ステラおばさんじゃねーよっ‼️95.祝宴の顛末〜はつ恋Kiss
初対面の神林夫妻にも、萌は早々に打ちとけた。
若森は陽気に酔っている。
「あれ〜、カイちゃん。さっきの寝言、何アレ?!」
呂律が回らないのに、いきなり叫びだす。
「違うんじゃぁ!萌シャーーーン!!」
外のチェアにいた萌は、若森の大声にびくっと反応し顔を赤らめた。
「もしかしてたいちゃん、萌シャンに恋しちゃったりなんかして?」
大きく目を見開き、ポーちゃんはカイワレをマジマジと見た。
「まあ、ね」
カイワレも否定しなかった。
「おめでとう、たいしろうさん!」
とひかりは言い、
「マッチングアプリは不要ですわね!」
とほほえんだ。
そばでその話を聞いていたほろ酔いの歩が、
「ホレたハレたの、あたしにゃ関係ない!わたしはね〜仕事に生きるのだ!!」
と少しすねたように叫んだ。
「では歩ちゃん、うちの社員で良ければ紹介しますよ」
とひかりが提案すると、
「え?!本当に?やっぱり頼れるわたしのお姉様♡」
調子良く言うと,歩はひかりの首に抱きついた。
「それではわたしが産休に入る前に、紹介しますね」
とひかりが歩へ告げた。
「え?!ひかりさん、おめでたなの?」
「あ、言う順番を間違えました。はい、わたしあと半年後にママになりま〜す!ね、パ〜パッ!!」
ひかりはポーちゃんに向かって言った。
「おぅ、パパになるぜぃ!」
とおどけて見せるポーちゃんは最高に幸せそうだ。
「なんてめでたい日だ!さあさあ、まとめて乾杯しましょ♪」
若森はお気に入りの赤ワインやソフトドリンクを新しいグラスに注ぎ出した。
準備したグラスをめいめいに持ってもらうと若森は高らかに声を上げた。
「それでは、カイちゃんの28回めの誕生日と初出版に。神林夫妻のご懐妊に。それから、カイちゃんと萌シャンの熱愛宣言に。それからそれから、わたくし若森と知波の交際事後報告…って、アッ、言っちゃった!」
知波はやれやれといった表情で、酩酊して口走る若森を見た。
「はいはい、皆まとめておめでとさーん!!」
歩が投げやりに声を上げ、それぞれの未来に笑顔で祝杯をあげた。
⭐︎
バルコニーには酔って赤らんだ萌が夜風に当たっていた。
「隣り、いいですか?」
「はい」
「ポテトラビオリ、美味しかったです」
「はい」
ミニチェアに座る萌は、気もそぞろで疲れていて悲し気なようにも見えた。
「迷惑でしたね。俺と萌さんが、熱愛とか」
カイワレはたどたどしい言葉で、萌の気持を確める。
「そうですよ。不釣り合いです…わたしが先生の隣りにいるなんて、そんな」
と涙目で萌はカイワレに訴えた。
カイワレは、
「俺は萌さんがいいんです。初めてあなたに一目惚れしたんです!」
暗がりだったがカイワレも赤面していた。
「え!?…わたしも…」
萌は、そう言うのが精一杯で、
『も』の辺りがほとんど聞き取れない程、小さな声しか出せなかった。
わたしだけじゃなかったんだ!
カイワレに出逢ったあの日、萌の中にもカイワレへの恋心がたしかに芽生えていた。
胸いっぱいになり、目のやり場に困った萌は、下を向くしかなかった。
光に反射しキラキラのしゃぼん玉を大事に包み込むように、カイワレはうつむく萌の顔を両手でやさしく引き寄せた。
ふたりの影が交差すると、ゆっくりと唇が重なった。
触れ合う唇はマシュマロ触感で、とても柔らかく感じた。
ふたりの初めてのKissは、ほのかに赤ワインのほろ苦い味がした。
おたがい生まれて初めての恋人。
家族とはまた違う大切な存在である事を、2人は確かめ合った。
恋の門出を祝うかのように、満月の光が煌々とふたりに降り注いでいた。
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