リンクスランドをめぐる冒険Vol.52 もっとも変則的で特異なリンクスコース ストーンヘブン・ゴルフ・クラブ Part.3
前回のあらすじ
墓地、石積みの崩れた教会跡、鉄道と橋、それから崖。まるでサスペンスドラマのキーワードのようだが、これらはすべてゴルフコース内にある。そのコースはストーンヘブン・ゴルフ・クラブ。有名なゴルフコースが連なるスコットランド東海岸のほぼ中央に位置し、山からの傾斜地を利用して作られたゴルフコースだ。無名だが、そのドラマティックなレイアウトは有名コース以上。私は1ホール目から魅了された。
崖、磯浜、打ち上げ。
スリーカード揃ったPar3
2番ホールは198ヤードのPar3。
ティーイングエリアはここ。
で、この崖と磯浜を越えて…。
で、この画像の左側に向かって打つ。
フェアウェイが広く感じられるけれど、これは隣の1番と崖沿いに進む3番のフェアウェイ。もっとも、崖さえ越えてしまえばどこのフェアウェイに落としても問題ない。
ただし、パー3だ。スコア・インデックスは4だから、このコースでは難しい方。
手前から刻んでいてはパーは取れない。
198ヤード、しかも打ち上げ。私の飛距離で届くクラブはドライバーしかない。転がりがないからドライバーでも問題ないだろう、と思って強振。
この日、なぜかウッド系(この呼び方、なんとかならんか…)が絶好調で、ここでも満足の行くショットが打てた。
崖を越え、グリーンに向かって行く飛球線の、なんと美しかったこと!
こーいうショットが時たま出ちゃうから、どんなに上手く行かないことが続いてもゴルフから離れられなくなるんだよね。
3番から7番までは海岸線とほぼ平行に進む。これらのホールでは海が見えるのでシーサイドコースとしての気分を満喫できる。
ただし、7番終了後はちょっと厄介。
7番グリーン、4番グリーン、15番グリーン、それから5番ティーイングエリア。
これらがほぼ1か所に固まっており、まるでこのコースの交差点だ。
交差点で迷わず目的地へ行くためには案内標識が欠かせない。
で、この交差点での案内標識がこれ。
"8th Tee through Arch"
そう書かれている案内標識の示す方向にあるのは、巨大な橋だ。
ダフ・ハウス・ロイヤル・ゴルフ・クラブでは対面することができなかったゴルフコース内にある巨大な石積みの橋が、その存在を予想もしていなかったこのコースで突如、現れた。
橋を見上げた歓声の後、
突如として現れた謎の男
このコースの特徴は海岸線に向かう緩やかな起伏と切り落とされたような崖。
もうひとつはコースを分断する大地の裂け目のような谷だ。
シーサイドコースでありながら、日本の山岳コースのように谷越えレイアウトもあって、まさに多種多彩。
そして、橋だ。
ホールは前半だというのに、このコースに対する好感度が興奮の度合いとシンクロしてぐんぐん上がっていく。
鉄道橋は、この谷を跨ぐ格好で建設されている。
8番へ向かう時にはこのトンネルをくぐる。
かなり古く、しかも狭くて低い。
この上を近代的な高速列車が通過するのだから、至近距離で見ると迫力を感じる前にわずかだが恐怖心が起こる。音もすごいのだ。
圧巻は8〜11番を回ってシーサイドホールの12番に戻る時。
谷間の最下点近くがカートパスになっており、高い橋脚の真下を通る。
未舗装で両脇には樹々が茂り、その合間から巨大な橋脚が見えた時は思わず、
おお…!
と声を上げてしまった。
その時、茂みが揺れた。
風ではない、不自然な揺れ。
身構える暇もなく、揺れの中から突然、黒尽くめの若い男が目の前に現れた。
一瞬、鳥肌が立つほどびっくりしたが、相手も同じく私を見て硬直している。
よく見るとリュックを背負い、足元は登山靴。
たぶん、トレッカーだ。
もしかしたら、この辺りがトレッキングコースになっているのか、あるいは未踏の地を歩くのが好きなのか。
そうでなかったらかなり怖いことになる。
ゴルファーとトレッカーの遭遇。
これもかなり異質だ。
幸い、私が笑顔で挨拶すると(かなり引き攣っていたと思うが)、彼も笑顔で(相当、引き攣っていた)挨拶を返してくれ、また茂みの中に消えていった。
まったく、このコースはいろいろな未知の体験をさせてくれる。
ドキドキが収まらない中、私は電動トロリーを押しながら橋脚の下を抜けた。
Play Will Continue!
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