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映画『ゴーストワールド』の感想:20年後も変わらず存在するジレンマ
SNSで見かけて気になっていた『ゴーストワールド』を見てきました。
あらすじ
2001年に公開され、今回リバイバル上映されていたこの作品はダニエル・クロウズのコミックが原作で、映画はアカデミー賞の脚色賞にノミネートされるなど高く評価され若者を中心に大ヒットしました。
時代は90年代のアメリカ郊外で高校を卒業したばかりのティーンの物語。
高校時代はみ出し者同士で大親友だったイーニドとレベッカは、卒業したら一緒に住む計画も立てていたほどの仲。そして卒業後、大人の世界に足を踏み入れたばかりの2人は自分の居場所を見つけようと葛藤する。しかし社会に順応しようとカフェで働き始めるレベッカに対して、イーニドは変わらず反骨精神丸出しで映画館で仕事を始めても上手くいかず、新聞の出会い系広告がきっかけで出会った中年男性のシーモアと奇妙な友情関係を築いていく。次第に価値観がすれ違い始めて距離が空いてしまう2人を追っていくストーリー。
印象的だったセリフ3選
1つ目
Seymour : I can’t relate to 99% of humanity.
Enid : I cant relate to humanity either, but I don’t think it’s completely hopeless.
シーモア : 僕は99%の人類には共感できないんだ。
イーニド : 私も共感できないけど、完全に希望がないとは思ってないかな。
2つ目
Seymour : People still hate each other… but they just know how to hide it better.
シーモア : 人々は今も互いに憎みあっているよ… ただ彼らはうまく隠す方法を学んだだけさ。
3つ目
Enid : I used to think about one day, just silently leaving without telling anyone, and going off to some random place. And I just... disappear, and they’d never see me again.
イーニド : いつか誰にも告げずにそっと立ち去って、行き当たりばったりでどこかに行きたいと思ったことがある。それでただ...消えて、二度と誰かが私を見ることはないんだ。
感想
感じたことのある数々の葛藤に感情移入して、とにかく終始むず痒かったです。私自身は社会と折り合いをつけようとするレベッカよりの人間だと思っていたけど、こじらせているイーニドとシーモアに共感した部分があまりにも多い。
イーニドと私の共通点はなんだろう?と考えていたのですが、まさにその答えに繋がる、テリー・ツワイゴフ監督がイーニドを分析している記事を見つけました。
「私にとって、イーニドはジレンマを抱えていると思います。文化の中で本物の何かを見つけてつながろうしている、そこに私は共感しました。だから彼女は、時に古いガレージセールに行って、過去のもの、例えば古い音楽を探して聴いたりする。少し表面の下を探っているのです。というのも、表面では消費文化が栄えていたので、それをもう少し深掘りして、自分がつながれるものを探していたんだと思う。
当時のアメリカでは、ポップカルチャーが文化を売り込もうとしていた。それはイーニドがあまり好まないものであり、私自身の問題意識でもあったのですが、文化はもはや伝統から生まれるものではなく、物を売るために企業が作り上げたものだった。それがあの時代の世界を作り出しているので、彼女のような若者は、何が本当なのか、何が自分に訴えかけるのかを見つけるのが大変で、ジレンマを感じるようになってしまう。だから彼女はシーモアに惹かれるのです」
全く同じというわけではないけれども、20年以上前に公開された映画にも関わらず、現代でも共感できる普遍的な葛藤や生きづらさがあることをどう受けとめるべきなのか、考えさせられます。
テリー・ツワイゴフ監督のインタビューではコミックでは映画の解釈や脇役だったシーモアを劇中で中心人物に追加した理由について語られていて、とても面白かったです。気になる方はぜひ。
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