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書評

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読書の喜びは、他のなにものにも代えがたい魅力が有ります。そういった喜びを皆さんと共有すべく、知的刺激を受けた書、好奇心満載の書、ためになる書その他この他、わたしの狭い読書領域の中…
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2023年5月の記事一覧

「ローマ人の物語Ⅶ 悪名高き皇帝たち」(塩野七生著、新潮社)ティベリウス、カリグラ、クラウディウス、ネロ

ユリウス=クラウディウス朝 さて、「ローマ人の物語」もいよいよ帝政が始まっていくということになります。 カエサルのあとを継いだアウグストゥスによって始まったローマの帝政、その後、義子のティベリウスに継がれます。そして、その弟の孫のカリグラ、そしてカリグラの混乱を収拾するティベリウスの甥のクライディウス、そしてネロと。 ここまでの皇帝は、アウグストゥスの後を受けたその義子ティベリウスを除いて、カエサルの血を何らかの形で付いている者たちです。ティベリウスが名門貴族クライディウ

「ローマ人の物語Ⅴ、Ⅵ、Ⅶの補足」/王朝系図と年表がついて理解促進、便利です。

「ローマ人の物語Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ」の補足です。 この「ローマ人の物語Ⅴ、Ⅵ、Ⅶ」では、 Ⅴ巻には、 紀元前100年のカエサル誕生から暗殺(紀元前44年)、オクタビアヌス権力掌握(紀元前30年)までの、ローマ、地中海世界及びその他の世界の出来事年表が巻末についています。 Ⅵ巻には、 カエサル暗殺(紀元前44年)からオクタビアヌス権力掌握(紀元前30年)、オクタビアヌス改めアウグストウスの死(紀元14年)までのローマ地中海世界及びその他の世界の出来事年表が巻末についています。 さらに

「ローマ人の物語Ⅵ パックスロマーナ」(塩野七生著)オクタビアヌス⇒アウグストウス/カエサルほどでないにせよ、天才オクタビアヌスの物語は秀逸、世界史のハイライト

カエサル暗殺後はその後継者オクタビアヌスが権力を掌握していきます。 そしてカエサルの描いたローマの帝国化を時間を掛けて成し遂げます。 塩野七生さんは、 「ローマ人の物語Ⅴ」のカエサル暗殺後の部分からオクタビアヌスを書いていき、反カエサル派の掃蕩、アントニウス討滅までを「ローマ人の物語Ⅴ」で描きますが、ここまではローマ内部の権力闘争に勝ち抜くオクタビアヌスと言うことになります。 「ローマ人の物語Ⅵ」では、オクタビアヌス改めアウグストウスがローマによる地中海世界の平和、いわゆる

「ローマ人の物語Ⅴ ユリウス・カエサル ルビコン以後」/晩成カエサルの統帥と政治(塩野七生の恋)2

塩野七生は「ローマ人の物語」でローマ建国から西ローマ帝国滅亡までの千年以上の歴史を大部のハードカバー15巻で記しています。 そのなかで、実にカエサルについてはⅣ、Ⅴの二巻を費やすほどの熱の入れようです。 しかし、読んでみるとこの二巻はまさに圧巻、英雄の物語はこれに尽きる!とまで言えるようなワクワクドキドキの、結果を知っている我々構成の人間から見ても大歴史絵巻を読むことができます。 Ⅳ巻の書評でもしるしましたように、塩野七生はカエサルに恋焦がれるがゆえにこれだけの力作をモ