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リンクスランドをめぐる冒険Vol.51 もっとも変則的で特異なリンクスコース ストーンヘブン・ゴルフ・クラブ Part.2

前回のあらすじ
65歳ライターのスコットランド・ゴルフ1人旅も残り10日ほど。スコットランドの東海岸沿いを通ってセント・アンドリュースまで南下する予定だが、次のコースがなかなか決まらない。というのも東海岸のリンクスコースはグリーンフィーが高いから。そんな中、目に止まったのがストーンヘブン・ゴルフ・クラブ(Stonehaven Golf Club)。公式サイトを見る限り、かなりエキサイティングなコースだ。それなのにグリーンフィーが安い。果たして…。

異世界のホールへ抜ける鉄道橋

ストーンヘブン・ゴルフ・クラブは、これまでプレーしてきたゴルフコースの中で(日本も含めて)もっとも変則的で特異なコースだ。

だからといって2度と回りたくない、とか、嫌悪感を覚えた、なんてことは全くなく、むしろ何回でも回りたくなるほど楽しく、また挑戦意欲をかきたててくれるコースだ。

まず1番ホールの右脇に、石積みが崩れた教会跡と墓地がある。
公式サイトの歴史には教会や墓地のことは書かれていないが、このコースは第二次大戦中、ドイツ軍の空爆に遭ったそうだ。その時の跡がバンカーとして今も残っているというから、もしかしたら教会の崩壊と関係があるのかもしれない。
どのような理由にしろ、墓地の眼の前は大海原、後ろにはゴルフコース。こんな墓地なら私もここで永眠したい。
ゴルフ好きな友人たちも頻繁に墓参りに訪れてくれるだろう。もっとも、墓参りなんていい加減に済ませ、ゴルフに熱中することは目に見えているけれど。

18番グリーンの脇にある教会跡と墓地。

それから鉄道橋。
コースを突っ切る形でScot Railの鉄道が走っており、南側に進むとStonehavenの駅がある。7番から8番、11番から12番へ行く時はこの鉄道の下、つまり橋をくぐらなければならない。

この橋が、でかい。
アーチ橋ではないが、土台は石積み。下から見上げる光景はとてもゴルフコース内と思えぬ迫力がある。
そう、私はこんな光景が見たかったのだ。
スコットランドには、コース脇に鉄道が敷かれているコースは数多あったが、コースのど真ん中を列車が走るコースはここぐらいなものだろう。
この橋と鉄道に関しては詳しく後述。

これがコースのど真ん中を突っ切る鉄道橋

変則的なコースはライブスター・ゴルフ・クラブで経験済(Vol.32を参照)だが、ライブスターは9ホールのショートコースでほとんど平坦だった。
比べてストーンヘブンはアップダウンがある上に、もっと複雑に入り組んだホールがある。
また橋を挟んで山側に行くと、それまでの海沿いコースから一転してパークランドの雰囲気に変わる。まるで違うコースでプレーしているみたいだ。

鉄道の海側は傾斜に沿ってホールを縦横にレイアウトしている。縦は海に向かい、あるいは海を背にして。横は海と平行。つまり風向きが一定であってもホールによって影響が大きく変わる。
また縦には横のホールとクロスしている場合があり、横のホールのフェアウェイを越えてショットを打たなければならない。
極めつけは16番。4番と16番、つまり2ホール分の横切るフェアウェイの先に、16番のフェアウェイがある。

入り組んだ海岸線の傾斜地を縦横で上手にレイアウトしているが、どっちが先に打つなどルールが決まっているわけではない。それで事故も諍いも起きないのは、さすがスコットランドのゴルフと言うべきか。
これが日本だったら、と思うと背筋が寒くなるのは私だけでないだろう。

北海に向かって打ち下ろす1番ホール

ストーンヘブン・ゴルフ・クラブの全長はイエローティで4,804ヤード、Parは66。
長いコースではないし、Parの総数が少なく、縦横クロスしているホールがあることなどが、東海岸のチャンピオンコースと比較される点なのだろう。
個人的な感想だが、傾斜地のアップダウンがある分、距離感を掴むのが難しいし、景観によるプレッシャーもあって低いスキルでは難度が上がる。決してチャンピオンコースに劣るというほど差があるとは思えない。
経験という意味ではチャンピオンコースの方がブランド・バリューは上だが、ゴルフの楽しさでは、こっちで10ラウンド回った方がはるかに面白いだろう。なにせ£33だ(チャンピオンコース1回分のグリーンフィだったら、これでもお釣りがくる)。

1番ホール。距離測定の目標物がまったくないところがスコットランド。

このコースのドラマティックな演出は、いきなり1番ホールから始まる。
300ヤードPar4、やや打ち下ろしで海に向かう縦レイアウト。
フェアウェイは広く感じるが、それは1番ではなく横切っている18番ホールのフェアウェイ。つまり1番のフェアウェイに打つには、それを越さなければならない。

ティーイングエリアからグリーンまで見渡せるが、グリーンは崖の突端にあるように感じる。その先に広がるのは北海だ。
1打目は横切る18番プレーヤーに注意すれば、思いっきり振り切ることができる。ただし、右に曲げるとボールは崖下だ。
難しいのは2打目。
グリーンは狭いというほどではないが、ややポット気味の深いバンカーが2つあり、奥は崖に向かって傾斜。これだけならたいしたことない、と思われるだろうが、怖いのは2番のティーイングエリアがグリーンに近くて、球避けの設置物がなにもないこと。
もちろん、注意書きの看板なんて立っていない。
したがって2打目を打つ時はティーイングエリアにプレーヤーがいないことを確認する必要がある。ティーイングエリアに届かなくても、近くに着弾するだけでかなりの音を響かせるからだ。
私はここをお手本通り手前から攻め、2パットのボギーで収めた。

1番グリーン。左側の小さな階段の向こう側が2番ティーイングエリア。

続く2番ホール。
ここは海を背にして傾斜側に打ち上げる198ヤードのPr3。
興奮冷めやらぬままティーイングエリアに立つ。

ここも1番に負けないほど、エキサイティングなホールだった…。

Play Will Continue!





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