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リンクスランドをめぐる冒険 Vol.66 St.Andrews Part.4

前回のあらすじ
65歳ライターのスコットランド・ゴルフ1人旅、最後の目的地セント・アンドリュースに来て2日目。オールド・コースのバロットは2回目も外れてやることがない。とりあえずリンクス・トラストの他のコースを回ろうと思ったら初心者・子供向けの9ホールショートコース、バルゴブ・コースしか予約が取れなかった…。

これまでの無名なコースに思いを馳せる

3回目、つまり最後のオールド・コースの抽選(バロット)も外れた。

先行予約も含めて4連続。

まあ、当たる人は1回で当たるし、今回の私の場合は10回申し込んでもきっと当たらない。
クジなんてそんなもんだ。
そこに何かの意志が介在していると考えたり、何かを恨んだり悲しんだりしても、それは詮無いこと。
4回、クジに外れてオールド・コースでプレーする方法が絶たれた。
それが現実だ。

じつはもう1つ、オールド・コースでプレーする方法がある。
プレーしたい当日、オールド・コースのスターターハウス前に並ぶことだ。
2人とか3人とかの組で空いている枠があれば、そこに入れてくれる。
私は1人なので、これならプレーできる確率が高くなる。

ただし、先着順だ。
私と同じように抽選で外れ、どうしてもオールド・コースでプレーしなきゃ祖国の土を踏むことができない、という人達が大勢いて、朝早くから(ネットなどで情報を調べるとそれこそ午前2時とか3時から)並ばなければならない。

たかがゴルフをするだけなのに、そこまでしがみつく理由は私になかった。
もちろん、朝早くから並ぶ人にはそれなりの理由があるのだから、否定はしない。
私だって、オールド・コースでプレーできなきゃ幼い妹と弟が祖国で餓死する、なんて状況だったら迷わず、徹夜してでも並ぶ。

約1ヶ月、スコットランドをほぼ半周して、いろいろなコースを回ってきた。

人生で初めてのリンクス、その中でもとびっきりプリミティブだったマフリハニッシュ。
ショートコースなのに、まるで迷路のようだったライブスター。
ティーイングエリアに立った途端、鳥肌が立つほど目を奪われたホープマン。
名匠マッケンジー博士のコースデザインを堪能できたダフ・ハウス。
鉄橋、谷越え、ダイナミックな自然、とにかくエキサイティングだったストーンヘブン。
列挙に暇がない。
他のコースも然り。
すべて、記憶にしっかりと刻まれたコースだった。
もう一度、いや何度でも回りたいコースばかりだった。

確かに、それらのコースは私が選択したところだ。
他のコースを選んでいたら、また違った感情を抱いていただろう。
しかし、私はこれらの、世界的に見れば無名のコースから、意図せぬ大きな感動を与えられた。

その感動と、オールド・コースにどれほどの違いがあるのだろう?
私は、オールド・コースに何を求めているのだろう?

オールド・コースにしがみつこうとすればするほど、これまでの他のコースから与えられた感動の価値が失われていくような気がした。

縁。

これまで回ってきたコースとは縁があった。
オールド・コースとは縁がなかった。

それだけのことだ。

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