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本の廃棄を検討する 13

俺はどうしようもない奴です。

昨年亡くなった上司の家に行き、その上司とは一緒に古本屋めぐりをしたこともあったので、片づけなければならない蔵書なるものを奥様から見せていただき、結局、ダンボール3箱分を持って帰って来てしまったのです。

奥様はえらく喜んでおられ、私もまた、故人とおおよそは読書傾向が似ているので、「ああ、これを買ったんだなあ」と買ったもののおそらくは手を付けられなかった新品の本を形見分けとしていただき、気持ちはホクホクしていたのです。

しかし、それが届き、届いた今日、「本の廃棄を検討する」なんていうのんきなことをしているとは思っていなかったのです。なんてことを私はしてしまったのか。

引き続き、新書の整理をしていきますが、一向に終わらないこの状態に、焦りを感じております。

富増章成『オッサンになる人、ならない人』(PHP新書 2010)

何でしょうね、これ。2010というと、私がアラフォーにならんとした時期ですかね。おそらく新刊で買っていて、きっと自分の老いに向き合おうとしたんだろうと思います。あれから、13年。確かに老いてきています。オッサンになっています。無駄な抵抗だったのでしょうか。老いに、書物で挑もうなどと。

最初に載ってるオッサンテストでは「あなたは周りの環境を破壊するほどのオッサンです。早めの自己改善が必要です」とある。

すみません。まだ抵抗しないといけないね。

阿古真理『ルポ「まる子世代」 変化する社会と女性の生き方』(集英社新書 2004)

先日、ちびまる子ちゃんに登場するはまじさんのモデルの方が亡くなったというニュースをみました。私はちょうど六年生くらいで、『ちびまる子ちゃん』と『お父さんは心配性』のブームがあり、私は、岡田あーみん派でした。のちに、二人が諍いを起こしたときは悲しかったですが、いずれにしてもどちらも読んでいたものです。

このルポは1964~1969年生まれの女性たちを「まる子世代」と名付け、分析した本ですが、要するにバブル世代と重なりつつズレるような層をターゲットにしています。酒井順子さんのバブル女子分析のような呪詛感はないですが、意外にこの時期に読むと正解を導き出しているような感じもあります。

おそらくは資料として買ったものなので、捨てはしませんし、バブル分析としては悪くない本だと思います。

宮城谷昌光『孟嘗君と戦国時代』(中公新書 2009)

そういえばこんな新書も買ったなあ、と『キングダム』をネットカフェを読み切ったあと(当時51巻くらいまで出ていた)、本棚から引っ張り出した本。中国史の歴史モノを書いている宮城谷さんの新書で、書いている内容も平易で面白い。まあでも最近はなかなかこうした本を読む層も少なくなってきたようで。

それなりに中国古典は、老後の楽しみになりそうなので、とっておきます。

山口周『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」』(光文社新書 2019 第19刷)

周囲で評判になったので私も購入した新書。事実なのかマーケティングなのかちょっとわからないところもありますが、まあそうなのかもしれないね、って思う内容でした。もう、アンタそういう世界から降りたんじゃねえの?っていう諸先輩がほめたたえていて、セゾン文化の残党が、とつい思ってしまいましたが、それはそれで心地よい世界ではありますので、そっちの方向に世界は動くのか、それとも閉じていって、庶民は美意識なるものにふれることすら自ら禁じていくのか、悩ましい世相の中一人祈ることしかできません。

まあ、その第一線におられる方は、読まれてもいいかもしれませんね。私もここに出てくる単語は説得するときに目くらましになってくれるので、そういう目線で保存しておきます。

田尻祐一郎『江戸の思想史 人物・方法・連環』(中公新書 2011)

江戸時代の思想史なんて、堅気の人は絶対踏み入らない領域ですので、敢えて言うとなかなかいい本です。使うポイントがない本でもありますが、心が豊かになります。山口さんの美意識本を読んだうえで、日本の美意識とは一体何かを「武士道」と「いき」以外で手に入れたい人は、読んでもいいのかもしれませんが、まあ、漢字多いからね。

これは私的には好ましい本なので、保存。永久保存。

諏訪哲二『なぜ勉強させるのか? 教育再生を根本から考える』(光文社新書 2007)

プロ教師の会もいろいろありましたが、私は諏訪さんの本は好きで割と読んでいます。ゆとりも潰え、どうにもならなくなりつつある教育現場ですが、私のころの過酷な小学校の状況に比べ、私の子どもたちの学校はちゃんとしてると思う。人ありきなんでしょうね。

諏訪さんの親論からすると、佐藤ママの方針はきっと耐え難いだろうし、スタンフォードだハーバードだの例外的成功例と同列だと思うので、そういうところに吸引されていくのは、どうかと思ってるとおもうんですけどね。最近、本来読んでもいい時期だけど諏訪さんの本は読んでないなあ。

意外に、いいところに下線が引いてあったので、また読み直してみようと思います。今もうKindle Unlimitedに入ってるっぽいですけどね。

高根正昭『創造の方法学』(講談社現代新書 1979)

これ、すごいいい本なんですけど、時代に埋もれてしまいましたね。高根正昭さんは、当時からすると、かなりのエリートだったんですが、なにせ帰国して早逝されてしまったのですね。享年50歳。スタンフォードで修士、バークレーで社会学博士なので、成田さんレベルの人ですね。

社会学がベースになっているのですが、私は質的研究の方なので第7~9章を参考にしました。ジャーナリズムに関する話は、なるほどなるほどと思いながら読みました。高根さんからすると、学部に入ったくらいで、やれ体験を言葉にしちゃうんですから、社会ってちょろいもんだなあ、と思ってらっしゃるのではないでしょうか。

この本は殿堂入りです。

今日はちょっと辛口ですね。

2000字を越えないようにしたいし、本の論評したいわけじゃないのだから、もっとどうでもいいことを書かなきゃいけないです。

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