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【日記】1/23 - 1/29

   1月23日 月曜日

   7時起床。入浴。
   連日11時半の浅草演芸ホール楽屋入り。先師である四代目桂三木助二十三回忌追善興行、三日目。早上がりの玉の輔兄に出番を一本譲り、12時15分あがり。ちなみによく勘違いされるのだが、あがりは仕事を終える意味のあがりでなく、高座にあがる、あがり。つまり、何時に高座にあがる──が、あがり。前座、二ツ目とわりと客席が静か。さすがの玉の輔兄が三割ぐらい起こしただろうか、それを見て『看板の一』を。んん、力不足。
   出番を譲ったものの、わたしも飛び出しで田園調布せせらぎ館へ。こちらでも師匠を偲び『崇徳院』を。
   正月最初の会だったので、みんなと飲みたかったが、茅場町・台南茶寮で台湾落語協会新年会。べ瓶をいじって始終笑ってるうちに散会。台湾行きたいね。


   1月24日 火曜日

   7時起床。入浴。
   浅草、四日目『たらちね』。
   こちらも四代目の師匠から習った噺。ウケたところで、そのまま降りられたのに、時間をこぼした挙句のしりつぼみ。
   おりて、駒形を渡って、三ツ目通りを菊川へ。師匠歌司と打ち合わせ。
   師匠と別れ、今度は森下を抜けて新大橋を渡って、東京駅をめざす。途中、人形町で草加屋を思い出し、草加屋で客先や知人にさしあげる手焼煎餅を購入。こちらは三代目三木助の贔屓の店で、「三木助が金庫に隠した」と謳われている。食べたらわかるが、ホンモノの煎餅ってこれだな、と、焼きから生地から醤油からおもう。笹新を曲がり、路地を入って、世界湯と小歌の師匠の長屋があった跡をふらりとして、東京駅へ。
   洗足池笛吹で焼酎4ツ。
   矢口渡に降りると雪がちらつく。


   1月25日 水曜日

   7時起床。入浴。
   最低気温が氷点下3度と予報される朝。
   せめてもの救いが、いつもより1時間45分も遅い13時45分あがり。ネタもいつもとちがう噺ができる。楽屋に入ると、やはり客席はあたたまっている。
   あがりが遅い日が2日あり、この追善興行で機会があればかけたかった四代目の得意ネタ『死ぬなら今』をかけられるとしたらここだな、と。前日、夜席のたけ平が演っていたのも後押しとなった。
   基本のカタチは四代目のカタチで、30年前のクスグリをあたらしく入れ替える。あくまで真似にならないように、でも四代目の匂いは残しつつ。ありがたいことによくウケたが、時間をこぼす。んん、ウケて、こぼすなんて素人じゃないか、と、がっかりしていたら、ぺぺ桜井先生が「おもしろかった!」と。ぺぺ先生にそう言われたら素直に喜ぼう。
   寄席ではじめて演るネタ、まして二度ほどしかかけていないネタだったので緊張したが、四代目の師匠からいい機会をいただいた。
   五代目はお家芸『崇徳院』を。四代目のこの噺は聴いたことがないから、演ってたかな?などとTwitterでつぶやくと、四代目実姉の茂子姉さんから、演ってたと指摘が。
   終演ハネて、志婦゛やのカウンターへ。みそ豆はいつものことながら、貝刺盛、甘海老、牡蠣わさがことによかった。菊正宗の温燗。
 

   1月26日 木曜日

   7時半起床。入浴。
   六日目『加賀の千代』。
  わりと静かなお客さんながら、少し反応はあるため、きっちり演ればきっちり聴いてもらえる、この噺。徐々にハマって、綺麗に受ける。
   高座をおりて、まっすぐ帰ろうと、国際通りを浅草橋方面へ。
   途中、浅草橋駅の手前、鮒佐で佃煮を買う。
   佃煮屋もいろいろとあるが、醤油がキリッと効いている鮒佐がわたしの好み。そして、店に入ると、醤油と折の木の香りがとてもいい。
   そこから、なにを思ったか品川まで歩き通して、この日は30000歩。
   帰宅して味噌ちゃんこをあつらえて、まずは佃煮、べったらで菊正宗。
   味噌ちゃんこは、長葱一本を斜め切り、にんにくとバターで炒めてとろみがでてきたら、味噌、味醂、最後に酒。


   1月27日 金曜日

   7時起床。入浴。
   七日目『加賀の千代』。
   前座、二ツ目と始終静かな客席。よし、おじさんがなんとかしてこよう、と、前日と同じパターンで『加賀の千代』に入るも、まったく持ち上がらない。ダメなときはダメ。
   御徒町まで歩き、高取焼の鬼丸雪山でスープや汁物の器をさがす。結局、一番おおきいものを買ってしまう。まぁ、前後がなくって、下しかないんだったら、つぎの選択肢はかなり狭まるから、よし。
   東京駅アルプスで350円のコロッケカレーを食べる。ここのカレーは、なんか、好き。その「なんか」がとても大切な気がする。
   洗足池笛吹で焼酎5ツ。前日イゴーさんが、正楽師匠に切ってもらったという『芝浜』を額装したお礼に、たこ焼3コ。
 

  1月28日 土曜日

   6時半起床。入浴。
   八日目『看板の一』。
   前方の二ツ目は連日の代演で、台湾落語協会の会友、柳家小もん。演りたかった『湯屋番』を、客席がまだあたたまってないところで、無理矢理演るか──と、腹をきめてあがったものの、すっと『看板の一カンピン』に入っていた。確かに『湯屋番』のお客さんではなかったが、四代目の悪戯か、導きか。
   高座を降りて、一月中に行っておきたかった石川台・風の食堂へ。開店の14時に、するりと。仕事あがりの、大瓶。
   ひさしぶりだったので、定番の鯵フライを。いやいや、大きければいいというわけではないけれど、ここでいただいた鯵フライのなかでも、かなりの大ぶり。茎ブロッコリースティックセニョールやうのはなもよく、酒は石川の遊穂 おりがらみがよかった。
   まだ時間も早かったので、池上本門寺参道入り口に、できたばかりの羽田スカイブルーイング系の新店RE.Beerへ。和食とクラフトビールということで、鰆のフライの鰆も長葱もとてもよかった。駅からすぐ、長栄ベーカリーだったところ。


   1月29日 日曜日

   7時起床。入浴。
   五日目から自宅蒲田、上野浅草は徒歩。それぞれ20分。噺をさらったり、考えをまとめるのにちょうどいい。
   前座の高座を聴いていると、まったく反応がない。そんなことは仕方がない。拙い──なんての、いつかどうにかなる。声が小さい、元気がない。わたしの弟子でもなければ、わたしが教えた噺でもないので、細かい箇所ところを直したりはしないが、もっと元気よくやれよ、と。
   前座のあとに上がった二ツ目のけい木が、その分明るく、わかりやすく、おまけに寄席の踊りかっぽれで客席を起こす。勢いがあって、きらびやかで、二ツ目のお手本のよう。若さはそれだけで才能だ。
   その勢いを借りて『湯屋番』へ。この噺は、四代目直伝であり、四代目讃歌だ。時間上前半はすっぱりカットしての口演だったが、ひとつひとつ徐々にハマっていく。ウケもよかったので、どうしようかな、と思ったが、もうそんなウケさせ方をしなくてもいいだろう、と、封印していた、番台から落ちるところで高座から転がる演出。これも、四代目が演っていたカタチ。喋りながら、一瞬で、よし、ひとつ演っておこうか、と。
   これで、この追善興行でかけようと思っていた噺は全て高座でかけた。感謝しかない。

書くことは、落語を演るのと同じように好きです。 高座ではおなししないようなおはなしを、したいとおもいます。もし、よろしければ、よろしくお願いします。 2000円以上サポートいただいた方には、ささやかながら、手ぬぐいをお礼にお送りいたします。ご住所を教えていただければと思います。