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北米は和のインテリアをどう見ているか

以前、カラフルインテリア×和のテーマで記事を書きましたが、この時、北米の人達から見た和のインテリアについて書くのもいいかもーと思いつきました。

ただ、わたしはインテリアの専門家でもないし、北米に住んでいたこともないので、あくまで中途半端な英語リスニング能力を持つ、重度の北米YouTube中毒者の勝手な解釈&意見と受け止めて頂けると幸いです。
あと、北米というのは一般的にアメリカとカナダのことを言うと思いますが、この記事ではほぼほぼアメリカのことを指しています。ただ、カナダのインテリアYoutubeも情報源として視聴しているし、アメリカとよく似た現象が起きがちなので、範囲を広げて北米としています。

それではまず、北米YouTubeでよく聞く日本語ワード2つについて。その後に個人的な分析と今後のトレンドの予測。

禅 -ZEN-

英語圏でかなりよく聞くワード。多分、calmとかsereneとかと同義語として使っていると思う。つまり「落ち着いた」みたいな意味。インテリア以外の分野でも使っているのを聞くけど、ZENなインテリアと言えば、ミニマリスティックで、木材などの自然素材を多様しているスタイルを指すと思います多分。

彼らはおそらく日本人よりもこの言葉を日常的に使っていると思う。例えば日本人の日常会話で「お前その質問の仕方…禅問答か!」とかいう突っ込みしないじゃないですか普通。
でも英語圏の人は、前述した通り、「なんか落ち着くねここの雰囲気」「うん、かなりZENだよね」みたいな感じでカジュアルに使っている印象。

わびさび -Wabi-Sabi-

これもインテリアのチャンネルで結構聞きますね。北米では、わびさびの概念とは不完全なものに美を見いだす、と訳されるようです。
最初これを聞いたとき、「あれ?わびさびってそんな意味だったっけか?」と思ったんですが、皆さんはわびさびとはどういうものだと解釈していますか?

 私の中でのわびさびのイメージは、例えば人里離れた林の中にある古い家。それを見て、何だかうら寂しい感じだけど、趣があるなぁ…と心に染み入る感覚?みたいな??
こんな感じで、はっきりとした定義があるというよりはぼんやりとしたイメージとか雰囲気しかわからなかった。
答えを求めて「わびさびを読み解く」という本を読んだりしたんですが、「日本人にわびさびとは何かと聞いても困らせるだけだ。何故なら日本にはわびさびをきちんと解説した教科書などないからだ」とあり、あ、やっぱそう?と納得しました。

この本によると、もちろん不完全なものに美を見いだすのもわびさびの要素の一つですが、私が挙げたような孤独とか、あと「無」の概念も含まれるようです。でもやっぱり分かりやすく定義できるものではないみたいですね。

Wabi-SabiなインテリアデザインはZENなインテリアと似た印象ですが、手作りの工芸品(完璧すぎない味のあるもの)とか、経年変化した古いものを加えてみる、みたいな感じだと思います。

さっきから「多分」とか「思う」とか、何ともぼんやりした感じですが、これらのインテリアスタイルはそんなにかっちりとルールが決められているわけではないと思います。何故なら…まあちょっと先を読み進めてみてください。

精神性と消費社会

お疲れぎみのアメリカ

ZENとWabi-Sabiに共通しているのは、根本に精神的なものがあること

合理性や物質主義の最前線を行き、世界最大の経済大国となったアメリカですが、様々なひずみが生じ、人々は少し疲弊しているようにも見えます。
まあ、疲弊しているのはアメリカだけではないと思うけどね。ヨーロッパだってアジアだって、なかなかに厳しい時代です。日本人だって疲れてる。
しかし他の国と比べて、アメリカは特に、精神的に帰るところというか、寄る辺がないようにも見えます。植民地主義から始まった歴史の浅い国であることや、多民族国家であることなど、日本で生まれ育った私にはよくわからない、色々なことが関係しているのでしょう。ここらへんはカナダも一緒なのかな。あ、でももちろんこれは北米のみに起こる現象ではないと思う。ヨーロッパの人がアジアの文化に傾倒することもあるだろうし、日本でヒュッゲHyggeが流行ったりもするし。

ただ、キリスト教とGREAT AMERICA以外の何かを求めた一部の人々は、和のこころに癒しを感じるのかもしれません。
そして和のこころの解釈によって、インテリアのスタイルは個人個人で変わるでしょう。これらはもともとは心のあり方や、哲学なわけですからね。

トレンド製造

とは言っても、スピリチュアル要素だけで、現代の資本主義社会において大きなトレンドはつくれません。そこはやはり、モノなりコンテンツなり、何か消費するものが必要です。
 
重要なのは、決して全ての人がZENやWabi-Sabiのこころや由来を知っているわけではないということ。ネットに出てくるインテリア雑貨の広告や、好きなインフルエンサーのtiktok動画でそれらを知った人達にとっては、それらは日本のものという認識もなく、ただのインテリアトレンドなのです。

私の好きなYoutuerでPaige Wasselという人がいるのですが、ある動画で、知り合いのインフルエンサー達に、世の中で流行っているが自分は乗る気のないトレンド2024年版は何か聞いてみた、という回がありました。

この動画で印象的だったのは、benjiplantというインテリア&植物のインフルエンサーが、「商業化されたWabi-Sabi」を挙げたことです。そのとき画像で例として出されたのは、こちらの照明。

若いインフルエンサーの部屋で何度か見たことがありましたが、この照明がわびさびペンダントライトと呼ばれているなんて全く知りませんでした。

どこらへんがわびさびなんだろう…ちょっといびつなところとか?最初は紙の張り子細工っぽいなぁと思ったけど樹脂製みたいだし…

 benjiplantはベトナム系アメリカ人なので、アジアの文化が商業的に消費されていくことに疑問があるのでしょう。(彼は日本への旅行の動画もチャンネルにあげています)

 日本の文化を尊重してくれるbenjiplantには感謝しかありませんが、欧米文化を表面的に消費することに関して、右に出るものはないスペシャリストと言える日本人としては、非常に複雑な気分…
 
ヨーロッパのラグジュアリーブランドから、意味不明な英文がプリントされたTシャツまで、日本人は欧米の文化に憧れを持ち続けてきましたが、果たしてそれは文化を尊重していると言えたのでしょうか?
結局は本当の欧米文化に触れることなく、あくまで自分たちのために翻訳されたバージョンの文化を消費するだけで、彼らから本当に何かを学ぼうとしたのか、甚だ疑問です。(特に戦後復興後)


和のこころの行き先

さて、一度トレンドになったものは、いつかは廃れるのが定め。SNS等で世界中の人々に即リーチできるこの時代、トレンドの寿命はどんどん短くなっているといわれています。
しかしトレンドから定番になるものも少数ですが存在します。果たして和のインテリアは、そうなれるでしょうか。

いやー無理じゃないですかね。

でも、トレンドが終わること自体は大したことではないと思うんですよ。むしろ、トレンドが終わってからが重要なのではないでしょうか。

SNSは、一斉に種をまくのに適したツールです。そして種まきが終わったあとに、その種が人間の心の中で芽を出すかもしれないし、出さないかもしれない。
きっとほとんどの人はださないんじゃないかな。でもほんの少しの人の中では芽をだし、苗が育っていくかもしれません。そしてそれを、他の人に直接株分けすることもあるかもしれません。精神的なものとはそうやって受け継がれていくのでしょう。少なくとも日本では400年以上そうやって受け継がれてきました。指南書もなく、はっきりとした定義もわからない状態ではありながらも。

さっき苗とか株分けとか色々書きましたが、そこまでじゃなくてもいいんです。双葉が顔を出す程度でも十分です。つまりは北米の人達が、自分たちの文化とは違う視点もあるのだと気づくだけでもいい。
外国の文化を学んだ結果得られる最上のものは、複数の視点であると海外YouTube中毒の私は思います。
インテリアスタイルとして定番化するより、その方が価値があるんじゃないかな。

きっと千利休だってそっちの方がいいんじゃない??

(草葉の陰から頷く千利休)

それでは今日はこの辺で。








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