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リンクスランドをめぐる冒険Vol.8 ダレーター・ゴルフ・クラブ(前編)

2023年6月22日から2023年7月23日まで。
約1ヶ月間、スコットランドのゴルフコースをめぐる1人旅を敢行。
これだけを考えるとゴルフ好きなら誰もが
「羨ましい!」と思いつくままを言葉にする。
実際、私だって行く前はほぼ、楽しいことしか頭の中になかった。
しかし、いざ行ってみると悪戦苦闘と至福の時の繰り返し。
振り返ればジェットコースターのような1ヶ月間。
これはそこで見たこと、感じたことの備忘録です。

スコットランドのゴルフコース1番ティーに初めて立つ


Dullatur Golf Club(ダレーター・ゴルフ・クラブ)のプロショップにいたスタッフは若い男性だった。
日本人が来たのは(あるいは接客したのは)初めてだったのかもしれない。
私が予約していることを告げるとモニターで確認後、はにかみながら丁寧な英語で私に言った。
「予約確認しました。今は空いているのですぐにスタートできますよ。行く時はこのレシートを貴方のキャディバッグにつけてくださいね」
彼は下記のタグ(彼はレシートと言った。グリーンフィーの支払い証明書だからレシートの方が正しいのだろう)を私に差し出した。

キャディバッグにつけるレシート。1枚目は破ったのでこれは2枚目。

もちろん、このようなシステムは日本にない。
私は戸惑ったが、彼がもう一度、キャディバッグに結んでくださいね、と言ったのでようやく理解できた。

「…あっ」
…破いた。

元来、手先が不器用なうえに初めてのことで緊張している。余計な力が入りすぎてレシートは修復不可能な状態になった。
彼は「気にしなくていいですよ」と微笑みながら2枚目を私に差し出した。
今度は丁寧にキャディバッグへ結ぶことができた。
トロリー(日本では手引きカートのこと)を£5で借りて(これはクレジットカードまたはデビットカードでその場で払う。もちろん現金でも可)スタートホールへ向かった。

ダレーター・ゴルフ・クラブの全長は6,202ヤードPar70。
スタートホールは166ヤードのPar3でスコアインデックス(日本ではホール・ハンディキャップとかランクとか呼ばれる)は15。
比較的易しいホールだ。
天気、快晴。気温、20℃前後。
私は6番アイアンを抜き、ティーイングエリアに立ってティーを地面に刺し、ボールを乗せた。

2番ホールはどこにある?!

ダレーター・ゴルフ・クラブの1番ホール

第1打はやや右に引っ掛けた(私はレフティ)ものの、アプローチでグリーンに乗せ、2パットでボギー。
私の実力を考えれば上出来の滑り出しと言えるだろう。
フェアウェイはしっかり刈り込まれているし、グリーンは芝目が詰まっていて転がりが滑らかだった。
これなら日本のゴルフコースと大差ないな、と少しばかり安堵しながら2番ホールへ向かおうとした。

…2番ホールはどこ?
日本のコースだとグリーンから次のホールへのアクセスが分かりやすく、しかもNEXT TEEの看板まで立っている。
けれど、ここにはそれらしきものが見当たらず、しかも周囲が平坦なので日本の
空間処理能力の蓄積がまったく役に立たない。
右?…それとも左?
こんな場合は落ち着いてスコアカードのコースマップを見ればいいのだが、その時はスコアカードを忘れていることさえ気がつかなかった。
5分ほどウロウロしていたら、なぜか18番ホールのティーイングエリアに出た。
そこにはこれからティーショットを打とうとしている中年男性の4人組がいて、私を見ると少しばかり驚き、それから怪訝な顔をした。
そりゃそうだろう、それまで後ろでプレーした気配もない、しかも日本人が額に汗を流して急に現れたのだから。
私は驚かせたことを謝り、それから1番をホールアウト後に迷ってしまったことを告げると4人ともゲラゲラ笑った。
「1番グリーンの左手に林があるだろ?そこに2番ホールへ行く道があるよ」
私は礼を言って、もう一度1番のグリーンに…。
「あ、1番のグリーンはこっちでいいの?」
と聞き直すと、また4人組は笑って「そっちで大丈夫!」と教えてくれた。
たぶん彼等はここのメンバーで、初めてここに来たプレーヤーは私と同じように迷っているのを何度も見ているのだろう。
やれやれ。
彼等の19番ホールに格好のネタを提供してしまった。
私は苦笑しながら1番のグリーンに戻ると左手を見た。
さきほどは気がつかなかったが、確かに緑茂る林に隙間があり、そこに「2番のティーイングエリアは左、バギーは右のルート」と書かれた小さな看板があった。
ちなみにバギーとは日本で言うカートのこと。

私は断言する。
日本のコースに慣れている日本人がこのコースへ初めて来たら、絶対に私と同じように迷う、と。
もし、私の記事を読んでダレーター・ゴルフ・クラブへ行くことがあったら思い出して欲しい。
2番ホールへのインターバルは1番グリーン左手、こっそり、じゃなくひっそりと設置された看板の左手にある、と。
私はトロリーを引きながら林の中に入った。
次の瞬間、背中に冷たい汗が一筋、流れた。

これが2番ホールへ続くインターバル。実際はもっと暗い。

続く





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