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「薬を飲みました。助けてください。」


通行人の1人に呼ばれて駆けつけたお巡りさんにおぶられて、近くのコインランドリーに運ばれた私は、クーラーの効いた室内でベンチに横たえられました。
そこで救急車の到着を待つ間、熱中症の疑いと無線で告げる女性警官に朦朧としながら手を伸ばしました。
「薬を飲みました。助けてください。」
消え入るような声で告げるとあまりのみっともなさに大粒の涙がこぼれました。
異変を察した警官がもう一度聞き直します。
「死のうと思って、風邪薬を1瓶飲みました。」
あまり覚えていませんが、その情報は手早く無線の先に伝えられ、いくつか質問をされたような気がします。いつ飲んだのか、なぜ飲んだのか、家は近いのか、家族の連絡先は…等々。
答えられる範囲の質問に答えながら、徐々にはっきりしてきた意識に比例して羞恥心が高まってきました。おもむろに起き上がると、
「もう大丈夫です。帰ります。」
今度はこう言い出したのです。
「自分では大丈夫と思っていてもね、取り返しのつかないことになったら困るから。」
説得されて、どうしたら皆に1番迷惑をかけないのだろうと考え込んでしまった私は、突如湧き上がった吐き気に反応し手で口を押さえました。
覚えている限りでは3回くらい続けて戻しました。朝から何も食べていなかったので固形物はなく、異様なほど黄色い液体がひたすらに排出されていきました。
慄いて思考停止してしまった私の視界の端で、救急隊が到着したのが見えました。
どんどん事が大きくなっていく。巻き込んでいる人数が予想外に多いということを察し始めて、私はどうしようもなくだらだらと涙を流し続けていました。
救急車に乗せられている間も病院で処置を受けている間も、何度も「ごめんなさい、ごめんなさい」と謝っていたようです。
救急隊の方も救命の先生も同乗してくれた女性警官も皆口を揃えて「謝らなくていい。誰も迷惑していない。あなたは何も悪くない。」と応えました。
きっと優しいからこう言っているのだ、私が自殺志願者で危なっかしいから迷惑だなんて言えないんだ…この時の私の精神状態は救いようもないほどボロボロでした。

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