『フレイザー報告書』こぼれ話(21)

 引用は適宜省略している。また、[ ]カッコ内は訳者による補筆である。

発言人物一覧

○朴普煕(パク・ボーヒ)……統一教会教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン)の最側近のひとり。韓国文化自由財団(KCFF)会長。

○ドナルド・M・フレイザー……下院・国際関係委員会ー国際機関小委員会委員長。
○ロバート・B・ベッチャー……小委員会調査スタッフディレクター。
○ハワード・T・アンダーソン……小委員会調査スタッフ。

『朴普煕聴聞会』を読む〈五〉

◎謎の金庫番・シンバ氏

 前回に引き続き、統一産業社長・石井光治が責任者である『国際統一教会年金基金』について、不明な実態を朴普煕に質問してゆく。

 フレイザー:あなたがディプロマット・ナショナル銀行株の代金として彼からお金を確保したとき、あなたはそれを現金で受け取ったのですよね?
 朴:そのとおりです。
 フレイザー:彼はそれを小切手であなたに渡しませんでしたか?
 朴:いいえ、委員長。
 フレイザー:お金の領収書を受け取りましたか?
 朴:いいえ。
 フレイザー:あなたは彼からいくらお金をもらいましたか?
 朴:そうですね、[ディプロマット・ナショナル]銀行目的については、あなたは数字をお持ちでしょう。
 フレイザー:でも今、あなたの最大限の記憶を聞きたいのですが、あなたは彼からいくらもらいましたか?
 朴:一度にではなく、いくつか異なる機会で、です。
 フレイザー:物理的には、どうやって彼からお金を得たんですか?
 朴:私はタリータウン(訳註:ニューヨーク州にあるアメリカ統一教会の本部)に[も]事務所を構えているので、通常は自分の事務所で仕事をしています。
 フレイザー:彼はあなたの事務所にお金を持ってきてくれますか?
 朴:はい。彼または彼のスタッフが。
 フレイザー:そしてそのお金はどのような形でもたらされたのでしょうか?
 朴:現金で。
 フレイザー:どの[額面]単位で?
 朴:ああ、覚えていません。さまざまな単位があります。
 フレイザー:封筒の中に、ブリーフケースの中に?
 朴:存じません。さまざまな方法があります。
 フレイザー:あなたは彼にいくら必要かを伝えますか?
 朴:私が?
 フレイザー:はい。
 朴:正確にではないです。 通常、上限を設定します。
 フレイザー:はい。
 朴:100万ドル未満から90万ドル程度。
 フレイザー:しかし、90万ドルすべてを一度に手に入れたわけではない。
 朴:はい。
 フレイザー:お金が必要になるたびに、90万ドルのうちいくら必要か彼に伝えますか?
 朴:いいえ。私はそれについて正しい知識を持っていませんが、それはある間隔に起こったものです。
 フレイザー:どのくらいの間隔で、中佐?
 朴:おそらくひと月くらいでしょう。
 フレイザー:ひと月?
 朴:はい。ひと月かひと月ちょっと。
 フレイザー:ひと月かひと月ちょっと。
 朴:はい。また、彼のスタッフも私にお金をくれて、いつぞやはワシントンにいる私にお金を持ってきてくれました。
 フレイザー:彼らはそれをあなた、ワシントンのあなたの事務所に持ってきましたか?
 朴:はい。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 朴普煕の証言に従えば、ワシントンにあるKCFF事務所以外にもニューヨークに事務所を持っていたようだ。なるほど、こぼれ話(18) において池田文子こと江利川安栄がニューヨークへ来て朴と会っ(て、おそらく口裏合わせをし)た際、朴はニューヨークへ頻繁に訪れていることを証言している。
 さて、現金を持ってきた石井のスタッフとは誰か?

 フレイザー:スタッフの誰がそれをあなたに持ってきましたか?
 朴:シンバ氏です。
 フレイザー:シンバ氏?
 朴:シンバ・タカヒロ。
 フレイザー:シンバ氏。
 朴:はい。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 シンバはおそらく『榛葉』と書くのであろうが、特定できなかったのでカタカナ表記にしておく。ここからはシンバ氏に関する朴の証言を抜き出してみよう。

 アンダーソン:ディプロマット・ナショナル銀行の株を購入した13人のリストをもう一度参照したいと思います。念のため言っておきますが、中佐、あなたの証言によると、このリストの総額は738,000ドルです。これは正しいですか?
 朴:はい。
 アンダーソン:そしてリストを読んだところ、最も早い株式購入は1975年9月8日であり、最後の株式購入は1975年10月3日でした。これはリストの正しい読み方ですか?
 朴:はい。
 アンダーソン:つまり、その1か月間に738,000ドル全額が基金から調達され、株式の支払いに使用されたことになります。 これは正しいですか?
 朴:はい、基本的には。
 アンダーソン:そして738,000ドル全額は[国際]統一教会年金基金から出たものである。これは正しいですか?
 朴:そのとおりです。
 アンダーソン:そして、その738,000ドル全額は、あなたが石井氏かシンバ氏から受け取ったものです。これは正しいですか?
 朴:そのとおりです。
 アンダーソン:それに関しては、シンバ氏からではなく、全部石井氏から受け取ったものなのか、それとも一部はシンバ氏から、一部は石井氏から受け取ったものなのでしょうか?
 朴:ほとんどがシンバ氏経由で届きました。
 アンダーソン:もっと正確に教えてもらえますか? そのお金の一部はシンバ氏以外から受け取った部分はあったのでしょうか?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:つまり、その1か月間に738,000ドルは全額シンバ氏から受け取ったと。
 朴:はい。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 アンダーソン:シンバ氏と石井氏以外に、年金基金に関して何らかの責任を負った人はおりますか?
 朴:私の知る限りではありません。
 アンダーソン:もちろん、ご自身以外にも。つまり、年金基金には、石井さんとシンバ氏が関わっていたということでよろしいですか?
 朴:はい。
 アンダーソン:あなたの知っている限りでは?
  朴:私の知る限り、そうです。 私の知る限りでは 。
 アンダーソン:あなたの知っている限り、年金基金の運営について何らかの知識や責任を持った人は、いつの時代も他に誰もおりませんでした。そうですか?
 朴:私の知る限りでは、ありません。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 アンダーソン:そして、あなたの以前の証言を明確にするために、要約ますので、もし私が間違っていたら訂正してください。あなたは、石井氏があなたに貸した22万3,000ドルをどこから手に入れたのか全く知りません。それはあなたが提出した3枚の約束手形によって証明されています。彼がそのお金をどこで手に入れたのか知りませんが、それは正しいですか?
 朴:はい、わかりません。
 アンダーソン:彼の個人的な財政状況はわかりません。すなわち、彼が裕福な人なのかそうでない人なのかわからない、とあなたは証言したと思います。あれは正しいですか ?
 朴:基本的にはそれが正しいです。
 アンダーソン:では、そのお金がどこから来たのかを教えてくれるのは、石井氏だけなのでしょうか?
 朴:それは正しいです。
 アンダーソン:同様に、年金基金自体に関しても、あなたは年金基金を実際に見たことがございますか。年金基金として保管されているお金をご覧になったことがありますか?
 朴:保管されているの[を見たこと]はありませんが、私の事務所でお金を受け取りました。ニューヨークからワシントンまで何度も移送したのは私です。
 アンダーソン:ディプロマット・ナショナル銀行の株式購入の問題が生じたときに、あなたはそのお金を受け取りました。あれは正しいですか?
 朴:はい。
 アンダーソン:でもその以前に、年金基金をご覧になったことがありますか?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:あなた自身、年金基金にお金を寄付したことがありますか?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:年金基金に寄付するためにお金や小切手などを渡す人をご覧になったことがあるでしょうか?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:石井氏またはシンバ氏は、誰がどれだけ年金基金に寄付したかについて、何らかの記録を保管したことがありますか?
 朴:彼らは間違いなく何らかの記録を持っていると私は確信しています。
 アンダーソン:石井氏はその記録をまだ持っていると思いますか?
 朴:わかりません。
 アンダーソン:あなたの知る限りでは、シンバ氏が保管していましたか、それとも石井氏が保管していましたか?
 朴:普段はシンバ氏が守ってくれました。
 アンダーソン:あなたの知る限り、記録は現在どこにあるでしょうか?
 朴:彼らは日本にいるはずです。 彼らは秘書室、つまり秘書の事務所をすべて日本に持ち帰りました。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 秘書室を日本に移した理由は後に触れる。

 アンダーソン:株式の購入に関連して、あなたがニューヨークからワシントンにお金を持ってきたのはおよそ何回ありますか?
 朴:ああ、正確には分かりません。 複数回、はい。複数回です。
 アンダーソン:近似値を求めてみましょう。 2倍以上だと思いますか?
 朴:おそらく2回以上はあると思います。
 アンダーソン:3回以上?
 朴:私は存じません。
 アンダーソン:5、6回以上になるでしょうか?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:それで、おそらく3回か4回話していることになります。それはおおよそ正しいでしょうか?
 朴:おそらくそれはほぼ正しいでしょう、はい。
 アンダーソン:株の購入資金はすべてニューヨークから出たのでしょうか?
 朴:はい。
 アンダーソン:そして、それはすべてニューヨークかワシントンにいたシンバ氏からあなたに与えられたものです。あれは正しいですか?
 朴:彼は主にニューヨークに駐在していました。
 アンダーソン:シンバ氏は自らその資金をワシントンに持ち込んだのでしょうか?
 朴:はい。
 アンダーソン:それは何回起こりましたか?
 朴:私の記憶が正しければ、これも何度か覚えています。
 アンダーソン:おおよその回数を教えていただけますか?
 朴:わかりません。それほど多くはありませんが、おそらく複数回です。
 アンダーソン:シンバ氏は株式購入のどれくらい前にお金をワシントンに持ってきましたか?
 朴:はるか前ではありません。それはちょうど株式購入と重なっておりました。
 アンダーソン:近似値を教えていただけますか。1週間、2週間?
 朴:お金は1 週間以上保管されることはありませんでした。
 アンダーソン:では、最初の株式購入が9月5日であれば、それはチャールズ・キム氏のもの【訳註:キム氏が朴から借りた10万ドルのこと。後述。】になりますか?
 朴:はい。
 アンダーソン:つまり、8月20日以降にニューヨークからお金が下り始めたと推定できるでしょう。それは妥当な見積もりでしょうか?
 朴:おそらく9月の前半でしょう。
 アンダーソン:9月前半?
 朴:はい。
 アンダーソン:株式購入資金を年金基金から得る可能性について、石井氏またはシンバ氏と初めて話し合ったのはいつですか?
 朴:繰り返しますが、おそらく9月の前半か8月の後半でしょう。
 アンダーソン:以前に彼とそのことについて話し合うことさえしなかったーー
 朴:いいえ、話し合いました。おそらく私は最新の証言で言ったか、7月か8月に彼に会った記憶があるとどこかで言ったと思います。彼はここにいて、石井氏も7月と8月の一時期ここにいました。そこで私たちはポリシーを策定しました。私たちは合意に達し、計画は完全に合意されました。 したがって当時、シンバ氏にはそのような指示がありました。
 アンダーソン:7月か8月のいつか。
 朴:はい。
 アンダーソン:それ以上に正確な記憶は出てこないでしょうか?
 朴:はい。
 アンダーソン:あなたの記憶の限りでは、最初の資金がニューヨークから降りてきたのは8月下旬か9月上旬でした。そうですか?
 朴:はい。
 アンダーソン:シンバ氏はどうやってお金をニューヨークからワシントンまで物理的に運んだのでしょうか?
 朴:わかりません。私はいつも彼に事務所で会いました。
 アンダーソン:彼があなたの事務所に現れたとき、お金はどのような形でしたか?
 朴:ブリーフケース、いつかは。私は覚えていません。私はそれに注意を払わないだけです。
 アンダーソン:お金は包装紙に包まれていましたか?
 朴:はい、おそらく包まれていると思いますが、私はそれについてはまったく注意を払っていません。
 アンダーソン:それが100ドル紙幣だったか覚えていますか?
 朴:数百ドル札。
 アンダーソン:おおよそ、100ドル紙幣でどのくらいのお金がありましたか?
 朴:わかりません。推測することはできません。
 アンダーソン:あなたがニューヨークからお金を持ってきたとき、どうやって旅行しましたか?
 朴:私はブリーフケースに入れて旅行しますが、小さなハンドバッグを使うこともあります。
 アンダーソン:アタッシェケース?
 朴:アタッシェケースやトラベルケース。
 アンダーソン:あなたはニューヨークから飛行機で旅行したのですか?
 朴:大抵は、はい。
 アンダーソン:アタッシェケースやブリーフケースにお金をすべて入れることができましたか?
 朴:一度に多額のお金を持って旅行することはありません。
 アンダーソン:一度にどれくらいのお金を持っていたと思いますか?
 朴:わかりません。おそらく10万ドル以上。
 アンダーソン:10万ドル以上?
 朴:はい。
 アンダーソン:100ドル札でアタッシェケースにいくら入るかご存知ですか? アタッシェケースにどれくらい入るか、大体の目安はありますか?
 朴:そうは思いません ーー わかりません。私はその経験を試したことはありません。
 アンダーソン:だからこそ私は、朴中佐、その資金がどのような形で入ってきたのか、あなたの最大限の記憶を尋ねたいのです。 1ドル札ではなかったですよね? 838,000ドル【訳註:DNB銀行株購入のため、信者13人に渡した738,000ドルに、チャールズ・キム氏に渡した100,000ドルの合計。後述】は1ドル紙幣で運ぶと非常にかさばるのですが、同意されますか?
 朴:繰り返していただけますか?
 アンダーソン:838,000ドルは最終的にニューヨークからワシントンに行きましたね。
 朴:アンダーソンさん、おそらく2回、3回、あるいは4回、あるいは5回旅行したと言いました。 シンバ氏は複数回旅行しました。そうすると2 ~ 3回の旅行になります。ですから、そのたびに、理論的には、たとえ状況を見ても、私は一度に旅行し、一度にお金を運ぶ必要はありません。
 アンダーソン:だからこそ私はあなたに質問しているのです。あなたは額面が何だったか覚えていないので、あなたが運んだお金はどれくらいかさばったかという質問をしています。
 朴:あなたは私よりもよく知っています。あなたは私よりも多くの米ドルを使って生活しています。
 アンダーソン:私はそんなにたくさんのアメリカドルを使って暮らしたことはありません。
 朴:これほど厚いものが100枚で10万ドル、そのうち10枚。片手で持てるくらいですかね。
 アンダーソン:100ドル札10枚で1,000ドルになりますし、とてもコンパクトですね。
 朴:はい。コンパクト。はい。
 アンダーソン:あなたの記憶の限りでは、正確な記憶がないことは承知していますが、あなたが運んだ紙幣のほとんどは100ドル紙幣でしたか?
 朴:おおむねそのとおりです。すべてがそうとは限りません。
 アンダーソン:しかし、ほとんどは100ドル札です。正確な内訳を求めているわけではありません。 この100ドル札はシンバ氏からあなたに渡されたものですよね? シンバ氏から100ドル札をもらった後に両替したわけではないですよね?
 朴:ごめんなさい?
 アンダーソン:シンバ氏がお金を渡した際 ——
 朴:はい。
 アンダーソン:【続けて】あなたは彼が与えたお金と同じお金で株を買いましたよね?
 朴:はい。
 アンダーソン:あなたは銀行に行って紙幣の額面を変更したり、そのようなことはしませんでしたね?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:つまり、あなたが株を買うために使ったお金は、シンバ氏がその目的であなたに与えたお金とまったく同じでした。あれは正しいですか?
 朴:そのとおりです。
 アンダーソン:そしてあなたは、その大部分が100ドル紙幣に入っていたと証言しました。ということは、シンバ氏はあなたに100ドル札をほとんど渡したということになりますね?
 朴:はい。
 アンダーソン:彼はすでに包装紙に包まれたお金をあなたに渡しましたか?
 朴:時々、そうです。もちろん、すべてきちんと計算されています。
 アンダーソン:シンバ氏はこのお金をニューヨークのどこに保管されていたのでしょうか?
 朴:わかりません。
 アンダーソン:彼がそれを建物のどこに保管していたのか、正確にはわかりませんか?
 朴:いいえ。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 シンバ氏がニューヨークからワシントンまでどのように現金を運んだかはわからない、というのは理解しうる。だが、直前にワシントンまで現金を運んだ当事者であることを証言している朴自身が、輸送手段に使ったとするアタッシェケースなりブリーフケースの内部で、その運んだ現金がどの程度占めていたのか覚えていないというのは不可解である。猪瀬直樹か。

 話は『国際統一教会年金基金』なるものの原資に移る。

 アンダーソン:あなたの知る限りでは、資金はどのようにして物理的に基金に入金されたのでしょうか。つまり、シンバ氏、石井氏、あるいはお金を管理していた誰かへどのように運ばれたのでしょうか?
 朴:はい、アンダーソンさん、私はすでにこの委員会で、私はプロジェクト責任者でもプログラム責任者でもありませんし、基金の運営を担当していませんが、方針と原則は知っていますと証言しました。原則として、その資金は、ヨーロッパ、アジア、南米など世界の他の地域からこの国に旅行してきた統一教会の信者たちの寄付によってその基金に入りました。
 アンダーソン:念のため言っておきますが、それは他の方との会話から得た理解ですが、正しいですか?
 朴:私の理解ではそうです。
 アンダーソン:言い換えれば、今朝明らかにしたと思いますが、あなたは個人的な知識を持っておらず、誰も基金に寄付しているのを実際に見たことがありません。そうですか?
 朴:そのとおりです。
 アンダーソン:しかし、あなたの理解では、それが蓄財のし方だったのですか?
 朴:この国でお金が集められ、この国で寄付が行われ、一部のお金は直接教会のプロジェクトに送られましたが、一部のお金は年金基金に蓄積されました。
 アンダーソン:私は今、他の教会のプロジェクトについて話しているわけではありません。私は年金基金について話しているだけです。年金基金は海外からこの国に来た統一教会員によって積み立てられたものだと理解していますが?
 朴:はい 。
 アンダーソン:そして、彼らは他のさまざまな国からやってくるだろう、と。これは正しいですか?
 朴:はい。
 アンダーソン:海外から来たのではなく、この国に来た人たちからお金を集めたことがありますか?
 朴:そのことについての知識はありません。
 アンダーソン:ということは、資金の一部は、海外から来たのではなく、すでにこの国に滞在している人々から集められた可能性があるのでしょうか?
 朴:はい。可能ですが、知識がありません。
 アンダーソン:海外というと、その人たちはどこから来るのか、例をいくつか挙げてもらえますか?
 朴:たとえば、イギリス、ドイツ、フランス、そして日本、主に日本です。
 アンダーソン:韓国はどうですか?
 朴:韓国は非常に反論理的というか非論理的というか、何であれ、韓国の法律はつい最近まで韓国からお金を持ち出すことを禁止しており、非常に困難かつ制限されており、韓国のお金を米ドルに両替できることはほとんどありませんでした。もちろん、それを行う方法はありますが、それはそれほど頻繁なことではありません。しかし、例えば日本には、パスポートが与えられるとすぐに、日本の中央銀行がそのパスポートに現地通貨から米ドルへのドル両替を許可するという規定があります。
 アンダーソン:あなたは今、一般知識から証言しているのですか?
 朴:はい。一般知識、はい。
 アンダーソン:年金基金が少なくとも主にこの国にすでにいる人々からの資金提供ではなく、海外からの拠出のみから資金提供されていたのには、何か特別な理由があったのでしょうか?
 朴:すでにこの国に住んでいる人々は、どのような種類のものであっても、通常のルート、つまりアメリカ統一教会に寄付するようすでに向けられているため、すべての資金はアメリカ統一教会の予算に当てられます。
 アンダーソン:海外の人々は、海外の教会のどの支部にでもすでに寄付をしていたのではないでしょうか?
 朴:はい、彼らはそうしていますが、私が言ったように、彼らは旅行するときに多額のお金を持ち出す権利があり、そのお金を持ち込んでできるだけ支出を少なくし、この国の活動にもっと貢献したいと考えています。なぜなら、1971年から1976年まで私たちは主にこの国での福音伝道に焦点を当てていたからです。
 アンダーソン:あなたは別のことをおっしゃっています、福音伝道に焦点を当てることとーー
 朴:それが、[人の]流れが生まれる理由です。
 アンダーソン:それで彼らはこの国に来るのですか?
 朴:その通りです。
 アンダーソン:他の活動ではなく、年金基金にのみ投入される資金を実際に集めるのは誰でしょうか? 実際に海外から旅行してくる人々からそのお金を集めるのは誰でしょうか?
 朴:明確な知識はありません。
 アンダーソン:シンバ氏だったのか、石井氏だったのか、誰だったのかわかりませんか?
 朴:彼らも間違いなく責任の一端を担っていたと確信していますが、私には明確な知識がありません。
 アンダーソン:海外から入国した人たちが年金基金に拠出するお金をどこから手に入れたか知っていますか?
 朴:知識がありません。
 アンダーソン:では、彼らがこの国に持ち込んだお金を最終的にどこで手に入れたのか分からないのですか?
 朴:海外でお金を得る方法は多種多様です。多くの場合、彼らは自分で稼いでおり、仕事を持っており、収入がある場合が多く、おそらくそれを利用するか、あるいはビジネスや教会からの支援による他の多くの方法があると思われます。方法はたくさんありますが、私には明確な知識はありません。
 アンダーソン:年金基金に寄付した人をご存知ですか? 先ほど、あなたは実際に自分自身が寄付していないし、誰かが寄付しているのを見たこともないと証言したと思いますが、間接的な手段で実際にこの基金に寄付した個人を一人でも知っていますか?
 朴:いいえ。
 アンダーソン:年金基金という基金は統一教会員にとって一般的に知られたものでしたか? それは、統一教会の会員が知っている可能性が高く、したがって貢献したいと思うようなことでしょうか?
 朴:それほど大きなものではなかったので、ある程度の知識はありました、はい。でも、それは信者にとって広く知れ渡っているような知識ではありません。
 アンダーソン:基金の担当者は、基金に寄付する会員に、このような基金があること、資金が必要であることをどのように伝えたのでしょうか。
 朴:私たちの教会に寄付したいと思ってやってくる人々は、ある程度のお金を生み出します。彼らはこの国を離れるとき、残ったお金を全額寄付したいと考えています。彼らは、それが善意、教会の大義に役立つ限り、その資金が年金基金の教会プロジェクトに使用されるかどうかをあまり気にしません。つまり、彼らは資金を残し、その資金を適切なルートに誘導するそれぞれのリーダーを残す方法なのです。
 アンダーソン:資金を他の場所ではなく年金基金に投入するという決定を誰が下すでしょうか?
 朴:おそらく、非常に多くの人がその意思決定に関与しているでしょう。
 アンダーソン:多くの人がとおっしゃる。 先ほど、あなたは石井氏とシンバ氏ご自身だけを指摘したのかと思いましたがーー
 朴:年金基金に関しては、はい。
 アンダーソン:それが私の話していることです、年金基金。言い換えれば、統一教会の信者は教会にお金を寄付することができ、その信者はそのお金がどこに使われるかはあまり気にしないかもしれませんが、そのお金を年金基金に入れるか他の場所に入れるかを誰かが決定しなければなりません。
 朴:はい。
 アンダーソン:誰がそれを決めるでしょうか?
 朴:年金基金職員は年金基金の世話だけをします。各国の指導者が受け取る寄付は、それぞれの国に指導者がおり、その国の指導者もある程度の貢献を持っています。
 時々、彼らはそのお金を教会のプロジェクトチャンネルに寄付します。 彼らは年金基金にお金を寄付することもあります。
 アンダーソン:ということは、石井氏かシンバ氏は他の教会の指導者からお金を受け取るということになりますね?
 朴:はい。
 アンダーソン:彼らは必ずしもその人から直接お金を受け取るわけではないのですか?
 朴:繰り返しますが、これは私の絶対的な知識ですが、一般的にそのようなことが起こっていたと推測できます。
 アンダーソン:お金が年金基金に送られるのか、いくらのお金が年金基金に送られるのか、あるいは他のところに送られるのかについて、決定権を持った人はいたのでしょうか? 誰かがそれを決定する権限を持っていましたか?
 朴:まあ、その決定を下す明確な経路や一人の人物は存在しません。その決定はさまざまな方法で行われましたが、私はその意思決定プロセスを明確に理解していないため、あまりうまく説明できません。
 アンダーソン:あなたは以前、年金基金に寄付した会員を一人も知らないと述べました。教会の指導者が年金基金にお金を引き渡した例を知っていますか?
 朴:いいえ、実例はありません。
 アンダーソン:年金基金には資金が必要であるかもしれないという事実と、彼らがそれに寄付するかどうかについて、他の教会の指導者と話し合ったことがありますか?
 朴:そうですね、どんな出来事も覚えていません。
 アンダーソン:朴中佐、年金基金がどのように資金調達されたかを誰が知る立場にあるでしょうか? 教会で誰がそんなことを知るでしょうか?
 朴:主に日本の指導者です。
 アンダーソン:日本の指導者の名前を一人以上挙げていただけますか。
 朴:よくわからないので、それらの名前を挙げることはできません。単純に、この国に旅行する日本人会員が増えているからと言っているのです。
 アンダーソン:でも、あなたは日本の教会の指導者ならご存知だろうとーー
 朴:たとえば、石井氏。
 アンダーソン:石井氏以外に日本のリーダーはいたのですか?
 朴:そうですね、本当にたくさんの日本の指導者が現れては消えていきます。確かに私には特に知識はありません。
 アンダーソン:年金基金に使われた838,000ドルで基金を使い果たしたかどうか、838,000ドルが使われた後は基金にお金がなくなったかどうかご存知ですか?
 朴:わかりません。
 アンダーソン:ということは、資金が使用された後に追加の資金があったかどうかは分からないということですか?
 朴:ありえます。私の答えは「知識がありません」。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 ここまで朴の証言を聞く限り、『国際統一教会年金基金』について石井氏やシンバ氏以外に実態はわからないとする一方、「海外信者からの寄付金を年金基金に振り分ける決定には非常に多くの人が関与しているだろう」とか「年金基金職員は年金基金の世話だけをする」などと、細かいディテールは知っている。基金に関する知識が妙に偏っているのだ。

 では、この『運び屋』であるシンバ氏とは何者だろうか?

 アンダーソン:シンバ氏について教えてください。
 朴:はい。シンバ氏は、私たちの非常に忠実な日本人信者の一人で、おそらく1971年、その頃、このアメリカという国に来た最初のグループのようなものとしてこの国に来ました。以来、彼は忠実な信者であり、主に金融の分野で働いていました。
 もちろん、年金基金も彼の責任です。それで、彼は石井氏と仕事をしていたんです。彼はこの国にフルタイムで駐在していました。石井さんは旅行がちでした。シンバ氏はこの国にフルタイムで勤務したんです。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 ところが、米国の古参信者向けだったはずの『国際統一教会年金基金』を、なぜか日本へ移管する。

 フレイザー:中佐、あなたは石井氏が1975年に年金基金を日本に移管したと言いました。そうですか?
 朴:いいえ、委員長、1976年の終わりだったと思います。
 フレイザー:1976年末?
 朴:はい。その頃です。
 フレイザー:米国から日本への移管には何が関係していましたか?
 朴:彼は日本国外で年金基金を運営していました。
 フレイザー:この基金はそれ以前は米国にありました。そうですか?
 朴:何であれ、当時彼らが持っていた資金がどうであれ、そう、それは米国にありました。
 フレイザー:では、その基金はどうなったのでしょうか?
 朴:私は存じません。彼は基金の残りを日本に持ってっているかもしれません。私は知りません。 繰り返しますが、私はプロジェクト担当者ではありません。 私はプログラム担当者ではありません。
 フレイザー:はい。ですがあなたは彼に指示を与えたのです。
 朴:繰り返しになりますが、カウンセラーとしてです。これは私が大まかに、と言っていることです。
 フレイザー:彼が日本に移管したことをどうやって知りましたか?
 朴:彼が私に言ったからです。
 フレイザー:彼はあなたに何と言ったのですか?
 朴:1976年の状況は、ご存知のとおり、1976年9月18日、文師はおそらくワシントン最大の宗教運動である『ゴッド・ブレス・ アメリカ ・フェスティバル』をワシントンで開催しました。そのため、その瞬間まで、私たちは全国で大規模な運動を行いました。非常に多くの統一教会信者が、日本を含むさまざまな国から米国へ入国しました。この出来事が終わった後は、重点が米国から欧州に移ったため、私たちはさらなる運動を計画しませんでした。そのため、[信者の]流れは沈静化、つまり緩和されました。
 それが、米国に来る信者の流入がこれ以上なくなった理由であり、これが、石井氏が新聞社【訳註:世界日報社のこと】やら、年金基金に関係する事務所やら、スタッフを引き連れて日本に移住することを決めた理由です。日本国外で活動していました。
 フレイザー:彼は資金を物理的に送金したのでしょうか?
 朴:委員長、私には知識がありません。
 フレイザー:彼がいくら移管したかご存知ですか?
 朴:いいえ、委員長。
 フレイザー:彼がどのような形で移管したかご存知ですか?
 朴:彼は銀行経由で送金することも、現金で送金することもできると理解していますがーー
 フレイザー:中佐、彼が何をしたかご存知ですか?
 朴:私は存じません。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 1976年はフレイザー委員会で統一教会が取り上げられ始める頃で、捜査の手が及ぶことをおそれた統一教会が、先手を打って日本へ資金移動した可能性が考えられる。

 朴:……それで、1976年に年金基金が日本に移管したとき、おそらく秘書の一人だったシンバ氏も移転し、日本に戻りました。しかし、シンバ氏が非常に重篤な癌に罹患していることが分かり、それが発見されたのは、おそらく1977年のごく初期か1978年の後半だったと思います。そこで、彼は良い治療法を確保するために短期間この国に来ました。
 どうやら彼は癌の回復のために西海岸地域かホノルルにいたようです。しかし、最終的に彼は日本にある私たちの診療所、私たちの教会の病院がやはり最善であると考え、日本に戻ることを決意しました。そこで彼は日本に永住しました。最新の情報では、私が前回韓国に行ったとき、日本の指導者からついに亡くなったと報告を受けました。私は彼が天に召された、旅立たれた日付を知りません。
 アンダーソン:彼は日本で亡くなったのですか?
 朴:日本で亡くなりました。
 アンダーソン:東京で?
 朴:はい。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 こぼれ話(17)で触れたウィリアム・カーティン大佐に続いて、またしてもKCFFに絡む重要人物が亡くなっている。さらに、今回の証言の末尾で、

 朴:ご存知のとおり、私たちはシンバ氏が投資された資金、つまり投資された資金、つまり国際[統一教会]年金基金に関与していると証言しましたーー
 ベッチャー:はい。
 朴:【続けて】シンバ氏、私がここで言おうとしているのはこれだけです。いくつかのことは、単なる英語の表現です。 私も同じ気持ちで言いましたが、アメリカ人の耳には誤解されるかもしれません。 それが、私がこれらのことをあなたに記憶にとどめようとしている理由です。 実際に基金の実質的な管理者はシンバ氏でした。私は大体そう言っていましたが、実際は彼はお金の管理をしていたお金の人でした。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 亡くなったシンバ氏に全責任を追わせるような発言である。
 だが、果たしてこれは本当だろうか? 
 実は13人の信者に株購入資金を渡す少し前、朴は「国際統一教会年金基金は古参信者のため」と言いながら、ディプロマット・ナショナル銀行の創業者であるチャールズ・キムにもDNB株購入資金のため10万ドルを融資している。ただし、キム氏は信者ではないからか、朴はシンバ氏から理由を伏せて金を借りキム氏に与えている(ちなみに、チャールズ・キムからの懇願に負けて金を貸したように朴は述べているが、果たしてどこまで信用できようか?)。
 そのことを問われた際、

 アンダーソン:なぜシンバ氏にそのお金がチャールズ・キムのためのものだったと言わないのですか?
 朴:そうですね、問題を複雑にするつもりはありません。繰り返しますが、彼は私を信頼しており、私も彼を信頼しています。彼は私の言葉を信じています。 彼はお金が良い目的のために使われることを知っていますし、私は責任を持つ方法を知っています。
 アンダーソン:チャールズ・キムがお金の受取人になると彼に伝えると、何かが複雑になると思いますか?
 朴:いいえ、シンバ氏に関する限り、それが複雑になるとは思いません。 私は彼に知識を負担させる必要はありません。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 あたかも彼が生きているような発言をしている(前述の、シンバ氏が死去していることを証言するのはこの直後である)。そもそも、シンバ氏は実在していたのか? 彼は朴普煕の証言の中でしか存在しない。

 であるならば、シンバ氏の上司である石井光治に尋ねるしかないが、

 アンダーソン:石井氏は今どこにいますか? 彼はこの国にいるのですか、それとも日本にいるのですか?
 朴:彼は日本にいると思います。
 アンダーソン:彼は最近この国に来ましたか?
 朴:どれくらい最近か分かりませんが。 はい、彼はこの国に来ました。 実際、彼はここでの私の聴聞会に出席しました。
 アンダーソン:聴聞会のひとつ――
 朴:第二回か第一回の。彼がここにいたことを覚えています。おそらくそれが最近のものでした。

米下院・国際関係委員会・国際機関小委員会事前聴聞会(1978年6月20日)

 逃がした魚は大きい。

〈六〉につづく。


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