見出し画像

「ギリシャ人の物語Ⅲ 新しき力」塩野七生著(新潮社)/ギリシャのポリスは崩壊し、その後をマケドニアの父子が襲い、子のアレクサンドロスはペルシャ・インダスをも征服し大王となるが、、、(その2)

アレクサンドロスの軍才を語る塩野七生

ハンニバル、スキピオ・アフリカヌス、そしてカエサルもその軍才を絶賛したという、アレクサンドロス。
軍事の天才アレクサンドロスによって騎兵用兵の元祖が開かれると同時に、戦争戦術がレ歴史的に飛躍したと言えるのだろう。
「ギリシャ人の物語」の第三巻は、アレクサンドロスのために書いたとも言えるものになっている。
その1においても、記しましたが、塩野七生の健筆は、会戦、海戦を語るとき、実に活き活きと人物、人間あるいは人間集団を活写します。
本当に素晴らしい。

重要なポイントとしての、家庭教師アリストテレス

アレクサンドロスを語る際の重要なポイントは、家庭教師としてアリストテレスに学んだということだと思う。
ギリシャ文明の粋をアリストテレスにより教わり、教養を身に着けたということがあれだけの大興を上げた基盤になっていたはずである。そのことが塩野七生さんの戦記を語る筆の中に濃厚に感じられる。
この点はいくら言っても言い過ぎでないと思われる。

ペルシャとの会戦に次ぐ会戦を制して

そしてまさに血沸き肉躍るというアレクサンドロスの戦記がこの巻で描き出される。
「ローマ人の物語」「ギリシャ人の物語」を通して、もっとも面白い歴史物語が展開されると言って良い。
これに比すべきは、「ローマ人の物語」の四巻、五巻のカエサルの物語だけであろう。
この「ギリシャ人の物語」Ⅲと「ローマ人の物語」Ⅳ、Ⅴ、これらが最も面白く、繰り返し読みをすべき巻と言えるだろう。

ペルシャとの闘いの前に、父フィリッポスをギリシャに君臨させることとなる、「カイロネアの会戦」でアレクサンドロスは独創的な騎兵用兵を魅せる。敵の一瞬スキを突き、敵本陣へ突撃打撃を与え、圧勝の勝因を引き出した。
この戦いにある意味、作家の処女作と同じく、アレクサンドロスの軍事の才がすでに現れていた。塩野さんの筆は鋭い。

そしてペルシャとの闘い、ペルシャの征服、、、である。
小アジア(現在のトルコ)での「グラニコスの会戦」、中東での「イッソスの会戦」、そしてペルシャ王ダリウスにとどめを刺す「ガウガメラの会戦」と完勝が続く。

アレクサンドロスの戦争戦術は、

「戦いは主導権を握った方が勝つ」という言葉に尽きるが、会戦の全体構想を各部隊に役割を得割り振っていく。つまり、敵に主力の攻撃に根太が腐るほどに耐える部隊、そして敵の戦略部隊を崩す部隊などなど、、、

1)そうやって味方各部隊にの役割を十全に果させた上でそこに出来る敵側のスキを作る
2)このスキをアレクサンドロス自身が先頭に立って高速で突っ込む騎兵隊によって敵に核心を突いて、敵を錯乱させる
3)錯乱から壊滅へ、主戦力を含めた総攻撃で敵を壊滅させる

というものだということが出来そうだ。

そして統治も

そして闘い勝ったそのペルシャを支配し、統治する、この面でもうまさを発揮している。
そうでなければ、インダス川までの大遠征をやり遂げられるはずもない。
アレクサンドロス自身は、インドをも征服しようとしていたと言う。

しかし、32歳のアレクサンドロスは、

アレクサンドロスは、その短い生涯を32歳で閉じてしまう。
彼の脳裏に合った、更なる大帝国の夢はどんな形をしていたのか、、、、、

残念ながら、我々が知ることは出来ない、、、








この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?