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熱性けいれんについて(高熱によってけいれんが起きたらどうすればいいの?他)

Take Home message

◻︎落ち着いて発作の長さ、左右対称かなどの観察
◻︎口の中には物をいれない
◻︎5分以上続く時には救急要請を
◻︎通常の熱性痙攣では脳障害を起こすことはない
◻︎熱性痙攣を起こした全員ダイアップの適応というわけではない

1 熱性痙攣とは?

 高熱が出た際、突然白目を向いたり、全身が突っ張ったり、手足がガクンガクンと震えたりする熱性痙攣(けいれん)が起こることがあります。通常38℃以上の発熱に伴って起き、生後6ヶ月〜5歳の乳幼児に起こるとされています。日本は諸外国に比べて発症率が少し高く、約10%前後です。発熱時の痙攣の中から、脳の感染症やてんかんなど、明らかな痙攣を引き起こす病気を除外したものと定義されています。その為短時間の痙攣発作では、脳障害や発達への影響は及ぼさないと考えられています。しかし、ご家族はお子さんの痙攣発作に大変びっくりされるかと思います。熱性痙攣の特徴をしっかり把握していきましょう。

2 熱性痙攣が起きたらどうすればいいの?

お子さんの痙攣を前にパニックになってしまうと思われますが、これからご紹介する対応を思い出していただければと思います。

1、まずは深呼吸し、自分が落ち着けるように心をととのえる。

2、お子さんを横向きに寝かす。(痙攣時に嘔吐をすることがありますが、横向きに寝かせることで誤嚥を予防することができます。)

3、痙攣の持続時間、左右差の有無など、お子さんの様子を観察する。

4、5分以内に収まり、目線が徐々に合って意識が回復、泣いたりするようなら落ち着いたところで医療機関を受診してください。

5、5分以上継続する場合、痙攣後も意識ははっきりしない、顔色が悪い場合、2回目の痙攣を起こす場合などは救急要請し、直ちに医療機関を受診してください。

上記の順番を思い出しながら行動していただければと思います。

*痙攣時に舌を噛まないように口腔内に物をつめたりするパパやママもいらっしゃいますが、窒息するリスクがあるので控えてください。


3 どれくらいの人が再発するの?

 大体60-80%程度のお子さんは、再発しないと考えられています。突発性発疹やインフルエンザなど、感染症を引き起こすウイルスは痙攣を起こしやすいので、そのようなウイルスが原因の熱性痙攣の場合、2回目以降が起こる確率は少し低くなると考えられます。しかし、

・パパやママのいずれかが熱性痙攣を起こしたことがある。
・1歳未満で熱性痙攣を起こした
・発熱から間もない時間での痙攣発作(1h以内)
・発作時の体温が39度以下
上記項目に当てはまれば当てはまるほど、痙攣の再発のリスクが高まります。全項目とも満たさない場合には、約15%と考えられています。


4 痙攣予防のお薬(ダイアップ)はいつ使うの?

 熱性痙攣を繰り返すお子さんに関しては、痙攣予防のためにダイアップというお薬を使用する事があります。ダイアップには熱性痙攣の予防効果があります。
 しかし、熱性痙攣を起こした全てのお子さんがダイアップを使用する必要はありません。ダイアップは脳や神経に作用し痙攣を予防する薬なので、お酒に酔ったように、ふらふらしたり、寝てしまったりするといった副作用があるからです。
 また痙攣を予防することはできても、既に起きてしまった痙攣を止める作用はほとんどないので、痙攣後にご家族の方々の判断で使用するのはやめてください。痙攣のせいで意識が悪いのか、ダイアップのせいで意識が悪いのかが判断が難しく、適切な対応ができなくなる可能性があります。


 

5 ダイアップの予防投与が必要なお子さんの特徴

 不必要な薬を使う事で起こる副作用をなくすために、お子さんがダイアップによって予防をするべきかどうかをしっかりと考えていただければと思います。その為、以下の項目にお子さんの特徴が当てはまるかどうかを確かめてください。もし「わからない」「迷う…」など、不安なときはお気軽にクリニックでご相談ください。

・15-20分以上の遷延する発作がある場合。
・短期間に発作が繰り返し起きる
(2回/日、半年で3回以上、1年で4回以上)
・以下の「リスク因子」の中で2項目以上があてはまる+2回以上痙攣が起きた場合

リスク因子
◻︎熱性痙攣前から存在する神経的異常、発達遅滞。
◻︎単純型以外の痙攣発作(左右非対称の痙攣、持続時間が15−20分以上、
 24時間以内に何度も繰り返す)
◻︎両親、兄弟に熱性痙攣、てんかんの家族歴がある。
◻︎1歳未満で熱性痙攣を起こしている
◻︎発熱後1時間未満での発作
◻︎38度未満での発作

 今回の記事は難しい内容が多かったと思います。わからないことや不安なことはお気軽にご相談ください。また必要最小限の薬だけをお子さんに適切に使用することは、子供たちの健康を守ることにつながります。ダイアップの使用についても慎重に考えていただければと思います。






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