終わったブルックスブラザーズ

宿泊は思い切ってオールドコース・ホテルを取った。
17番沿いにあり、右に大きく曲げたボールがホテルの看板に当たるホテルだ。
一応、三ツ星だからブレザーにスラックス、革靴を用意したがスーツケースのスペースを占領しただけに終わった。

これが17番ホール脇に建つ、前回行った時の看板。あちこちにボールの当たった跡がある。とくにロゴがひどくてなんだか分からない。


こっちは今回撮った看板。フラッグを抱える獅子(?)のロゴもはっきり分かる。翌年(2024年)に全英女子オープンがオールドコースで開催されるので修繕してあるのだろう。


なにしろリゾートホテルだ。
客は半ズボンにポロシャツ、スニーカーで堂々とロビーを歩いている。
三ツ星だからといって堅苦しいのはいやだな、と思っていただけにエントランスで迎えるブラックスーツを着た屈強なスタッフもレセプションの女性も気さくで感じがよかった。

ホテルはコース側、窓付きの部屋にした(バルコニー付きにしたかったが、さすがにその価格は私の身分に不相応だった)。
これまで1ヶ月間、散々安宿に泊まってきたんだ。最後ぐらい贅沢してもいいだろう(いや、1ヶ月スコットランドでゴルフするだけで贅沢なのは分かっている)。

オールドコース・ホテルは素晴らしい。
このホテルのことは別記事で紹介する。

余談だが、持参したブレザーとスラックスは、私が最初に貰ったボーナス(当時は現金支給だった)を握りしめ、日本に開店したばかりのブルックスブラザーズへ行き、それこそ七五三のように揃えた服だ。
だからもう、40年近く経っている。
頻繁に着ているわけではないが、それでも型崩れせず歳を取った私でも着られるオーセンティックなデザインが気に入っている。

ただ、この時はブルックスブラザーズが何かも知らず、好きな作家に登場してきた影響で買った(その作家の本には、父親が米国で買ってきたブレザーが少々、大きかったため、息子は身体を鍛えてブレザーにぴったりの身体を作り上げた、という一節が書かれていた)だけだった。

最近、クリストファー・ノーラン監督の「TENET」を見ていたら、アメリカ人の主人公にMI-6の連絡員役であるマイケル・ケインが「それはブルックスか?」と言って卑下した目で見て、きちんとした服を作れ、とクレジットカードを渡すシーンがあった。

それを見ていて、ちょっと悲しくなった。

まあ、所詮は吊るし、って言や、吊るしなんだが。

閑話休題。

私は部屋に入るとお湯を沸かし、備え付けのコーヒーを淹れた。
それからスーツケースを開き、MacBook Airを取り出す。
コーヒーにミルクと砂糖を入れ、スプーンでかき混ぜながら、2日目のオールドコース抽選の結果を見た。

また、外れた。

Play Will Continue!

※ノーラン監督作はかなり好きだ。理論武装している割にはツッコミどころ満載なのが映画らしくていい。とくに「インターステラー」は賞賛される作品とは思えないが、個人的にはいっぱい突っ込みだくてウズウズしてくる。ウズウズもしないような映画はつまらない。ただし、「オッペンハイマー」はまだ見てない(見る気がおきない)のでノーコメント。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?