足のアーチどこまで理解してますか?
こんにちは
今回は足について深堀したいと思います。
最近はインソールや機能性ソックス、スニーカーも高機能なものが沢山出ています。
その中で足のアーチについてフォーカスしている企業さんが多いなぁという印象です。
でも、足のアーチってどうだったらいいのか?
という基準には正直答えられていないなぁと思います。
高いとどうなのか?低いとどうなんだ?
いいとか悪いとかじゃなく、どう使うかなのか?
ちょっと分からないので調べてみようと思います。
まずは足の構造から考えていきましょう。
足のアーチの解剖学(骨、関節)
人間の足の特徴と言えば
・踵がある
・土踏まずがある
この2点はとても重要な要素です。
踵がある生物は人類と熊しかいませんし、土踏まずはヒト特有の足の構造です。
これらは直立二足歩行を可能にして、遠くへ歩いたり走ったりして移動することを可能にしました。
人類はこの遠くまで移動できる足を使って地球上のあらゆる場所へと活動の場を広げることができたのです。
足の骨
距骨、踵骨、舟状骨、立方骨、内中外楔状骨、第1~5中足骨、第1~5基節骨、第1~5末節骨、第2~5中節骨
26もの骨から成ります。(種子骨を含めると28)
後足部・・・距骨、舟状骨(橙)
中足部・・・立方骨、内中外楔状骨(桃)
前足部・・・第1~5中足骨、基節骨、末節骨、第2~5中節骨(緑)
後足部は下腿を支持し、踵からの力を体幹方向に伝える役割があるようです。
中足部は足の甲をつくる骨です。
足の甲は
舟状骨と3つの楔状骨群が第1~3趾で足の上部
立方骨が第4~5趾で足の下部
このような段差のある構造になることで近位では高さを作り、遠位では扇状に広がることで縦足弓(縦アーチ)と横足弓(横アーチ)を形成します。
中足部にはショパール関節とリスフラン関節があり
ショパール関節は距舟関節と踵立方関節から成り、縦軸は距骨下関節とほぼ同じ運動軸であり、斜軸は距腿関節と運動軸がほぼ同じであるため、距骨の動きと関係があると考えられます。
リスフラン関節は足根中足関節とも呼ばれ、足根骨である3つの楔状骨と舟状骨から成ります。
第1中足骨は内反しながら背屈し、外反しながら底屈します。
第2中足骨は中間楔状骨が外側、内側楔状骨よりも凹んでいるため、可動域が小さく安定力があります。よってここから踵骨外縁にのびる線が足の長軸となります。
第2リスフラン関節の靭帯は第1リスフラン関節よりも強固で安定感があります。第1リスフラン靭帯は不安定な構造ですが、そのおかげで大きな可動域を保つことができます。
第4~5中足骨は外転、内転と底背屈が僅かながらできます。
足のアーチを考察するには中足部の力学構造とショパール、リスフラン関節のアライメントと運動軸は注目すべきです。
前足部は中足骨からつま先に至る部分で、中足趾節間関節(MTP関節)でつま先立ちした際に曲がります。
ヒールの高い靴やつま先が合わない靴を履くと、この部分が曲がり足趾が地面に着きにくい形状になることがあります。
つま先が曲がってしまうと足趾の踏み込みがしにくくなるため、巻き爪や外反母趾の原因にもなると言われています。
足のアーチ機能
前足部、中足部、後足部それぞれの役割がわかったところで、足部全体として見た時のはたらきを見ていきましょう。
足の3つのアーチ(内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチ)の相関を調べてみると
踵の傾斜角と第1~5中足骨の角度に相関が見られ、内側アーチの乱れは外側アーチ、横アーチにも同様の結果をもたらす可能性があるようです。
足のアーチの評価には踵骨の角度は重要だということですね。
機能的な視点から見ていくと
足のアーチはトラス機構と言って、天井部分と底辺部分を三角形に支える構造体になっていることで足の甲の弾力性が足部構造を破綻させない形状になっています。
足の底辺には足底腱膜があります。これは伸張性が低い組織のために上からの圧力でアーチを下げることで、足部の骨が広がり衝撃を吸収します。
トラス機構は静的な状態で発揮します。
もうひとつ足にはウィンドラス機構というものがあります。
これは巻きあげ現象とも呼ばれ、足趾が背屈した時に足底腱膜が引っ張られると、足底腱膜は伸びないため、踵骨と足趾が近づき、アーチが上方へ引き上げられます。
ウィンドラス機構の役割は足部の安定と衝撃吸収です。骨が寄せ集まることで足の剛性が高まります。それと同時に足底腱膜のクッション機能が高まることで衝撃を吸収します。
ウィンドラス機構は歩行時などに足のアーチの高さを維持し、着地の衝撃を和らげることができるのです。
足部の靭帯と足底腱膜が足のアーチを維持しながら、歩行時には地面を蹴りだせる役割をし、その支持力によって力を伝え(床反力)ることで推進力になるのです。
このように前足部~後足部にかけた構造を足底腱膜や靭帯によって支持し、過重にたいする形状の変化を足底部の固有受容器によって検知します。
足の筋(内在筋)
足部を足底から見たところ
通常足底アーチは筋の補助なく、その構造を支持できます。
深部の母趾内転筋斜頭、母趾内転筋横頭、長腓骨筋腱、後脛骨筋腱は、平坦ではない地面や足にかかる過重の増加に対する横足弓の変化に対応しています。
横足弓の崩壊は第2~4中足趾足節関節に大きな応力がはたらき、そのため母趾球と小趾球間にタコ(胼胝)ができるようになります。
皮膚のケアの前に横足弓、母趾内転筋の促通不良や緊張を精査することも必要です。
外側縦アーチの頂点は立方骨です。
立方骨は6面体構造の骨で可動性は少ない骨です。
前方 第4~5中足骨
内方 舟状骨・外側楔状骨
後方 踵骨
これらと接します。
立方骨には短母趾屈筋(底側踵骨立方靭帯に起始)、母趾内転筋、短小趾屈筋(長足底靭帯に起始)が起始を持ちます。
内側縦アーチは地面に接していないため、外側縦アーチの地面との対応力が内側縦アーチを維持に影響します。
外側縦アーチの低下 立方骨回内・外転・下制
それに伴い
内側縦アーチの低下 距骨下関節の 踵骨の回内・舟状骨の下制
外側縦アーチの挙上 立方骨回外・内転・挙上
それに伴い
内側縦アーチの挙上 距骨下関節の 踵骨の回外・舟状骨の挙上
縦足弓の安定化構造は足底腱膜、底側踵舟靭帯です。
足底腱膜はアーチを保つための拘束力になります。アーチがより平坦になるほど拘束力は必要になるため、短足筋群、足底腱膜などの収縮性や筋力を評価する必要があります。
足の内在筋の評価
内在筋・・・PIP、 MP関節を動かす筋
外在筋・・・DIP関節を動かす筋
内在筋は片脚立脚時に活動が増加する。
このような特徴を覚えておくと評価、介入の目安になります。
足底アーチを掘り下げてみて
今まで足のアーチに注目していたのは、姿勢や重心の移動で足に不安定さを感じる患者に対し、足の運びの悪さが腰痛や膝痛に関連しているのではないか?という推測があったためです。
しかし、今回は解剖学を中心に考え直してみると、腰痛や膝痛患者が足に不安定さを抱えるのは、その痛みと関連性があるわけではないが、足のアーチは動作時のショックを吸収してくれるため、腰痛や膝痛の人にとっては歩行時や走行時にかかる負荷の吸収に必要な構造であるとも理解しました。
土踏まずがあるとジャンプした時に股関節が曲がることでショックを吸収しているという実験のデータもあり、足の形状が股関節の動きとも関連しているなどは面白い情報ですし、膝や腰の痛みがある患者に足部のトレーニングを指導する意味もあるかもしれません。
ここで理解できたのは足のアーチは歩く、走るといった活動にはとても重要で、足の甲を固めたり、弾力性を発揮したりすること(ほぼ不随意)ができるというのは運動能力を高めることにつながるということが一番です。
インソールなどの道具は、足底にほどよく刺激を与えることで内在筋を刺激します。ソックスはむしろ外在筋にはたらくイメージがしました。
足部の筋や姿勢の反射に関する足の感覚については、足の皮膚感覚と反射について理解する必要があることも分かりましたので、このことはまた改めて考察したいと思います。
まずは足の構造的な部分を少し細かく見ていきました。
臨床時に何かのお役に立てたらと思います。
参考文献
Folia Morphol (Warsz). 2017;76(4):682-688. doi: 10.5603/FM.a2017.0049. Epub 2017 May 29
Ital J Anat Embryol. Apr-Jun 2001;106(2):85-98.
Clin Biomech (Bristol, Avon). 2015 Jun;30(5):431- 7.doi:10.1016/j.clinbiomech.2015.03.014. Epub 2015 Mar 18.
Ther Umsch. 2004 Jul;61(7):407-12. doi: 10.1024/0040-5930.61.7.407.
J Foot Ankle Res. 2020 Jul 16;13(1):46. doi: 10.1186/s13047-020-00412-0.
・MCkeon,PO,et al:the foot core system:a new parading for understanding intrinsic foot muscle function. Br J Sports Med49:290:2015
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?