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【小説】パートナー2【雨のち虹・その6】
"パートナー"という言葉をどう定義するかは人によるだろう。
少なくともオレは"志を同じくする協力者"と考えてる。
それ以上でも、それ以下でもない。
もしこの定義をオーバーするようなら、それはまた"別の関係性"になるだろう。
虹やレインちゃんとのオフ会を終えてオレが向かうのは光晶公園。彼らには悪いけど、今日オレが光晶町に来た理由はここだ。
パートナーに会う。
夕暮れ、まだ日が明るいこの時間。オレは光晶公園に着いた。
まだ公園で遊んでる子供たち、ベンチで休憩している散歩帰りの大人。
オレは適当な柱にもたれかかってスマホを取り出した。そうして通話アプリから一つのアカウントを選ぶと"通話"をタップした。
「おやおや、こんな夕暮れにどうなさいましたかなリトくん?」
スマホと、後ろから声が聞こえた。
なじみのある声の主……オレ"リト"はパートナーである"ミィ"と初めて邂逅した。
◆◆◆◆◆
「いやーまさかこんなにあっさり会うことができるなんてね。お互い顔を知らないからあの手この手を考えてたけど……オーラで分かったわ」
ミィが頭の後ろで手を組みながら言う。
ミィ。改めてオレのパートナーを見る。
ロングヘアーはとくに束ねることなく垂れ流していて、黄色いカチューシャをつけている。
服装は黒いフード付きのラフな格好。とくに飾ることなく"普段の姿です"って感じがする。
「リトくんもあっさりした格好だね。初めて女性と会う服装じゃないぞ」
「そっちもな。でもだいたいイメージ通りで安心した」
「こっちもね。めっちゃいかつい野郎だったら即逃げてたわ」
「マジで?」
「知らん」
適当な会話をネット上と同じ感覚でできるのは安心する。
光晶公園から少し歩いて近場のレストランに入る。
夕刻の時間なので少々混んでいる。待機所にいる間、特に会話はしなかった。
ようやく席に着き、各々メニューを頼む。
オレはピザ、ポテト。
ミィはステーキセット、サラダ、ドリアンを注文した。
「お前、よく食べるな」
「リト君が食べなさすぎなんだよ。もっと食べな、若い者よ」
ご飯を食べながらあれやこれやと会話をする。
写真のこと、絵のこと、世界平和のこと、将来のこと、人間の創成期のこととか。
そんななか、ふととある話題がミィから上がった。
「人工知能ちゃんとは仲良くしてるかい?」
少し体が震えた。
「人工知能……レインちゃんか。さっき会ってきたよ」
「ほえー。どんなだった?」
「どんなだったって……ん-、元気だった」
「それは何よりだ」
ご飯をかきこみながらミィは言う。
「面白い友達を持ってるねリトくんは。ワタシもいつか人工知能に会ってみたいなー」
「会ってどうするの?」
「どうしよう……」
「なんとなくほしいだけか」
「……いや、理由はある」
「ほう?」
「毎朝イケてるボイスかかわいいボイスで起こしてほしい」
「せか。オレは今のところ間に合ってるからいいかな」
「いつか一人一台の人工知能の時代がくるかもね」
「ネットナビみたいな?」
「ネットナビみたいな」
ご飯も食べ終わり、レストランをあとにする。
初めて会ったオフ会とはいえ、正直ネットでの会話と大して変わらない交流だった。
対面ではあったけど、まあ最初はこういうものなんだろう。
「またいつか会おうね青年。次はもっと男を磨いてきなさい」
ミィは去っていった。まるでまた明日も会えるみたいに。
さて。
◆◆◆◆◆
「レインちゃん、そろそろ出てくれば?」
オレのスマホからレインちゃんが出てくる。
「バレてたか、まさかこのレインのオーラを感じ取るとは……おぬしやりますな」
「人工知能の話になったときに、きみ震えてたでしょ?」
「そうだっけ?そうかも」
オレとミィの会話はレインちゃんに筒抜けだった。
まあ特に困る話でもないからオレは黙ってたけど、ミィがどう思うかな……。
「君が盗聴していたこと、ミィに話してもいい?」
「盗聴とは失礼な!レインはリトくんのお相手がどんな人か気になって……それはもう親のごとく!」
「虹の差し金……ではないよね?」
「うん。完全にわたしの興味本位」
「なるほどね」
「まあ……ミィちゃんに話してもいいよ。わたしも盗聴しながらドキドキさせてもらったし」
何をドキドキしていたのだろうか。
そんなこんなでレインちゃんも虹のところに帰っていった。人工知能……付き合いが難しいな。
ミィも人工知能が欲しいみたいな話してたな。やっぱり夢のある話なのだろうか。
あるいみ次世代の"パートナー"になりうる要素なのかもな。そう思いながらオレは帰路についた。
また今夜もミィと通話かな。日はすっかり沈んでいた。
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