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ステラおばさんじゃねーよっ‼️82.遺骨の帰還〜父の好きな魚

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️81.グッドルーザー〜ふたりの共通点 は、こちら。




🍪 超・救急車



ポーちゃんとひかりの新居引越し祝いも終盤に差しかかった頃、カイワレのスマホが鳴り響いた。

その画面には、見知らぬ番号が映し出されている。

「はい、大根です。はい、はい、わかりました。明日13時に八雄警察署に伺います。はい、よろしくお願いします」

「誰から〜?」

ほろ酔いポーちゃんがカイワレに、だるそうに訊ねた。

「警察から。明日、父の遺骨を引取りに来て欲しいって」

カイワレはよどみなく他の皆にも聞こえるよう、ポーちゃんへ伝えた。

「大根家って、お墓あるの?」

「全然わからない。とにかく遺骨を引き取ってからその後の事は考えるよ」

「そうだね。まずは引き取りに行かないとだね」

知波は、この事実をうつむきながら静かに受け止めた。

歩は、複雑な表情でカイワレを見た。

ひかりは、この場の空気を変えようと言葉を放つ。

「でも、良かったですね!たいしろうさん、知波さん」

ひかりはふたりにやさしく告げた。

ふたりは、

「ありがとうございます」

とひかりに深々お辞儀した。

⭐︎

翌日、遺骨を引取るためにカイワレと知波は八雄警察署へ向かった。

彼らの新居最寄駅の多塚駅から八雄駅までだと1時間くらい電車に揺られる。

道中、カイワレは知波と遺骨引取後の事を話していた。

「ねえ、母さん。父さんのお墓、どうしようか?」

「そうね。わたしも昨日からずっとその事ばかり考えてるわ。大根家にお墓があるかもわからないし、建てるとしてもお金がかかるからすぐにとはいかないし…。一旦今の家に安置して、1年後くらいに新たにお墓を建てようかな、と考えたりね」

「たしかに。俺の貯金はスッカラカンだし、本が正式に出版されて大ヒットしたら、印税で購入できるんだけどな〜」

とカイワレは現状と願望を、知波に伝えた。

「そうね。でも早く供養したい、という気持もあるの。このもやもやした気持、わかるかな?」

知波の複雑な悠一朗への想いを、カイワレは慮った。

「うん、何となく。父さんて、どんな人だったの?」

カイワレは自然な流れで、父について質問した。

「そうね。やさしい人だったわね、太士朗に似て。あとは海洋生物が好きでね、図書館から借りてきた図鑑を見ていたわ。あの、カラフルな魚…何だっけ?」

知波が《あの魚》を特定しようと、絞り出している。

「あ、あれかな。オレンジと黒の魚で、温かい海にいる…」

ふたりはその魚の総称を思い出そうと、躍起になっている。

「うーん、有名な魚アニメキャラの名前しか浮かんでこない」

「…あっ!」

カイワレは急に思い出し、少し大きめな声で言った。

「熱帯魚!じゃない?」

「あー、それよ!ソレソレ〜!」

ふたりは胸のつかえが取れ、子どものように笑い合った。

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