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「小説 雨と水玉(仮題)(46)」/美智子さんの近代 ”転勤の打診”

(46)転勤の打診

翌週月曜日英子に、転勤のことを上司に相談することにしたことを伝えた。改めて近々に東京への配置転換の希望を取る予定になっていることを教えてくれ、管理職には既に伝わっていることを教えてくれた。そして、こういうことは課長ではなくて部長にまずは相談してみるという形で話したほうが良いと言われた。

早速A部長の予定を聞いて火曜日に直接席へ行き、ご相談がありお時間を頂けないかと言ってみた。
「うん、今日の昼過ぎとかでいいかな?」
「はい、かまいません、お願いします。」
「うん、わかった、会議室1でやりましょう」
「はい、わかりました。よろしくお願いします」

午後、A部長に直接、結婚の予定があることとその事情を伝え、この会社で仕事を是非続けたいこと、可能ならば東京に転勤させてもらって仕事を続けることで力を付けてもっと会社に貢献できるようになりたいことを伝えてみた。また、東京への配置転換について近々であるらしい話を聞いたことなども付け加えた。

Aさんは、話を理解してくれて、近々に東京への配置転換を募る人事の通達が出ることを教えてくれた。そして、田中さんのことはよく課長や英子さんから聞いていて、よくやってくれていると思っている。もし東京へ転勤するようなことになればここの部署は痛手になる、ただ、全社的な見方をすればそれはメリットのあることになるので、僕としては理解したい。ついては、一応公募の形だからそれに応募してください、また異動の時期はおそらく夏か秋になるだろうということだがそれでよいのか、と言われたので相談しますが大丈夫ではないかと思いますと答えた。人事としてはもし他に応募があれば審査をするということになるのでその結果希望にかなわない場合もあることは理解してください、そしてこれは内緒だがといって、大阪からの場合応募する人はめったになくて希望がある場合はたいてい叶うと思うと言い、だから田中さんが異動してしまうことは僕は残念や、と言った。それからB課長にも僕の方から内密に伝えておいていいか、と言われたので、はいと言っておいた。
そして美智子は応募させていただきます、と言い、丁重にお礼を述べて会議室を退室した。

そのあと、英子のところに行き、A部長に相談したこと、希望がありそうなことを報告したら応援してるから頑張りなさい、と言ってもらった。英子にもお礼を言って仕事に戻った。

その晩は水曜日ではなかったが、啓一に電話した。
A部長に直接相談に行き、感触は悪くないこと、もし転勤の場合、時期は夏か秋になる予定のこと、一月に公募されてから応募するようにすることを伝えた。
啓一は、時期的なことは僕は何とかなると思うけれどご両親に報告しておいてください、と言った。

早速お父さんに、報告してみた。
「うん、それはせっかくのチャンスやから、いいことやな。仕事を続けたいということも賛成や。時期的なことは夏だとちょっと早いかもしれない、準備が間に合うのか、心配やな。結納と式はきちんとやる必要あるやろから」
「はい、調べてみて、啓一さんとも相談してまたお話しします。」
と言った。

次の日の水曜日、啓一に電話をした。
「もしもし美智子です。あの、早速ですけど、時期が夏か秋というのは特に夏だと時間の余裕がなさそうで、結納と式はきちんとやる必要があるからと父もそれを心配してました。」
「うん、たしかにそうだね、早めに情報集めた方がいいね。土曜日に相談センターみたいなところに行ってみましょか?」
「ええ、そうかもしれへんなあと思てて、ちょっと調べてみます。」
「うん、そこはひとまずお願いします、また明日か明後日電話するね」
「はい、お願いします」

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