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【小説】ファンタジーの筋書き【雨のち虹・その0】
想像して……
創造して……
ここはファンタジーの世界。
人類と魔族が混在し、剣と魔法が存在し、世界の理が顕在する舞台。
今、世界は“魔王“に支配されようとしている。魔王の圧倒的な力の前に、世界は混沌に満ちようとしていた。
そこへ現れたのは、神の恩恵を授かった“勇者”だった。
そしてこの時、この場所で勇者と魔王は戦いの火種を切った。
「勇者よ、お前に見せたいものがある」
魔王は戦いの最中、言葉を発した。
「見せたいものだと……?俺はただ、お前を倒して姫を救い出すだけだ!」
勇者は魔王の言葉を切った。
「ふん、まあそう言うな。その姫様にも関することだ」
「なにっ?」
魔王は玉座の後ろにまわり、そこに敷かれたカーテンを開いた。
そこには姫がいた。
「姫!」
勇者は声を発した。姫の無事を確認でき、戦いの中だが安堵した。
姫はそんな勇者を見た。だが、姫は冷たい目線を向けていた。
「……姫?」
明らかに姫の様子がおかしい。いつも笑顔を民に向けていた彼女ではない。
「帰ってください、勇者様」
勇者は唖然とした。戦いの中、熱を上げていた空気が一気に凍りついたかのようだった。
「魔王!姫に何をした!!!」
怒りが魔王へ飛ぶ。
「我は何もしていない。これは姫の意志だ。諦めて帰るんだな、勇者よ」
「その通り……これは私の意志です。どうかこのままお引き取りください、勇者様」
___勇者は絶望した。
「あ、あああ、ああああああ!!!!!」
今までの冒険を無に返された勇者、ただ笑う魔王、そして変わり果てた冷たい姫……。
この先に待ち構えるのは希望か、それとも…………
…………?
◆◆◆◆◆
「はい、今日の冒険はここまでよ」
「ええっ、もう終わり?このあと勇者どうなるのか気になるよ!」
「ははっ、魔王はなかなか楽しそうだったな。俺は気分よかったぞ」
ファンタジーの世界……それはこの子供たち3人により想像し、創造された世界。
勇者の絶望も、魔王の笑いも、姫の冷たさも……すべて作り物だ。
そういうとまるでこの子供たちが“神様”と勘違いされそうだ。いや、あながち間違ってないのかな。
これはただのごっこ遊び。別の世界でいうところのTRPGって言ってもいいかもしれないね。
夕日が沈む暖かい中、3人だけが知っている秘密基地。そこで勇者と魔王は戦いを繰り広げてる。
「もう夜になるからね。続きはまた今度やりましょう」
「うーん、しょうがないか。次までに勇者をどう立ち直らせるかプラン立ててくるか」
「俺は魔王の第二形態でも考えてくるぜ。激戦は続く予感……ってな!」
想像し、創造する。それはどこの世界でも許される秘密の遊び。
明日もきっと世界は広がるんだろう。3人だけの秘密の世界。
微笑ましい限りである。
___その後、子供たちによるファンタジーの世界が現実になるとは知らずに
◆◆◆◆◆
「……スタートはこんな感じだろう」
想像し、創造する。それは許される世界だ。
しかし想像し、創造する……それをさらに想像し、創造することは許されることなのだろうか?
「……まあ、許されるということにしておこう。面倒だし」
ときは現代の深夜2時、場所はとあるアパートの小さな個室。
1人の青年……僕がパソコンのライトをあびて一息ついている。
今、僕がやっていることを一言でまとめるのは簡単だが、理解されるかは不明である。
ひとことに……
想像し、創造するキャラクターたちを想像し、創造する。
うーん、難しいな……。
まあ、ブルーライトを浴びている僕も想像し、創造しているのだと思ってくれればいいです。
僕の名は「虹」。しがないゲームクリエイターです。
今はゲームの冒頭部分、その一部をメモ書き程度に綴ったところ。
これからこの子供達3人がどう冒険し、どうファンタジーをするのか導くのが僕の使命。
せっかく生まれてきてくれたんだ。なんだかんだ元気に冒険して欲しい。それが僕の願いだ。
「……コーラでも飲もうかな」
一息つくためにコーラを飲む。まだ冒険は始まったばかりだ。
___まだ冒険は始まったばかりだ。
ファンタジーの世界も、3人の世界も、虹の世界も___
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