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【本】酒中日記

酒中日記 吉行淳之介・編 中央公論社

本は、気がつくと、何時の間にそこにあったというのが多い。いつ、どうしてそれを買ったのか、どうしても思い出せない、というような。

それはひととひととの出会いにも似ている。

『酒中日記』は題名にひかれたのか、編者にひかれたのか、やはり、どうして手元にあるのかハッキリしない。あるいは「そのどちらとも」が正解だろう。

吉行淳之介は高校時代にいきついた。もっともあの頃は、いわゆる濫読というやつだったが、街の香りのする文章が好きだった。

『原色の街・驟雨』からはじまり『夕暮れまで』、洒脱な筆致の随筆からオトナのオトコというものを感じた、それはまた、池波正太郎などのオトナとも違い、色川武大の優しさとも違う。

本書は『小説現代』にリレー連載された、作家たちの酒にまつわる交友、交流、またはひとりの時間や、仕事に向き合う姿勢などが、日記形式のエッセイで、筆頭が吉行淳之介だ。

32名もいれば!読んでいる作家もあれば、またまた読んでいない作家、読まずギライの作家、好きな作家様々いる。様々いるが、どことなくそのひとの酒と作風は、やはり似た雰囲気を感じる。

「編者あとがき」に「記述からはみ出す気配を感じ取ることはできる筈である。」とあるが、本当にそうだ。

グラスからはみ出す、吐息からはみ出す気配を感じとることも、また、できる筈である。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。