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夜の太陽 昼間の月(6)

「久しぶりやね。そっちの暮らしはどうなん?」

「ごきげんやで。きれいなおねえちゃんが仰山おってな。言うことなしや」
「相変わらずやなあ」
「すまんな」
「それにしても似合わへんな。その衣装。なんやそれ」
「これか?」
「うん。聖歌隊にでも入ったんか?」
「あほぬかせ。これがこっちの制服なんや」
「そやかて、ベレー帽に白いローブ。ありえへん」
「まあ、そう言うな」
「おまけに大きな羽を背負ってから。天使なんか?」
「まあな。まさか土建屋のオヤジが天使になるとは思わへんかったわ」
「ほんまやな。天使やで・・・えらいこっちゃ。たまげた」
「そやな。それでお前、どないや。元気にやとるんか?」
「うん、どうにか。仕事もなんとかやっている」
「そうか。お前なら大丈夫や」
「うん」
「ママとパパの子やからな。心配ない。自信持ってやっていけ」
「うん、そうする」
「風邪引くな。お前はすぐ風邪ひくからな。襟巻きしとかんかい」
「あ、はい」
「ママももうじきこっちに来るんやな」
「うん。もう歩かれへんねん」
「そうか。ママのこと、安祥頼むで」
「うん。最後までちゃんと見る」
「おお。頼んだで」
「うん、大丈夫や」
「ほな、そろそろ行くわな」
「え?もう行くん?」
「ああ、もう行かなあかん」
「今度いつ会える?」
「多分、今度のお盆のころやろな」
「ほんまに?」
「ああ。ほな、行くで。ええか?ええな」
「うん」
「あ、待って」
「なんや?」
「あのな、ありがとう」
「あほ。なにを改まってんねん」
「感謝してるで、パパ」
「しかしなあ、土建屋のオヤジにパパ・・・まあ、それもええな。ほなな」
「うん」

「安祥やるんやで。ええか?ええな」


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