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コインランドリー

ここ数日ずっと雨。
半乾きのタオルやカットソーからお馴染みの匂いがしてる。
「空気が乾燥しているから、部屋に濡れたものを置いておくと加湿器がわりにもなって一石二鳥」とアナウンサーは言う。
「部屋干しでは菌が増殖するのでご注意」ママタレントがいう。
窓という窓、ハンガーの掛けられる場所はもう埋まっていて、あと数分であ「新人洗濯物」もできあがる。
私はため息をつき、部屋の湿度を少しあげ、心の菌を増殖させながらIKEAの袋に半乾きの服を詰める。
しばらくして、洗い終わったばかりのもう一山を別の袋にいれコインランドリーを目指す。

小雨模様の朝7時。
今からなら出社時間にも間に合うだろう。

車で五分のコインランドリー。
中に入ると昨日の洗濯物が外のカゴでしおれている。
洗われて、びしょ濡れで、でもそのあとホカホカに乾かされて。
ここまでは絶頂だったろうに、持ち主は現れず、赤の他人に放り出され変なシワが入ったまま放置されてる。

両替機でコインに変え、「昨日のもの」と「今日のもの」をわけて丸い窓に入れる。時間差をつけて。

洗濯物が回り始める。
眺めながらここは別の世界への入り口かも?などと想像してみる。

洗濯物が乾かされている箱と繋がっている場所って何処だろう。
トイレではないと思いたいし、一人カラオケでもないだろう。

きっと練習スタジオのいちばん小さい部屋だ。
個人練習専用のボロいやつ。
マイクは感電するしスピーカーはビビるし、臭いし。
でも、まぎれもなく「世界」だ。
ギターを持ってプラグインして、海を真っ二つに分けるロックンロールをやるんだ。

夜と朝、男と女、北と南、上と下。
あれ?
ロックンロールは分断を産むのか?

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