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「小説 雨と水玉(仮題)(32)」/美智子さんの近代 ”美智子の近代と家族 その2”

(32)美智子の近代と家族その2

いつもように梅田の紀伊国屋前で待ち合わせていた。
薄緑系のカーディガンに白いブラウス、水色に花柄のロングスカート姿で大人の魅力と清楚な美智子の人柄が美しく輝いていた。
「こんにちは。今日もとっても素敵です」
「ありがとうございます。
あのお、今日は水玉ないんです。すみません・」
「そんな、いっつも違う水玉用意してもらうの、大変ですよ。
気持ちだけで十分」
「ふ、ふ(笑)、でもキーホルダーはいつもあるんで」
「うん、そうやね。こっちにもね。
あの荷物を持ちましょう。」
「ありがとうございます。」

地下鉄を乗り継いで大阪城公園まで向かった。
ゆっくりと手を取って歩いていき、ベンチが空いていたのでそこに二人ですわった。
「美智子さん、なんか悩ませてしまったみたいでごめんね。」
「いえ、そんなことないんです。ほんまに嬉しかったんです。
ほんまですよ」
「ありがとう。でも、ちゃんと考えると悩むことは当然あると思う。
両親のこととか、仕事のこととか、
そうですよねえ?」
「はい、そうなんです。」
「なんでも言ってもらえますか、僕に」
「ええ、あの、わたし女兄弟の長女なので両親のことはいずれ近くでって思ってるんです。
もちろん、今すぐではなくてだいぶ先のことですけど。
でも気になるのは気になって」
「僕も神奈川に両親がいるし、弟がいるけど長男だし、よくわかりますよ。
いまはご両親、お元気なんでしょう?」
「はい」
「僕の両親も元気ですから、これからだいぶ先のことやと思うんです。
例えば結婚して子供を持ったり、とかいろいろあるでしょうから、二人で考えて努力すれば、呼び寄せたり、近くに住んだりは十分できるんやないですか?
僕はそう思うんですけど」
「はい、二人で考えて、努力して」
「ええ、美智子さんとやったら一生懸命頑張れると思う、僕はね。
美智子さん、僕と一緒に頑張ってもらえませんか?」
「はい、佐藤さんと一緒やったらもちろん頑張ります。」
「ありがとう。嬉しいです。二人の両親のことはとっても大切なことやから、よく話をしてやっていきましょう。
二人で頑張ればなんとかなりますよ。」
「はい、そうですね。何とかなりますね。
なんか勇気が湧いてきた。」
「そうですよ、
僕はたいていのことは美智子さんとだったら話して分かり合えると思う。
そして前に進む力が湧いてくる。」
「そういってもらえると嬉しいです。」


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