短編小説Vol.26「こんな世の中でこそ、反戦を謳わない」
去年の苦い思い出を掻き立てるように蝉が騒ぎ始めた頃、1年前と変わったことは、俺たちの聖域を我が物顔で畜生が闊歩し始めたことと、他人の価値基準でしか生きられないと証明された大人が跋扈し始めたくらいであった。
去年の悪夢の真夏に、典彦の中にいた神は観念的に殺された。
神は国民を熱狂させ、一人一人に生を強烈に印象付ける大変ありがたい存在であった。
それがたったの1日で変質し、神は存在しないのだと人々はどこには存在しない誰かに迎合し始めた。
「私たちが行ってきたことは間違いだった」「