見出し画像

【保育園経営者に聞く】園選びのポイント&小規模保育・保育所のメリット

復職時期を見据えて「そろそろ保活しなきゃ」と思った矢先、保育園の種類の多さに驚いた人もいるのではないでしょうか。0〜5歳児対象の保育所・0〜2歳児対象の小規模保育など、住んでいる自治体によってさまざまな種類の園が存在します。「園によってどんな違いがあるのかわからない」「子どもにとっていい園ってどういうところ?」と悩む人も少なくないと思います。
 
今回は、神奈川県内で保育所と小規模保育を運営するI先生に、保育園選びのポイントや小規模保育・保育所のメリットを伺いました。

I先生のプロフィール
短大卒業後、国内や北京の幼稚園及び保育園に勤務。「いい保育園をつくりたい」と31歳で一念発起し保育所を設立。現在は小規模保育4園・保育所1園を運営。グループ代表として全施設の統括と保育士の育成を担当。子育てに関する講演や執筆活動も精力的に行っている。

保育園は「アクセスのよさ」が最優先

——保育園を選ぶ上で、最も重視した方がいい条件は何だと思われますか。

最優先すべきは「アクセスのよさ」です。これを聞いて「保育の質が一番大事なんじゃないの?」と思われた方もいると思います。愛する我が子のためにも、「いい保育園を選びたい」と思うのは当然ですよね。
 
でも雨の日も・台風の日も・大雪の日も、保育園にはほぼ毎日通います。アクセスが悪くて通いづらいと、保護者も子どもも通園が辛くなるでしょう。そのため、アクセスのよさを第一に検討した方がよいと思います。
 
——各自治体では入園前の見学を推奨していますが、見学の際に確認した方がよいポイントはありますか?

「直感・玄関・時間」の3つをチェックすることをおすすめします。私はこれらをまとめて「3カン」と呼んでいます。

園見学のポイント①「直感」

——「直感」は具体的に何をチェックしたらよいでしょうか。

園に足を踏み入れたときに直感した、第一印象を忘れないでください。理由は説明できなくても、「なんか嫌だな」と思ったらやめた方がいいでしょう。印象のよくない園に入園すると、付き添う保護者が毎回嫌な気持ちになってしまいますからね。逆に「なんかいいな」と思う園は、前向きに検討することをおすすめします。

園見学のポイント②「玄関」

——次に「玄関」は何をチェックしたらよいでしょうか。

玄関を入ってすぐのところに壁がなく、その場から保育室が見える園がおすすめです。防犯上の理由から壁を作りつけている園もあると思いますが、ない方が保護者と子ども両方の不安を解消できるからです。

——壁があると保護者と子どもはどんな不安を感じるのでしょうか?

保護者は中の様子が見えにくいと、「不適切な保育がされていてもわからない」と不安を感じる場合があります。子どもは壁の向こう側が見えないので、「何があるのかわからない」と不安を覚えます。
 
壁がないことで保護者は安心して子どもを預けられますし、子どもは周囲を見渡せることで「この場所は安心だ」と感じ、行動し始めることができます。防犯上の壁は園や家庭によって考えが異なると思いますが、参考にしていただけるといいですね。

園見学のポイント③「時間」

——最後の「時間」は何をチェックしたらよいでしょうか。

最長で何時まで保育を提供している園なのか確認してください。21時や22時など長時間預かってくれる園がありますが、その場合は少し注意が必要だと思います。
 
一概には言えませんが、保育時間が長時間に及ぶと、その分保育士に負担がかかってしまう場合があります。その結果保育士が疲弊し、質の高い保育を提供できなくなる可能性もあるのです。長時間預かってくれる園の場合は、保育士の勤務体制も確認できたら安心ですね。

小規模保育のメリット「第二の我が家で自信が芽生える」

——保育所と小規模保育のどちらも運営されていますが、0〜2歳の子どもを預けるとしたらどちらがおすすめですか?

私は断然小規模保育がおすすめです!小規模保育は、0〜2歳児が成長するのに最適な環境だと感じています。
 
——最適な環境とは?

小規模保育には「第二の我が家」のようなアットホーム感があります。保育所より子どもの人数が少なく、保育室も限られたスペースなので、子どもと保育士の距離が近いんです。コロナ禍では距離が近いことをネガティブに捉える人もいるかもしれませんが、距離が近いと自ずと心の距離も近づくんですよね。同様に保護者と保育士、保護者同士の心の距離も近いように思います。
 
——保育室の広さが限られていることは、裏を返せばメリットに繋がっているんですね。

そうなんです。保育所だと年齢ごとに保育室を分けている園が多いと思いますが、小規模保育はスペースの関係上、子ども全員が同じ室内で過ごす園もあります。すると、赤ちゃんは大きい子を見て、その行動を真似しながら育ちます。意欲を刺激されるようで、ハイハイでトイレに行こうとする子もいるんですよ。
 
反対に、大きい子は保育士がお世話する様子を見て、赤ちゃんを撫でるなど可愛がるようになります。これは家庭に兄弟・姉妹がいるような感覚に近いですよね。小規模保育は、家庭に近い形で自然に成長していくことができる環境だと感じています。
 
——小規模保育は、卒園後に別の保育所や幼稚園の入園手続きをしなければなりません。「就学前まで通える保育所を利用したい」と思う保護者には敬遠されがちだと思うのですが...。

確かに「卒園後にまた保活をしなきゃいけないのか」と、小規模保育の利用を迷う声を耳にすることがあります。でも、小規模保育は「子どもに自信が芽生える」というメリットもあるんですよ。
 
小規模保育では2歳児が一番上のお兄さん・お姉さんになり、園のリーダーになります。すると子どもにもその自覚や自信が芽生えるようで、しっかりした立ち振る舞いに変わってくるんです。保育所にいる2歳児は3〜5歳児に「ちっちゃい子」としてお世話されるせいか、比べてみるとその様子の違いは大きく感じられます。
 
——2歳で自信が芽生えるなんて素晴らしいですね!ただ、卒園後の環境変化を心配する保護者もいると思います。ご自身が運営されている保育所では小規模保育の卒園児を受け入れていらっしゃいますが、転園したお子さんの様子はいかがですか?

新しい園に慣れるまでは、登園のときに泣く子どももいます。でも子どもは既に園がどんなところかを理解していて、生活リズムも身についています。子どもは大人が思うよりも早く柔軟に対応していますし、園生活にも早めに馴染んでいますよ。

保育所のメリット「異年齢交流でお互いが育つ」

——もう一方の保育所にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

0〜5歳児までが在園しているので、小規模保育よりもさらに幅広い異年齢交流ができることですね。 異年齢交流は子ども同士が関わり合っていく中で、お互いに育つことができる素晴らしい時間なんです。私の園では4歳児が2歳児と手を繋いで公園に行ったり、5歳児に1〜2歳児の寝かしつけのお手伝いをお願いをすることもあります。とはいえコロナ禍なので、状況に合わせて実施するかどうか慎重に判断しています。
 
——「お互いに育つ」というのはどういったことなのでしょうか?エピソードがあれば教えていただけますか?

たとえば、お祭りの行事のときに、5歳児に1歳児のお世話をお願いしたことがあります。5歳児はお店屋さん、1歳児はお客さんという設定です。いざ始まると、5歳児は普段よりちょっと大人びた様子で、一生懸命1歳児のお世話をしてくれました。ゲーム遊びを手伝ってあげたり、品物を袋に入れる手伝いをしてあげたり。普段の様子を知る担任もびっくりしていたくらいです。
 
一方で、1歳児はじーっと5歳児のすることを見ているんです。正直、小さい子はその場ではどう育ったのか見えにくいです。でも大きくなったときに、小さい子に同じように優しく接してあげる姿をこれまで何度も目にしたことがあります。そうやって子どもから子どもへ愛情が繋がり育っていくということを、異年齢交流を通して教えてもらっています。
 
——小規模保育・保育所はそれぞれに異なるメリットがあることがよくわかりました。I先生、詳しいお話をどうもありがとうございました!

編集後記

私は4年前に初めての保活を経験しましたが、始めた当初はわからないことだらけでした。「子どもを大切にしてくれる園を選びたい」と10か所以上の園を見学し、夫婦で比較検討した思い出があります。
 
今回伺ったプロの着眼点・実体験が、保育園選びの一助となれば幸いです。愛情深い素敵な保育園との出会いがありますように。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?