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【エッセイ】エンパス!現実主義の母と私と幽霊と 13.釣った魚にエサはやらない旦那様

 ここまで、自身の人生を整理しながら書いてみて、私はけっこう見えざる存在、守護霊様などに助けられていたのだなと、今になってだが改めてそれに気付かされた。

 思い返せばいつだって守護霊様は何かを知らせるシグナルみたいなものを送ってくれたりしていたのだ。それなのに私の方がそれを無視したりして……。
 どれだけ危険や忠告のシグナルを送ってくれたとしてもこちらが聞く耳を持たなかったり、目が曇っていれば結局何も伝わらない。みすみす自ら茨の道へ身を投じる事になる。

 それは人生の一大イベント、結婚に関してもそうだった。


 物心ついた時から否定されてばかりで、自分に自信がなく、自尊心が低かった私は、ちょっとでも優しくされるとその人が “いい人” だと思ってしまい、すぐに好きにもなってしまった。

 相手ばかりを優先し、自分を犠牲にする事もしばしば……。流石に犯罪者級の悪人に引っかかる事はなかったが、それでもあまり恋愛運は良くなかったように思う。

 結婚した人は優しく思いやりがあり、10才以上年が離れていたせいか大人の余裕というか、とにかく素晴らしい人だと思った……結婚前は。
 自分より私の事を優先してくれるし、甘えさせてくれるし、ちゃんと話を聞いてくれる。そんな人は今までいなかったので、本当にこの人しかいないと思ったし、世界で一番の味方が出来たとそれはそれは絶大な信頼を寄せていた……結婚前は。

 少々トゲを含んでしまった。

 結婚前、あんなに素晴らしいと思っていた元旦那は、結婚した途端に豹変し、釣った魚にエサをやらない人になってしまった。


 例えばどういう事か――。

 元旦那は母と同じで外面ばかりが良い人だった。他人には人格者だが、身内には身勝手を通す二面性があったのだ。本当に友人や知人には素晴らしい人格者で通っていたので、誰もこんな側面があるだなんて疑いもしなかっただろう。

 私だって微塵も疑わなかった。だが、突きつけられた現実は理想の結婚生活とは程遠いものだった。

 結婚した途端、旦那は働かなくなり、軽くではあるがDVと否定の言葉を浴びせる人になってしまった。容姿の否定、作った料理には毎回ダメ出し、ちょっとした事ですぐ叩く、気に入らなければ徹底的に無視をする等……。

 無視は私が学生時代に無視をされて辛かった事を知っていたので、あえてその手段を使う事で私を精神的に追い詰めた。
 その期間は1ヶ月〜2ヶ月がザラで、何で怒っているのかその理由を聞いても答えない。そのくせ何故怒っているのか言い当てて謝罪しなければずっと無視が続くというタチの悪いものだった。

 そして無視と同じくらい辛かったのが、極端にスキンシップを嫌がられた事だった。キスやハグはもちろん、結婚した途端寝室は別になり、ただの一度も一緒に寝た事がない。

 私は結婚したら当然子供が出来るのだろうと思っていた。だが、それは叶う事のない難しい問題となってしまった。
 本当に悩みに悩んで悩み倒した。話し合おうにも話し合えない、まともに取り合ってくれなくて全部私が悪いのだと返される。口を開けばアレがだめ、コレがだめ……。具体的にいくつか挙げると、お腹に肉がついてるのがだめ、虫歯があるのがだめなど。だから子供は作らないと。
 ダイエットして痩せても歯医者に行って虫歯を治しても次のダメ出しが待っている。

 私も私でどんな仕打ちをされても言われるがままそれを受け入れてばかりいた。それはおかしなマインドコントロールがあったから。
 結婚前の『この人は素晴らしい人』という根強い刷り込みがあったので、この人は悪くない、私がダメだから悪いのだと自分を責めてばかりいた。

 本当に思い込みや勝手な刷り込みがあると他の人の意見など全く耳に入らない。

 私は思い上がっていた。自惚れていた。勘違いをしていた。自分は10以上も年下のお嫁さんなのだから、さぞ大事にしてもらえるのだろうと勝手な思い込みをしていたのだ。

 でも現実は違った。そして本当は結婚する前から分かっていたのだ。旦那には別の面がある事を。自分の両親には冷たい態度を取る人だという事を。実際にその現場を目撃していたのにも関わらず、私は見ないふりをした。気付かないふりをした。なかった事にした。
「私に対しては違うはず」「年下の若いお嫁さんだから大丈夫」「周りも旦那さんが羨ましいって言ってるし絶対大事にされるに決まっている」
 浅はかにもそんな幻想に染まっていた私は本当にバカで自業自得。そんな甘い考えでいたから私は戒められたのだ。


 結婚してから4年程で私は鬱病になってしまった。原因は複合的な事が要因だ。まずは仕事で濡れ衣着せられ退職に追い込まれた事。旦那の容姿否定。人格否定。無視。SEXレス。近所の嫌がらせ。騒音。

 私が仕事を辞めて家に閉じ籠るようになると逆に旦那が働き出してくれたのは良かった。日雇いのバイト程度だったが、家でネットばかりしてる姿を見るよりマシだった。
 だけど途端に気が大きくなり、「俺は働いてる!」と言い始めたのがまたも私を追い詰めた。溜息をつき、蔑むような目をして言ってくるから働いていない私は罪悪感でいっぱいになる。
 だから今まで以上に節約を頑張った。二人で月の食費一万円に抑えたり私の私物は一切買わない。働いてない罪悪感があるから私だけ一日一食にしてたら体重があっという間に30キロ代になってしまった。

 罪悪感がありながらもどこかでモヤモヤもしていた。
 逆の立場だった時、私だけが働いていた時はそんなこと言わなかったのに。責めた事はないのにって。

 やがて鬱病は加速して家から一歩も外へ出られなくなった。みんなが私を敵だと思っている。私は世界中から石を投げられる存在なのだとそんな錯覚に陥っていた。
 誰も信じられなくて、全ての友人関係の連絡を絶った。自ら縁を切ってしまった。

 そしてある日、とうとう私は耐え切れず自殺未遂をする事になる。
 きっかけなんていろいろあったが、最後の一押しとなったのは、旦那が私とも共通の知人たちに悪口を言っているのを聞いてしまったからだった。
 電話口で「だからアイツはダメなんだ」と主導権を握るように友人たちと私の悪口で盛り上がっていて、そして自分は「こんな酷い嫁を貰った気の毒な俺」と被害者面をしていたのだ。

 その時の失望感たるや……。
 ここは地獄だとその時思った。私は地獄の真っ只中にいるのだと。
 失望感の他にもその時はいろんな感情が猛烈なまでに膨れ上がった。怒りや悲しみ憎しみ……。
 特に憎しみの感情は酷かった。ストーカー被害の時と同じくらいの怨みの念を旦那に抱いた。その時に愛情という太い綱がブチブチ切れていくのが自分で分かって……。
 そして一先ず感情の波が治った頃、私は自殺未遂をした。

 けれど、その自殺未遂が今後の結婚生活に変化をもたらす事になった。けしてそこから理想の夫婦になったとかでは全くない。けれどお互いの価値観を見つめ直す良い機会にはなったのだと思う。

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