引用は適宜省略している。また、[ ]カッコ内は訳者による補筆である。
発言者一覧
○ダン・フェファーマン……自由リーダーシップ財団(FLF)評議会メンバー。1974年当時は事務局長。
○クリス・エルキンズ……元FLF職員。1974年9月14日の「日本大使館卵投げ未遂事件」の実行役のひとり。
○ドナルド・M・フレイザー……下院・国際関係委員会ー国際機関小委員会委員長
『ワシントン反日デモ事件』を深掘りする(計画篇)
KCIAからワシントンでの反日デモをするよう依頼を受けた統一教会は、傘下の反共政治組織であるFLFにその任を命じる。
「確かに覚えている」と言ったにもかかわらず、自分とニール・サロネン(FLF会長)以外に参画した者の名前は思い出せないと、フェファーマンは不誠実にも回答を避けた。なお、フェファーマンや、こぼれ話(9)で触れる文鮮明当人やその側近である朴普煕(パク・ボーヒ)など、統一教会の現役信者や幹部は、虚偽の発言はしないと宣誓をしているにも関わらず、不誠実であったり虚偽と思われる回答をしているので、発言の信憑性には注意を要する。
さて、デモ隊はどういうルートで廻るはずだったのか?
デュポン・サークルでのデモ隊の行動計画に対するフェファーマンとエルキンズの証言は、おおむね一致しているように思える。だが、デモ隊の位置付けおよび別働隊の有無に関し、フェファーマンは何ら発言していない(これはフレイザー委員長の尋ね方に問題があるのだが、中止された計画である以上、彼にとって掘り下げても意味がないと思ったのかもしれない)。デモ隊と別働隊に関する曖昧さは最終的に報告書に少々問題を残す(この考察はこぼれ話(7)で)。
では、日本大使館への卵投げについても証言を拾ってみよう。
この証言中の「前夜」はいつなのだろうか。決行前夜(9月13日)だとすると、後述する安田駐米大使襲撃計画がハナから破綻するので、それ以前の夜だろう。「小指を切り落とし」た事件が10日における天安市のこと(こぼれ話(5)参照)であるならば、会議で卵投げのアイデアが出たのはそれ以降に違いない(因みに天安市の話題が朝日新聞に載ったのは翌11日である)。
もし、この「前夜」が、KCIAワシントン支局から依頼が来た日の「前夜」ならば、文鮮明が言及した(『報告書』44ページ)12日の信憑性は俄然高くなる。
卵投げに参加する別働隊にも、選出には一定の基準が存在していた。もちろん、デュポン・サークルでのデモ隊についても。
こぼれ話(2)における金相根(キム・サンクン)の証言との違いに注目。デモの参加者が、韓国政府が当初望んでいた「在米韓国人」から、統一教会主催のそれは「(見た目が)西洋系アメリカ人」に変わっているのだ(この差がいかなる意味を持つのか、という考察はこぼれ話(9)で)。蛇足だがエルキンズはギリシャ系アメリカ人である。
当初、日本大使館前で行われる行為は「卵投げ」だけではなかった。
当時の駐米日本大使・安川壮(たけし)氏を「捕まえる(原文では "catch" )」という計画が存在したのだ(捕えて具体的に何をするつもりだったのかは不明)。
最後に、今更感はあるがデュポン・サークルのデモ隊に参加した人々の属性を証言から拾ってみよう。
【註】『ライジング・タイド』はFLF発行の機関紙。
白々しいとはこういう事を言う。
(4)に続く。