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食本Vol.13『全国もなかぼん』オガワカオリ

☆日本中のもなか250点が集結したもなかだらけの本
たまにはティーブレイク的な食本を取り上げてみようかと本棚から引っ張り出してみました。
と言っても、私自身、もなかが大好物、というわけではなかったのです。
いや、むしろ、子どもの頃はもなかをおやつにいただいてもちょっと苦手。
もしかしたら「あるある」ネタかもしれませんが、パクっと口に入れた途端に上あごにへばりつくあの何とも言えない感触...
やっぱりこどもにはもなかの奥深い味わいはわからなかったのだな~と子供の頃の記憶をうっすら思い出しています。
でも、小旅行に出たある日、とあるもなかに出会って、その形や味わい、細部のこだわり、などにちょっとした驚きがあって、「むむむっ!もしかしてもなかっておもしろい”もんなんか”~?」(すみません、ちょっとしたダジャレ含む)ともなかをもっと知りたくなりました。
その時に出会った本がこの「全国もなかぼん」でした。

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当然ですが、もなかだらけの表紙です

☆もなかにハマった著者と編集者の汗と涙の全国もなか行脚

本書は日本を代表するお菓子の一つである「もなか」を楽しむ本です。
一冊に全国津々浦々のもなか250点の名前、形、大きさ、特徴、ストーリー、ご店主のこだわり、店名がイラストっぽくまとめられています。
本としてぱらぱらぱら~っとめくってしまうと「ふう~ん。もなかがいっぱいあるね~」ぐらいで終わってしまうかもしれません。

でも、最初にぱらぱらぱら~っとめくって、いっぱいのもなかを見た後にふと思い浮かべたのです。
「よくこれだけのもなかを集めたよなぁ~。北海道から九州まで(沖縄もなかは探索中らしいです)どうやって集めたのかな。取材交渉も大変だったろうなぁ~」ということ。
本づくりに何度か参加したことがあり、一冊の本が企画から取材、制作編集、出版、書店に並ぶまで......の大変さを近くで見たことがあるので(ちょっとだけ、ですが)ついつい裏方のことを思ってしまうんです。
特にこういった「収集本」(というのかな?)はある程度数がないと形にならないし、ただただ画像撮って載せればいいわけでなく取材や編集も大変。そんなご苦労については本書内コラム「もなかぼん」ができるまで、で紹介されています。こういう舞台裏のことっておもしろいです。
それにしても、これだけのもなか、全部食べたんだろうな~。。。と思うとちょっと口の中が甘々になってきます。

☆もなか目線で見る「ご当地」の魅力
本書は全国のもなかをいくつかのカテゴリーに分けています。
大きく分けると
①生き物 ②食べ物・飲み物 ③自然/植物/山 ④工業系/乗り物 
⑤建築物/城  ⑥スポーツ/ホビー ⑦神仏・縁起物 ⑧その他・お顔

など。

もなかというとなんとなく菊の御紋的な丸い形や小判型のようなものを思い浮かべてしまうのですが、こんなにバラエティに富んだ形があるんですね。
また、紹介されている地方のもなかを見るとその土地土地の特産品だったり、産業だったり、その地域を象徴する由緒あるお城だったり。
もなかでお国自慢大会ができそう。
さらに、もなかを作っておられる菓子店のご店主の思い入れなんかも感じられるもなかも多々あって、もなか一つからでもその地域の魅力が伝わってきそうな気がします。

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城マニアにとってもお城もなかははずせない⁉

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めがねといえば鯖江

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餃子といえば宇都宮

☆そもそももなかって何ものなの?
本書はただのもなかを紹介しているだけでなく、もなかのキモである皮とあんこについてもきちんと紹介しています。特にもなかの皮については製造工場まで行って見学~取材されています。
私の中でもずっともなかの皮って謎だったのですが、原材料は餅なんですね。しかももなかの皮というのは「もなか種」工場っていう専門工場があるのですね。
さらに、もなかは海外にも酷似した菓子がありまして。
それはポルトガルのオヴォシュ・モーレシュ。

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ポルトガルのもなかオヴォシュ・モーレシュ。中身はあんこではなく、黄身とお砂糖で作られた甘~いクリーム

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これはニッポン鹿児島のまぐろもなか

ポルトガルからは色々なお菓子が日本に伝わってますね。
もなかもそうだったのか~とあらためて感心しております。
本書には詳しくは書かれていませんが、今後、もなか起点で歴史や海外との交流なんてことを紐解いていくのも面白いかもしれませんね。

☆今回の”旅”で教わった「食」「食べる」こととは........
もなかという一つの小さな菓子をいつもよりもちょっとだけ時間をかけて、目線を変えて、深掘りしてみたりすることで「食べる」ということが旅になったり、歴史探索になったり、と様々に楽しむことができるのだな~と思います。
お菓子人気ランキング、とかお菓子知名度ランキング、とか仮にランキングしていまうともなかというお菓子はちょっとマイナー感がある存在かもしれません。(著者のオガワカオリさんごめんなさい)
でも、このマイナー感のあるもなかをこれだけ魅力的に見せてくれた本書「全国もなかぼん」に私は感謝したいぐらいです。
今回のもなかの”旅”を通して、教えてもらった「食べる」こととは、小さなもなかにも歴史あり、自分が何気なく食べているもののルーツを旅してみると思わぬ発見がある、ということでした。

☆今回の食本
『全国もなかぼん』オガワカオリ著(株式会社書肆侃侃房)

☆本日のおまけ~もなかに開眼したご当地もなか

富津バカ最中

房総を旅した時に寄った千葉県富津市の東京湾フェリー金谷港にあるみやげもの屋さんで偶然見つけたもなかです。
名前はバカ最中。バカはバカガイのバカ。バカガイは別名アオヤギです。
バカガイは富津の海でたくさん獲れていたそうです。
ぺろっと出ている入(出)水管もちゃんと再現。実はこの部分はオレンジ色の求肥。見かけほど甘さがきつくない固めの餡がぎっしり詰められていてずっしりとしています。
形を見た瞬間に「こんなきれいな模倣型のもなかがあるんだ!」と驚いたのと、味が美味しかったことで私自身もなかに対する認識がすっかり変わってしまいました。これがきっかけで「もなかってちょっとおもしろいかも~」と思っていたところで、偶然本屋さんで『全国もなかぼん』に出会ったわけです。私ももなかマジックをかけられてしまったのかもしれません。





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