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これだけ知っておけばOK!カードゲーム全般で使えるサイドボーディング論

序文

皆さん、こんばんは。
今回は久しぶりのカードゲーム実践記事になります。

そんな今回のテーマは"サイドボーディング"に関する話。
1本勝負が主流のデジタルカードゲームが普及し、マッチ戦やサイドデッキ(サイドボード)といった概念が死滅しつつある昨今ですが、それでもMTGや紙の遊戯王などでは未だ現役な、ゲームとゲームの間にデッキの内容を変更できるゲームシステム。
にも関わらず、MTGのトッププロに「きちんとしたサイドボーディングが出来ている人は少ない」とまで言わしめるほど、このほんの数枚のカード入れ替えには奥深いゲーム性が詰まっています。

なので、今回はそのサイドボーディングの、とりわけ基礎に近い部分をかいつまんで解説していこうと思います。
これで100点満点のサイドボーディングができるようになる……とは流石に言えませんが、とりあえず、最低限のサイドボーディングはできるようになったらいいなぁ。


自分のデッキの戦略を見直す

きちんとしたサイドボーディングを語る上で重要なのは、そもそも、自分のデッキがどういう戦略の元に構築されているか、その"戦略感"をしっかり把握することです。

例えば、MTGのオーソドックスな【白単アグロ】デッキを使っている時に「クリーチャーを早期に展開して相手のライフポイントを足早に減らしていく」というようなイメージを持っている場合。
確かに、アグロデッキは早期にゲームを終わらせることを主眼に置いたビートダウンデッキであるため、これも別に間違いではありません。
ただ、ことサイドボーディングを想定する場合、もう少し情報の解像度を上げる必要があります。

重要なのは、そのデッキの勝ち筋を正しく把握すること。
先の例に則るなら「クリーチャーを早期に展開し、攻撃によって相手のライフポイントを足早に減らしていき、最後はその勢いのまま相手のライフポイントを0まで詰め切る」というような、最終的にどうやって自分がゲームに勝利するのか、その終局図までしっかりイメージしきることが、戦略感を語る上では重要な要素となるのです。

なぜなら、そもそもカードゲームにおける"戦略"とは、ゲームに勝利するという目的を達成するために考えるものであるため。
白の優秀な各種メタクリーチャーで相手の行動を抑制することや、肉付きのいいフィニッシャーで更に相手のライフポイントを減らすなども、確かに戦略の一環ではあります。
ただ、それらはあくまで勝利という最終目的のための通過点にすぎません。
自分のデッキの戦略を考える時は、そういった副次的な長所だけではなく、きちんとどうやってゲームに勝つのかという、戦略の本質となる部分への意識が重要になるんですよね。
~して勝つというところまで考えるのがポイントです。

そして、自分のデッキがどうやってゲームに勝利するのか。そのイメージが掴めたら、次はそのイメージを元に自分のデッキに採用されているカード1枚1枚の役割を把握していきます。

役割というのは、そのカードがそのデッキの戦略の中で、どういった効力を発揮しているかを指しています。
例えば、ビートダウンデッキにおけるクリーチャー、とりわけ1~2ターン目に出す攻撃力の高いクリーチャーは"初動"や"クロック"と呼ばれ、攻め手の一番星を飾るクリーチャーとして、デッキの切り込み隊長的な効力を発揮していると言えますよね。
これが、そのカードの役割に当たる部分です。
他にも、カードの役割としては、初動の次に場に出す"後続"やゲームの終盤に使う"フィニッシャー"などがありますかね。
いろいろありすぎてここでは列挙しきれませんが。

ただ、いずれにしても、明確な戦略感のあるデッキでは往々にして、採用カードの1枚1枚に何かしらの役割が与えられていると思うので、デッキを確認する時は、採用されているカードにどんな役割があるのか、いろいろ想像しながら見ていくことをオススメします。
こういう考え方はサイドボーディング以外にも応用が効きますしね。

対内的カードと対外的カード

……役割とか戦略感とか、いきなりそんな難しい話をされても困るって?
分かりました。それでは、この役割付与を簡単にする、魔法の言葉をお教えしましょう。
それは、ずばり「対内的カード」と「対外的カード」の2つ。
全てのデッキに採用している全てのカードは、この2つの言葉だけで、その役割を説明することができます。

まず、"対内的カード"ですが、これは内側に対するカードという意味合いで、内側――つまり、自分の戦略を通すために必要なカードの事を指します。
一番わかりやすいのは、そのデッキを構築する段階でメインコンセプトに掲げたキーカードですね。
デッキは、そのキーカードを全てのゲームで戦略の中核に置くために構築されているはずなので、そのキーカードは間違いなく"対内的カード"と言えるでしょう。
他にも、そのキーカードを運用するために採用されたサポートカードや、そのキーカードを場に出すためのカードなど、その周辺にあるカードも"対内的カード"であることが多いです。

このへんは、遊戯王のデッキで確認すると非常に分かりやすいですね。

【エクソシスター】は墓地メタ効果を内蔵している
"エクソシスター"モンスターを主軸とした中速デッキ
《エクソシスター・ミカエリス》の対象の広い除去効果+後続サーチが優秀

例えば、こちらの【エクソシスター】デッキであれば……

"エクソシスター"の基本戦略はエクシーズ召喚なので
それをサポートする《幸魂》や《金満で謙虚な壺》はこちら側

"エクソシスター"カードを中心としたメインギミックまわりのカード全てが"対内的カード"に該当します。

と、このように、そのデッキをそのデッキたらしめている要因。
誰を相手にしている時でも必要になるデッキのメインキャストが"対内的カード"というわけです。
一般的には、そのデッキの「メインエンジン」だなんて呼んだりしますね。

では、対外的カードとは一体なんなのか?
これは、対内的カードとは逆の立場にあるカード。
つまり、外側――相手の戦略や行動と戦うためのカードの事を指します。

先のデッキで言うと大体こんな感じ

特に《増殖するG》や《灰流うらら》なんかは分かりやすいですよね。
これらのカードは手札誘発と呼ばれ、後攻となった際に相手の先攻1ターン目の行動を抑制するために必要な、現代遊戯王を語る上では欠かせない汎用カードとなっています。

ちなみに、遊戯王マスターデュエルにおける
《増殖するG》採用率は90%以上と言われている

こういった相手の行動の妨害、ないし、相手がこちらに対する妨害を行ってきた場合の対策カードなど、相手との駆け引きの中心になるカード群は総じて"対外的カード"となります。

そして、ここまでは全てのカードを対内的カードと対外的カードの2種類に分別して話を進めていましたが、実際にはそのどちらともつかないハイブリットカードがあることにも触れておかねばなりませんね。
例えば、先ほどの【エクソシスター】デッキで対内用カードとして紹介した《エクソシスター・リタニア》という罠カード。

《エクソシスター・ミカエリス》でサーチしてくるカード
相手の場のカードを除去する効果がある

このカードは《エクソシスター・ミカエリス》からサーチして使用するという対内的カードの側面がありながら、その効果は相手の行動を妨害する対外的カードのような1枚です。
こういった自分のデッキのメインギミックにも噛んでくる妨害カードは少し分類が難しく、そのデッキの都合によるところが大きいんですよね。
とはいえ、基本的には相手への妨害要素を持った"対外的カード"に近い性質を持っているので、そちら寄りに考える方が無難かなーと思います。
少し難しい話をすると、厳密にはデッキ構築においては対内的カード、サイドボーディングにおいては対外的カードみたいな見方をするのが良かったりもするんですが、それはさておき。

いずれにしても、自分のデッキに採用しているカードが、それぞれ"対内的カード"と"対外的カード"のどちらに分類されるカードなのか。
これを把握しているかして否かで、サイドボーディングの質は大きく変化します。

抜きたいカードを考える

……と、ここまでがサイドボーディングを考える上での前提となる話だったわけですが、皆さん、ここまでついてこられてますか?
私だったら投げ出しそうな気がしますね。
毎度のことながら、話が長くなってすみません。
ですが、お待たせしました。ここからがようやく本題――サイドボーディングの話になります。

では、まず、そもそもサイドデッキ(サイドボード)にはどのようなカードを採用すべきなのかという話なのですが、ここにも1つ、考え方を簡単にする魔法の言葉が存在します。
それは「サイドボーディングは入れるカードより、抜くカードの方が遥かに大事」という点。
もうこの一言だけでこの記事を閉じてもらっても構わないぐらい、このことがサイドボーディングにおいては重要なファクターとなります。
……待ってください、冗談です。本当にブラウザバックしないでください。
話はもうちょっとだけ続くんじゃよ。

……気を取り直して。
まず第一に、この記事をちゃんと読み続けてくださった皆さんは、ここまでの内容で、自分のデッキに採用されているカードに、それぞれ役割があることを把握されていることと思います。
最低でも、そのカードが自分の行動を通すための"対内的カード"なのか、それとも相手の行動を妨害するための"対外的カード"なのかね。

であれば、対戦相手のデッキや先攻後攻などによって、そのカードが役割を十全に果たせない場合があることも、想像に難くないと思います。
例えば、MTGにおいて、クリーチャー除去がクリーチャーに頼らないコントロールデッキに刺さらなかったり。
はたまた、遊戯王で自分が後攻の時に手札誘発対策の《墓穴の指名者》があっても、既に完成した相手の盤面を崩すためには使えなかったり。
特に、対戦相手のデッキや戦況によって使用感が変化する対外的カードは、その時と場合によって、そのポテンシャルに天と地ほどの差が生まれます。

そんな時に、弱くなったカードをデッキから抜き去り、代わりの有用なカードをデッキに入れる。
それを可能にするのがサイドボーディングであり、それこそがサイドボーディングの本来の目的でもあります。

なので、巷ではサイドボーディング=どんなカードをサイドインするかと考えられがちですが、実はサイドボーディングはサイドインよりサイドアウトの方が重要だったりするんですよね。
なにせ、サイドインするカードはサイドアウトするカードの代用品でなければならないので。

仮の話ですが、もしサイドデッキに今の対戦相手に対して有効なカードがあり、しかしメインデッキに抜きたいカードが無い場合。
その場合、そのカードをサイドインしようとすると、デッキに必要なカードを抜かなければならなくなり、そのデッキの本来の動きを損なうことになってしまいます。
いわゆる「60点のカードを抜いて80点のカードを入れるサイドボーディング」というやつですね。
……まぁ、メインデッキのカードを一切抜かず、デッキの総枚数を増やす形でそのカードをサイドインするという手もなくはないですが。
ただ、どちらにしても、そのデッキの本来の動きができる確率は下がるでしょう。

そのため、サイドボーディングはただ強い対策カードをサイドインすればいいというものではなく、むしろ、どのカードをサイドアウトして、その代わりになるカードをサイドインできるか。
そのデッキの全体像を崩さずに調整できるかどうかが真に重要なのです。
何をサイドインするかなんていうのは、実は二の次なんですよね。

メインデッキのカードを"対内的カード"と"対外的カード"に分類した理由も、結局のところはここにあります。
何故なら、サイドボーディングにおいて一番失敗しやすいパターンは、デッキの"対内的カード"を何枚も外し、代わりに相手への対策となる"対外的カード"を増やしてしまうことで、デッキのバランスを大きく損なってしまうというもののため。
とりあえず対策カードを入れることがサイドボーディングだと考えているうちは、こういうミスをしてしまいやすいんですよね。

そのため、デッキの戦略とカードの役割を改めて見直し、サイド後の勝負に必要なカードとそうでないカードをはっきりさせ、サイドボーディングの際に必要なカードをサイドアウトしてしまわないこと。
これこそがサイドボーディングにおいて、真に肝心なプレイングとなるのです。

サイドデッキを組んでみよう

それでは、ここから実際にサイドデッキ(サイドボード)を構築する際の手順や注意点について話していきます。
といっても、そこまで難しいことはしません。
ここまでの内容がいくらか頭に入っていれば、すんなり理解できる内容になっていると思います。

まず最初に、改めて言いますが、サイドボーディングはサイドインするカードより、サイドアウトするカードの方が重要です。
入れるカードは抜くカードの代わりとして、その"代役"をきちんとこなさなければならないためですね。

であれば、サイドデッキ(サイドボード)の内容も必然、メインデッキからサイドアウトしやすいカードを基準に考えられます。
クリーチャーを使わない相手に対してのクリーチャー除去や、特殊召喚を多用しない相手に対しての《増殖するG》など、効果範囲が限定的な"対外的カード"は、特にこの選定に引っかかりやすいですね。

なので、まずはメインデッキ内のそういったカードをいくつかピックアップし、それの対となるカードを探すことになります。
例えば、クリーチャーを使わない相手に対してクリーチャー除去を抜く場合を想定し、そのシチュエーションで広く有効そうなカード――クリーチャーではないカード全般に有効な《否認》などを、メインデッキのクリーチャー除去と同じ枚数だけ用意したり。
はたまた、特殊召喚を多用しない相手に対して《増殖するG》を抜く可能性を考慮し、同じ枚数だけモンスターに頼らない――魔法・罠を除去できる《ライトニング・ストーム》などを《増殖するG》と同じ枚数だけ用意するなど。

モンスター除去効果もあるが
メインとなるのはやはり魔法・罠全破壊効果

なんにしても、メインデッキに効果範囲の限定的なカードがあるなーと感じたら、それを入れ替えるためのカードをサイドデッキに用意しておくこと。
これがサイドデッキ構築において肝心な部分となります。
こちらも今までの話と同様、相手のデッキに対するキラーカードを用意できているかどうかというのは、実は二の次。
まずは、どんなデッキと当たっても、過度にメインデッキに不要なカードが残るような構築にしないこと。これが重要なのです。

ただ、最初のうちは、その効果範囲が限定的かどうか考えるのも難しいかもしれません。
どのカードがどの相手に対して有効でない場合があるのかなど、そういった想定をするほど、まだゲームに馴染んでいない場合など。

これに関しては、完全に経験がものをいう世界なので、まずはありあわせでもなんでもサイドデッキ(サイドボード)を15枚用意して、実践の中で調整していくのがベストです。
特に、サイドデッキを用いないシングル戦を繰り返すこと。
それだけでも、特定のマッチアップで弱くなるカードの存在はいくらか見えてくると思うので、それを見つけたら逐一メモし、サイドデッキを構築する際に役立てるのが良いのかなーと思います。

あとは、とにかくいろんな種類のサイドカードを試してみること。これも重要です。
慣れないうちは同じカードを3~4枚積むような構築になってしまいがちですが、同じカードを積めば積むほどするほど、サイドボーディングで対応できる範囲は狭くなっていきます。
そのため、できればサイドデッキは同名カードを複数枚採用するのではなく、役割の近しいカードと枚数を散らすような構築が望ましいです。
同じ魔法・罠破壊カードでも《ライトニング・ストーム》と《コズミック・サイクロン》を2枚ずつ採用するなど。
少し難しい構築にはなってきますが、こういうことが出来るようになると、自分の技術の向上を肌で感じることができるようになるので、ぜひ最終的にはこういう構築を目指していってほしいですね。

それと、これは余談ですが、いろんなカードを試すようなサイドデッキは、それだけ多くのカードの可能性を確かめることができるということでもあります。
そのため、大会などの競技イベントに持ち込む予定でもなければ、特定のデッキへの対策カード――"対外的カード"だけでなく、自分のデッキで試したい"対内的カード"を忍ばせておくのも、デッキ調整の一環としてはありだと思います。
サイドデッキとしては少し不自然な感じになりますが、特に入れるカードが思いつかない場合や、どうしても試したいカードがメインデッキのうちに入らない場合などは、その調整用カードをそこに用意しておくのもいろいろと便利でいいですよね。
いちいちメインデッキ調整のためにスリーブを入れ替える手間も省けますし。

いずれにせよ、デッキ構築に正解はないので、よくサイドアウトしがちなカードの代替品を用意しておくこと以外は、割と好きなように組んでおけばいいのかなーとも思います。
極論、とりあえず15枚カードを用意すれば、それだけでサイドデッキ足りえますしね。
面倒くさくなったらなんとでもなれーの精神。
意外と大事だと思います、こういうの。

カード入れ替えのパターン

この時点でサイドボーディングに関する基礎はほぼほぼ語りきったので、あとはちょっとした実践例をいくつか紹介して、この記事を締めくくろうと思います。

不要なカードを抜く

サイドボーディングを行う時、まず真っ先にサイドアウトするカードは、そのマッチアップで全く使い物にならなくなった対外的カードです。
MTGでクリーチャーを使わないコントロールデッキと対面した時のクリーチャー除去カードや、遊戯王で【神碑】と対面した時の《増殖するG》など、ほとんどの相手に刺さるからメインデッキに入れているのに、その裏目を引いてしまって完全に使い物にならなくなっているカード。
こういったカードはまず何を置いても全入れ替えが基本です。

このへんは先ほどのサイドデッキ構築の項目でも触れているので、詳しい話は割愛。

先攻後攻やゲームレンジに合わせる

サイドボーディングの判断基準となるのは、なにも相手のデッキだけとは限りません。
次のゲームで自分が先攻を取れるのか、後攻に回ってしまうのか。
はたまた、マッチアップの性質上ロングゲームになりやすいのか。
変わったところだと、大会で時間切れが近いから早期決着を想定したサイドボーディングを行うパターンもありますね。
いずれにしても、相手の使用デッキだけでなく、自分の使用デッキや先攻後攻次第でサイドボーディングが変わるパターンもあるんですよね。

これに関しては、遊戯王の《墓穴の指名者》が一番わかりやすいでしょうか。

相手の手札誘発カードを無効化できるカード

《墓穴の指名者》は自分が先攻の時に、相手の手札誘発による妨害を無効化し、自分の動きを押し通すために使われるカードですが、相手の盤面に干渉できるカードではないため、後攻で相手が先攻展開を完遂している状況では力不足と言わざるを得ない1枚となります。
そのため、こういったカードは次のゲームで自分が後攻の際には抜ききってしまい、代わりに後攻で強いカードを入れるのがセオリーとなっています。

他にも、MTGでビートダウンデッキの同型戦が発生した時。
こういう場合は同じゲームレンジで戦っても拮抗状態に陥るだけなので、自分のデッキの本来の動きを敢えて抑え、代わりに拮抗状態となった時に強いプレインズウォーカーや飛行持ちクリーチャーなどを採用することがあります。
具体的に言うと、低マナ域のクリーチャーを減らし、高マナ域のパワーカードを増やすような格好ですね。

このようにして、先攻後攻や想定されるゲームの速度などによってもサイドボーディングは変化します。
……と、難しいことを言ってるように見えるかもしれませんが、結局、その時分で弱いカードをデッキから抜き、代わりのカードを入れるという基本からは何も変わっていません。
なので、とにかく「今はこのカード弱いかな?」と感じたら、それを別のカードと入れ替える。
慣れないうちは、そんな緩い感覚でも大丈夫だと思います。

カードを少しだけ減らす

ここまでいろいろ言ってきましたが、実践の場においては、サイドアウトするカードとサイドインするカードの枚数が噛み合わない事の方が圧倒的に多いと思います。
流石に4~5枚も合わない場合はサイドデッキの不備を疑うのですが、それ未満の枚数であれば、細かい調整の噛み合い都合でそうなるケースも多々あります。

そんな時は、特定のカードを全部抜くのではなく、何種類かの3積み4積みされているカードを1枚ずつ減らすようなサイドボーディングがオススメです。
もちろん、枚数を多く取っているカードは、デッキの重要な役割をこなしているからそうなっているのであって、当然、そこを減らすということは、デッキ本来の"ぶん回り"の可能性を低くするリスクを抱えることになります。
しかし、そういったカードの中でも、1枚減らしたぐらいではデッキの総崩れには繋がらないカードというのもあります。
メインキャストの中の脇役。デッキの"ぶん回り"に関わらないとか、サイド後に相手がこちらに対する対策カードを入れてきた時に弱くなるカードとか。
そういう比較的優先度が低いカードというのが、大抵のデッキにはあると思います。

そういったカードを全部は抜かず、少しだけ減らすことで、サイドボーディングの交換枚数、その微調整を行うことができます。
……まぁ、この3積み4積みしているカードを1枚だけ減らすというのは、きっちりしていない感じがして避けてしまう人もいるかもしれません。
ただ、これができるかどうかでサイドボーディング初心者か上級者か分かれるといっても過言ではないテクニックなので、あまり好き嫌いせずに試してみてほしいですね。

対策カードを対策する

これは少し特殊な例ですが、自分が何らかの脆弱性を持ったデッキを使っていて、相手がその脆弱性を突くようなサイドカードを投入してくるであろうと想定される場合。
つまり、ほぼすべてのゲームで自分のデッキの脆弱性を補うためのカードをサイドインしなければならない場合は、今までの話をいったん忘れてください。
この手のデッキだけはサイドインするカードの方が重要です。

この場合はそのデッキがどういう特殊性を帯びているかにもよりますが、基本的にはメインギミックのうち、脆弱性の元となっているカードの枚数を1~2枚ずつ減らし、カードをサイドインする枠を確保することになります。
当然、これによってデッキ本来の動きを抑える形にはなるでしょうが、相手の対策カードでこちらの戦略が瓦解する危険性がある以上、そんな悠長なことは言ってられません。
多少無理やりにでもメインデッキの枠を空け、対策カードへの対策をしっかりサイドインしましょう。

その他

主なサイドボーディングのパターンは大体こんなものですが、サイドボーディングは文章だけでは説明しきれないほど奥深い世界です。
そもそも、人によって正解不正解が分かれることも多々ありますしね。

特に、その状況下で強くなるカード/弱くなるカードというのは個人の感想によるところが大きく、サイドボーディングの是非を知人と話し合う時は大体この点が論争の火種になるのでね。
そんな時は、いろんな人の意見を聞きながら、自分らしいサイドボーディングを模索していくのが一番いいのかなーなんて思ったり。

あとは、相手が複数の戦略を持ったデッキの場合。
これもたまにある話なんですが、相手がそういう戦略の可変性を持っている場合は、本当に信じられないぐらいサイドボーディングが複雑かつ面倒になります。
例えば、かつてMTGに存在した、ワンキルコンボとクロック・パーミッション戦略が同居していた【欠片の双子(モダン)】デッキとかね。
こういったデッキはサイドボーディングの狙い――例えば、ワンキルコンボを咎めるカードをサイドインし、コンボを阻害しながら自分の勝ち筋を通すサイドボーディングをした場合、その狙いをズラされる――コンボパーツを減らしてクロック・パーミッション戦略のためのカードを増やされると、こっちが一方的に不要牌を掴まされることにもなりかねません。
なので、この手合いは非常に緻密なサイドボーディングプランが必要になったりするんですが、まぁ、最初からそんなことができれば苦労しないですよね。

そんなこんなで、サイドボーディングは一口で語れないほど奥深いものということが分かっていただけたと思います。
とはいえ、コツさえ掴めば、大仰にデッキを破綻させないサイドボーディングが簡単にできるようになるとも筆者は考えているので、そこは物怖じせず、軽い気持ちで挑んでいってほしいですね。
最悪、それで何か失敗しても、それが次への学びになりますし。
トライアンドエラーの精神で頑張っていきましょう。

まとめ

いかがだったでしょうか。
正直、これでサイドボーディングの基礎を全て語りきれているのか、不安なところもあるのですが、そもそもサイドボーディングの基本技術について、特にMTG以外のカードゲームの場合も含めて語っている人がそんなにいなかったので、それだけでもこの記事を書いた意味はあったかなーと自負しております。
……といっても、筆者のこれはMTG仕込みのテクニックなので、遊戯王や他のカードゲームのサイドボーディングに一風変わったセオリーがあったりしても、それは内容に含んでいませんがね。
ゲーム性が違えば、また違ったサイドボーディングがあるでしょうし。
こればっかりは何とも言えないです。

さて、最後にはなりますが、改めて、この1万字越えにもなる解説記事を最後まで読んでいただいて、誠にありがとうございました。
カードゲーム系の解説記事は不定期更新のコンテンツなので、いつ、どういった内容のものを投稿するかは全く以て未定ですが、もし、また筆者の記事が皆様の目の前に表示されるようなことがあれば、その時はよろしくお願いいたします。
それでは、また。

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