見出し画像

派遣社員のジレンマ

  頑張るほど報われないんだ、そう気づかされた今日の出来事。

  「単価が高すぎるんだよ。だからもうあの派遣さんは雇えないね」

 長い間業務をサポートしてくれていた一人の派遣さんが、もしかしたらいなくなるかもしれない。理由は、彼女がベテランだから。彼女一人の単価で他の派遣さんが二人は雇えてしまうらしい。

 そりゃあそうか、とは思った。一応。うちの会社だって収益が厳しいから、贅沢できるお金なんてない。カットできるコストは積極的に削りに行くのが当たり前である。

 仕方ないなと思う反面、やるせない気持ちにもなる。この派遣さんはこれまで努力してきたから労働単価が上がったわけだし、なぜ努力したのかといえばそれは稼ぎたいからに決まっている。

 でも現実、稼ぐ派遣さんは会社にとって都合が良くない。他の会社はどうか知らないが、うちの会社で派遣さんというのは、社員の負荷を減らすために、一部の仕事を進めてもらう方々だ。

 本来だったら担当社員がやるべきところ、あまりにも残業が増えてしまうので、人に任せても当たり障りないものを切り出し派遣さんに対応いただく。

 求める人材の要件は高くない。だからこそ安くすませられるならそうしたい。聞こえの良くない、経営者側の論理。

 そういうことを考えると、どれだけ頑張ってスキルを磨いたとて、能力の高い派遣さんほど仕事に困るようになるのだろうか。それとも優秀な派遣さんはうちみたいな会社ではなく、相応の優良企業から引く手数多の人材になるのだろうか。

 後者であって欲しいけれど、この国にそんな優良企業はどれくらいあるんだろう。

 急に欲しいものができた時、家族が働けなくなって一家の大黒柱が入れ替わった時、人はいつ、「稼ぎたい」というスイッチが入るかわからない。若い頃からメラメラと燃えている人もいれば、中高年に差し掛かったあたりで稼ぐことに本腰を入れざるを得なくなる人もいる。

 派遣さんとしてキャリアを歩んできた人はもしかしたら、稼ごうと頑張れば頑張るほど稼げなくなるのかもしれない。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?