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視聴済み1000作品から推し映画を選ぶ Part.16 実話・ドキュメンタリー編

実話に基づいた物語

ドリーム

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1960年代の初め、ソ連との宇宙開発競争で遅れを取っていたアメリカは、国家の威信をかけて有人宇宙飛行計画に乗り出す。NASAのキャサリン・G・ジョンソン(タラジ・P・ヘンソン)、ドロシー・ヴォーン(オクタヴィア・スペンサー)、メアリー・ジャクソン(ジャネール・モネイ)は、差別や偏見と闘いながら、宇宙飛行士ジョン・グレンの地球周回軌道飛行を成功させるため奔走する。

 人種や性別といった差別に屈することなく、知恵と努力でNASAの宇宙開発に多大なる貢献をした3人の女性の姿が描かれています。3人ともチャーミングなんですけど本当に格好良くて、自分たちの実力で成功を掴む姿は感動します。私たちの心を掴んで前を進む活力を与えてくれる素晴らしい一本です。」

イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密

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第2次世界大戦下の1939年イギリス、若き天才数学者アラン・チューリング(ベネディクト・カンバーバッチ)はドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームの一員となる。高慢で不器用な彼は暗号解読をゲーム感覚で捉え、仲間から孤立して作業に没頭していたが、やがて理解者が現れその目的は人命を救うことに変化していく。いつしか一丸となったチームは、思わぬきっかけでエニグマを解き明かすが……。

 第二次世界大戦に翻弄される天才数学者アランチューリングの功績と苦難を描いた作品。映画の題材だけを見ると堅苦しそうですが、分かりやすくかつドラマチックに描かれているため、誰でも楽しめる作品になっています。主演のベネディクト・カンバーバッチがいい味を出していて、変わり者の天才アランチューリングを熱演していました。

リチャード・ジュエル

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1996年、アトランタ・オリンピック開催中に爆破テロ事件が勃発。不審なバックを発見した警備員リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)の迅速な通報によって数多くの力で多くの人命が救われた。だが、爆弾の第一発見者であることでFBIから疑われ、第一容疑者として逮捕されてしまう。ジュエルの窮地に立ち上がった弁護士のワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)は、この捜査に異を唱えるのだが…。

 アトランタオリンピック中のコンサートで警備に当たってた真面目な青年リチャード・ジュエルが爆弾の入ったバッグを見つけ多数の人を救ったものの、第一発見者としてメディアやFBIから容疑者として疑われ無実の罪に問われていく話。

 題材的には面白いかあらすじだけでは分からないと思いますが、文句無しに面白かったです。映画を見て震える体験をしました。この映画は事実に基づく話ですが、素晴らしい脚本のおかげで、怒りや憤り、悲しみ、切なさ、喜びといったさまざまな感情を追体験することができます。

 普通に生きていたら知らないことを劇的に描かれているため、エンタメとして楽しみながら社会派なテーマに触れられる最高の一本です。

ホテル・ムンバイ

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2008年11⽉26⽇。インドの五つ星ホテルがテロリストに占拠される。⼈質は、500⼈の宿泊客と従業員。特殊部隊の到着は数⽇後。宿泊客を逃がすため、ホテルに残った従業員たち。部屋に取り残された⾚ん坊を救うため、銃弾の中を⾏く⽗と⺟。これは「誇り」と「愛」を懸けた、3⽇間の脱出劇。極限の状況下で、⼈はこんなにも⼈を想えるのか―。

 凶悪なテロリストに占拠された五つ星ホテルムンバイでホテルマンたちがお客様の命のために命を賭けて逃すための戦いをする話。広がっているのはこの世の地獄。この作品では、テロの惨さがありありと描かれています。123分間ずっと緊張感が絶えません。

 実話ベースなので素直に面白いと言っていいのか分かりませんが、しっかり観客を飽きさせない作りになっているため、映画を見て気づいたら史実を知っていたという素晴らしい作品です。

 そして、ホテルマンの勇気ある行動の数々。自分の誇りを一旦置いてまで、お客様を守る行動に一流のホテルマンとしての、人間としての誇りを感じて感動しました。

こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話

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北海道の医学生・田中(三浦春馬)はボランティアとして、体が不自由な鹿野(大泉洋)と知り合う。病院を飛び出し、自ら集めた大勢のボランティアや両親に支えられて風変わりな自立生活を送る鹿野。夜中に突然「バナナが食べたい!」と言い出すなど、いつも王様のような超ワガママぶりだが、自分自身に素直に生きる鹿野は、どこか憎めない愛される存在だった。ある日、鹿野は新人ボランティアの美咲(高畑充希)に惚れ、彼女へのラブレターの代筆を田中に依頼するが、実は美咲は田中と付き合っていて…。奇妙な三角関係は、鹿野の主治医やベテランボランティアたちを巻き込んで大変な騒動に!しかし鹿野の病状は徐々に悪化、体はますます自由が利かなくなっていく。そんな鹿野には、生きているうちにどうしても叶えたい夢があった――。

 大泉洋演じる筋ジストロフィーの鹿野が、ボランティアと一緒に、笑いあり、涙ありで乗り越えていく作品。こちらはシンプルに面白い。悲しい気持ちに陥りがちな難病を扱ったテーマですが、何度も笑いながら、でも最後はしっかりと感動できる素晴らしい作品です。

 最初、鹿野は傍若無人で嫌な奴だと思いましたが、あくまで患者とボランティアは対等であるという考え方や、病気だからと後ろめたい気持ちを持つ必要は無いという彼のスタンスは素直に格好いいなと思いました。

 彼は、ある夢を持っていました。その姿は、同じ病気を持つ人たちから希望の星のように映ったことでしょう。私自身も彼にハッとさせられました。こちらの作品は、色んな人に見て欲しい一作です。

チョコレートドーナツ

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マルコが好きだったもの。人形のアシュリー、ディスコダンス、ハッピーエンドのおとぎ話、そしてチョコレートドーナツ。マルコは僕らに家族をくれた。僕らはマルコをなにがあっても守ると約束した。僕たちは忘れない。マルコと過ごした愛しい日々。

 LGBTのカップルが親に捨てられたダウン症の少年を育てる物語を通して本当の愛情とは何か、差別とどう向き合うべきかを問う作品。切ないお話なので一概に素晴らしいと言うのも憚られますが、考えるべき大事なテーマが丁寧に描かれてました。

 ネグレクトしてきたヤク中の母親が親権を持つより、マルコを真剣に愛する赤の他人の2人が彼を育てた方が賢明なのは明らかですが、そこにはLGBTに対する偏見が大きな壁となります。法律や血の繋がりって何だろうとも思いました。当たり前の権利が当たり前に認められない。非常に歯痒い気持ちになります。

 主役のアラン・カミングの演技と歌が本当に素晴らしい。彼自身バイセクシャルを公言していますが、慈愛に満ちた眼差しや時に厳しくマルコを守るために強い姿勢を示す姿は母親そのものでした。

タクシー運転⼿ 〜約束は海を越えて〜

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ソウルのタクシー運転手マンソプは「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」という言葉につられ、ドイツ人記者ピーターを乗せて英語も分からぬまま一路、光州を目指す。何としてもタクシー代を受け取りたいマンソプは機転を利かせて検問を切り抜け、時間ぎりぎりで光州に入る。“危険だからソウルに戻ろう”というマンソプの言葉に耳を貸さず、ピーターは大学生のジェシクとファン運転手の助けを借り、撮影を始める。しかし状況は徐々に悪化。マンソプは1人で留守番させている11歳の娘が気になり、ますます焦るのだが・・・。

 タクシー運転手とドイツ人記者が巻き起こす正義の物語。この作品をきっかけに光州事件という韓国の事件を知りましたが、このような悲惨な事件が隣の国あったとは知りもしませんでした。

 ソン・ガンホ演じるタクシー運転手がぶっきらぼうで人情味あるため、暗くならずに興味をもって史実を知ることができます。また、ハラハラするドラマチックな展開も待ち受けています。家にいながら、世界で起きた事件を興味深く知ることができる貴重な作品のひとつです。

英国王のスピーチ

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子供の頃から悩む吃音のために無口で内気な、現エリザベス女王の父、ジョージ6世。 しかしヒトラーの率いるナチスドイツとの開戦に揺れる国民は、王の言葉を待ち望んでいた。 型破りのセラピスト、ライオネルの友情と妻の愛情に支えられ、渾身のスピーチに挑むのだが─。

 戦争や英国王室など難しいテーマの作品のように聞こえますが、主演のコリン・ファースの名演技が冴え渡り、かつコミカルに劇的に描かれているため楽しみながら見ることができます。人間同士の関わり方を考えさせられるドラマが見どころの作品です。

Fukushima 50

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2011年3月11日午後2時46分、マグニチュード9.0の地震が発生し、それに伴う巨大な津波が福島第一原子力発電所を襲う。全ての電源が喪失して原子炉の冷却ができなくなりメルトダウン(炉心溶融)の危機が迫る中、現場の指揮を執る所長の吉田昌郎(渡辺謙)をはじめ発電所内にとどまった約50名の作業員たちは、家族や故郷を守るため未曽有の大事故に立ち向かう。

 怒り・悲しみ・やるせなさ。色んな感情が湧き上がってくる力強い作品です。政府の機能しなさ、民間の現場力は、さながら『シン・ゴジラ』を見ているようでした。

 当時の日本のメディアでは東電の不手際ばかり報道していましたが、ここまで決死で現場を、人を、日本を守った者たちがいたことを教えてくれる貴重な作品です。

 もしかしたら彼らがいなければ、日本が終わっていたかもしれない。そして、それはまたいつか、いや明日か今日来るかもしれない。多くの人がその事実を知り、次に備えるべきだということを訴えかけてくれる作品です。

フォードvsフェラーリ

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カーレース界でフェラーリが圧倒的な力を持っていた1966年、エンジニアのキャロル・シェルビー(マット・デイモン)はフォード・モーター社からル・マンでの勝利を命じられる。敵を圧倒する新車開発に励む彼は、型破りなイギリス人レーサー、ケン・マイルズ(クリスチャン・ベイル)に目をつける。時間も資金も限られた中、二人はフェラーリに勝利するため力を合わせて試練を乗り越えていく。

 ル・マン24時間耐久レース王者フェラーリに僅か90日間で打倒を目指すフォード陣営の漢たちの物語。カーレース詳しくない人もカーレースの魅力が分かり、熱くなれるような作品です。

 特にレースシーンは、映画というより本物のレースを見ている臨場感があります。両陣営のドライバーの戦いだけでなく、家族愛や友情、そこに企業の思惑が乗っかり、一筋縄ではいかないドラマも面白いです。

ファイティング・ファミリー

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イギリス北部でレスリングジムを経営するナイト家のサラヤ(フローレンス・ピュー)は、中学生のころからリングに立ち、子供たちにレスリングを教えながら、WWEの試合に出るという夢を抱いていた。あるとき、トレーナーのハッチ(ヴィンス・ヴォーン)からWWEの試験に誘われる。プロレスを愛する兄のザック(ジャック・ロウデン)と共に参加したサラヤは、そこでドウェイン・“ザ・ロック”・ジョンソンと対面する。

 イギリス出身のレスリングファミリーの兄妹が夢に向かって壁にぶつかりながら乗り越えていくプロレス・サクセスストーリー。パッケージからドタバタコメディなのかなと思ってましたが、笑いがありながらもしっかりとプロレス愛、そして家族愛、夢などが描かれていて感動しました。

 実際に、WWEで活躍するペイジ選手の伝記物語。YouTubeで試合も見てみましたが、ROWのデビュー戦で王者からビンタをくらうところまで再現されていることを知りました。プロレス愛が強い人は、より感動できるかもしれません。

ビリーブ 未来への大逆転

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貧しいユダヤ人家庭出身のルース・ギンズバーグ(フェリシティ・ジョーンズ)は、必死に努力して名門ハーバード法科大学院に入学する。1956年当時在学していた女性は500人中たったの9人で、女子トイレすら設置されていなかった。家事と育児に理解のある夫マーティン(アーミー・ハマー)の助けもあり、ルースは首席で卒業する。しかし女性というだけで法律事務所に就職することができず、大学の教授になる。

 史上初の男女平等裁判に挑んだルース・ギンズバーグ氏の実話に基づいた作品。本作は法廷モノで難しい単語が少し飛び交うので集中が必要です。

 家族と共に歩みながら真の平等や自由のために闘う彼女の姿は格好良いです。法廷に立つシーンは、等身大のルースの感情が垣間見えて震えました。

 彼女の偉業は、男女平等の権利を勝ち得たことでもありますが、100年という長い先例があるにも関わらず、法律は時代によって変わるべきものであり、国に暮らす人々が自由を謳歌することを阻害すべきものではないとし、「常に疑い、見直すこと」を声高に叫んだことに功績があると思います。

ボヘミアン・ラプソディ

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世界待望!伝説のバンド<クイーン>のフレディ・マーキュリーの華やかな成功と波乱万丈の人生を描く。クイーンのブライアン・メイとロジャー・テイラーが音楽総指揮を務め、32もの不朽の名曲が主としてフレディの歌声で甦り、心臓に鳥肌がたつほどの感動を呼び起こす。

 フレディ・マーキュリーの活躍と苦難を描いた伝記作品。観賞後に良い映画を見たという充実感がすごかったことを記憶しています。私はクイーン世代ではありませんが、劇中で描かれるフレディの人間らしい行動に共感を覚えました。

 そして、この物語の集大成でもある圧巻のライブエイドのシーンは必見です。

ドキュメンタリー

イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ

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ストリート・アートについてのドキュメンタリーを制作し始めたロサンゼルス在住のフランス人映像作家ティエリー・グエッタ。ティエリーは覆面アーティスト、バンクシーの存在にたどり着き、取材を始めるが、ティエリーに映像の才能がないことに気付いたバンクシーは、逆にティエリーのドキュメンタリーを自分が監督し始める。

 バンクシーの感性や性格がそのまま表れたようなもはや映画形式のアート作品。これぞ、バンクシー。それだけでもう見る価値のある作品だと思います。どこまでが本物のドキュメンタリーなんだろう?と思えるほど出来過ぎていますし、シニカルな作風で面白かったです。

 前半は、バンクシーが監督だということを忘れるくらいティエリーディレクションの映画のように見えます。幼少期のある出来事から記録オタクになる彼は、イマジネーションを源泉として活動するアーティストそのものですし、紛れもないアーティストのように見えます。

 しかし、彼がバンクシーと接触してからはそれが瓦解していきます。主役だったはずのティエリーがバンクシーの影のディレクションのもと、面白いようにピエロになってしまいます。

 そして、その一部始終を通じて、アート業界に対するカウンター的な意味合いを持つのですから、多層構造になっているのが凄いと思います。我々がこういう映画を称賛する結果も含めてまでバンクシーの掌で転がされてるようでいて、バンクシー×映画の化学反応が堪能できる最高の映画体験です。

アイ・ウェイウェイは謝らない

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中国を代表する現代芸術家のアイ・ウェイウェイは、2008年の四川大地震における校舎倒壊と5,000人を超える児童死亡の徹底調査に着手。政府の彼への監視は日ごとに厳しさを増し、2009年には調査に訪れていた四川で地元警察に暴行される。そのひと月後、ミュンヘンで開催された個展の際にアイ・ウェイウェイは脳内出血の緊急手術を受ける。

 中国の破天荒な芸術家であり、人権運動家でもあるアイ・ウェイウェイを通して、中国の内情を知れるドキュメンタリー。彼は自らを芸術家というより"チェスで戦う人"と言います。敵(政府)が動いたら自らも動く人なのだと。

 彼の作品は常に体制への反抗や歴史が反映されていますし、北京大地震の時に国家が取るべきだった行動の代行者としての側面も見えました。こちらのドキュメンタリーを通して、訴えるツールとしての芸術の意義を知ると共に、中国の社会問題の根深さも知ることができました。

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