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映画「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」

予告編に惹かれて観に行った映画「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」
若干タイトルが長い感じだけれど、原作の小説に則ったタイトル
そして予告編通り良い映画だった
余命幾ばくもない元同僚女性からの手紙
返事を出そうとしたところで、あれこれと思いが巡り、牛乳を買った店の女店員の言葉に背中を押されるようにそのまま800キロ徒歩の旅
最初は昔の彼女だったんだろうか?
と思って観ていたけれど、そんな単純な話ではない
どこの国でもそうだけれど、街の風景よりも、街から街へと行く途中の風景こそがその国らしさを表してる
この映画も徒歩でなければ味わえないような広大なイギリスの美しい風景が続いているロードムービー


しかし何しろ何の準備もないまま、定年退職後の老人が普段着で牛乳ひとパック持ちながら歩き始めるのだからかなり無茶
足は痛めるし風雨に晒されるし、それでもある言葉を呟きながら歩いているそれだけで観ているこちらは涙ぐんでしまう
そして当然だけれど、静かな二人暮らしだった妻の方は、ポストに投函してくるといって家を出たまま夫が戻らないのだから、平静でいられる訳もない
多分いつもは夫が出していたのであろうゴミ箱(これが人が入りそうな巨大なゴミ箱で驚く)を妻が出し、隣人から不審がられても夫の不在を隠す
その妻も、過去のあれやこれやが頭の中を巡り、いたたまれなくなって隣人に気持ちを打ち明け寄り添ってもらう
途中、夫の無茶な旅がニュースになり一躍有名人に
賛同した人々がぞろぞろと同行し、賑やかにはなるというアクシデント(?)もあるけれど、なんとか歩き切った夫は、元同僚の待つホスピスへ
このくだりも、こちらを泣かせようとするのではなく、淡々としているところが個人的にはかなり良かった
人生の最期に、自分に会うために苦難の旅をしてくれてる人がいる
たとえ残り少ない日々であっても、それがどんなに心に響くか
派手な映画ではないけれど、何かに迷い、あとちょっと背中を押して欲しい人に届くようなよい映画だった



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