見出し画像

「小説 雨と水玉(仮題)(49)」/美智子さんの近代 ”段取り”

(49)段取り

一月三日の夜、新大阪で帰りの新幹線を待っている時、美智子が、
「あの、来週はうちに泊まってくれるでしょ、そのときにうちのお父さんに啓一さんから言うてほしいねんけど」
「なに?」
「今度、東京にいく時は一泊していろいろせなあかんやろ、そういうこと」
「ああ、そうやねえ、実際夏に転勤の場合、大阪で式をするとして三月には東京で結納、新居も決めとく必要があるし、もう急がないとね」
「うん、そうやねん、せやからわたしから言うてもいいんやけど、啓一さんからそういうことを言ってもらって、そうしたほうが」
「うん、わかった、そうしよう」

翌一月第二週末の三連休の初日、早めに大阪に着き、昼ご飯を一緒に食べながらの相談。
「配置転換の希望は出したんです、電話で話したように異動時期は七月初めということで、人選決定が今月下旬ということでした」
「そうやね、まだ決まるには少しかかりそうやけど、動いていかないといけないね。異動が七月初めだとすると、式は六月、結納は三月くらいかな、僕の両親は式と結納どちらが東京でとかは構わないと言ってたので、三月東京、六月大阪ということで考えてみようか?」
「うん、ひとまずそれで今月転勤が決まった段階で決める、そんな感じ?」
「うん、そうやね。それで今晩にでもご両親にお話ししてみようか。それで今月中に一回美智子さんに東京に来てもらって、結納の日程や場所、A書店の場所を見て通勤とかを考えて新居のだいたいの当てを付けるとか、するか」
「はい」

それから、相談カウンターに行き、三月結納、六月式を候補として相談をして日程、場所、予算をイメージすることができた。結納はともかく式場は下見が必要だがそれは来週以降ということにした。また必要な段取りも概ね把握することができた。
「式の方は美智子さんがまずご両親と相談してくださいね。それをもとに決めていきましょ、結納のほうはそれが決まれば自然と定まるかな。僕の方は新居と家財なんかを早めに考えていく。」
「わかりました」

その日は夕方には美智子の実家に帰り、状況を伝えることにした。
夕飯を食べながらではあったが、転勤異動が決まった場合の日程から式と結納の時期と場所の候補について、それぞれ概ね理解してくれたのは有難かった。そして準備は早めに進める必要があり、東京での結納の日程、場所、美智子の勤め先と新居についても早速手をつけれるものはつけたいと啓一から言い、特に新居は啓一の退寮時期の三月には決めて家財等の受け皿にして効率的にやっていく旨を伝え、これも理解してもらった。
「それでこれからですが、美智子さんに今月にも東京に来てもらいたいんですけど日帰りだと時間が無くて、僕の方の実家か、気を使うようならホテルで一泊してもらって用事を済ませたいと思います。」
「うん、それがいいな。美智子、そうしてしっかり準備しなさい」
とお父さんが言い、お母さんも頷いていた。
「はい、わかりました」と美智子が応えた。
その後相談をして、来週末にまず美智子が東京に行くということにした。

その晩、啓一は美智子の部屋で一人寝ることになったのは不思議な感じだった。前もってきれいにしてあったのだろうが美智子の持つ雰囲気、香りに包み込まれるような気がした。

次の日は昼食までいただいて、午後もう一度相談カウンターに行き、情報を集めることにした。
「母と相談したら、啓一さんの実家でもいいけどホテルにしといたほうが良ければそうしなさい、って言われました。」
「うん、ホテルの方が気を使わなくて疲れないよ。僕が予約してあげるよ」

段取りのイメージが二人に徐々に明確になってきて、少しづつ進めていけそうな気がしてきていた。夕飯を軽く済ませ、新大阪のホームに着き来週の相談をした。
「来週は、東京の相談カウンターに行って結納の場所の候補を見とくとして、、、
今週、ご両親と式の日時、場所を相談してみてそれをもとにかな。」
「ええ、今週具体的に相談してみます。」
「そうやね、それで、美智子さんの、渋谷だったかな、勤め先になるのは、そこを下見して、新居の場所を何か所か雰囲気を見てみよ」
「はい」
「そしたらホテルは渋谷あたりがいいかな、あんまり変なとこに泊まってもらうわけにいかないけど、東急でいいかな?シングルで一万円まではしないと思うけど」
「、、、、わたしに一人で泊まれって言うの、心細い」
「?、ごめん」
啓一は美智子を抱きよせた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?