見出し画像

デッキは40枚にするべきか?【遊戯王マスターデュエル】

序文

皆さん、こんばんは。
今回は前回のブラマジ解説記事で長すぎてお蔵入りになった40枚デッキより43枚デッキが安定する理由と、デッキの枚数を最低枚数にまとめあげる事に対する個人的な見解をまとめた記事になります。

今回の内容はかなり複雑で、正直、考えていることを100%文章にまとめ切れるか不安なところもありますが、とりあえず80%ぐらいの完成度にはしようと思うので、辛抱強く見届けていただけると幸いです。

今回の例題

まずは、その解説記事で問題になったデッキレシピのおさらいから。

あの時から特に弄ってない

このデッキについて改めて解説することは特にありません。
が、よく見るとこのデッキ、43枚構築にしては妙なカードが紛れ込んでいますよね?
そう、こいつのことです。

《成金ゴブリン》

カード1枚を使って1枚ドロー。
結果的に手札は増えも減りもせず、相手に1000ライフポイントを与えるだけのカード。
それが《成金ゴブリン》です。

一般的に、このカードは【エクゾディア】などの、とにかくデッキを掘り進めたいデッキに採用されます。
特に、特殊勝利を目指すようなデッキならデメリット部分も全く気になりませんし、タダで1枚ドローできるなら儲けものですよね。

しかし、【ブラック・マジシャン】はそういう類のデッキではありません。
確かに【ブラック・マジシャン】はボード・コントロール色の強いデッキであり、相手のライフポイントの増減はあまり気にしませんが、それでも、最終的に相手のライフポイントを削りきりたい以上、ライフポイントを与えるというデメリットは気にならないと言えば嘘になります。
ましてや、40枚デッキにわざわざ《成金ゴブリン》を3枚足して43枚デッキにするなんて、普通に見たらナンセンスにも程がありますよね。
デッキを掘り進めたいのか増やしたいのか、よく分からないような。

ですが、筆者は明確な理由を持ってこういう構築にしていますし、実際、このデッキでマスターデュエルの【スプライト】渦巻くダイヤ帯を乗り切っています。
なので、少なくとも、多少耳を傾ける程度の内容はあると思います。多分。

ドローカードの枚数的考え方

では早速、そのデッキを増やした理由について語りたいところなんですが、その前に1つ、皆様と共有しなければならないことがあります。
それは、構築理論におけるドローカードの捉え方についてです。

大体こんな感じのレシピだったはず

例えば、こちらの【閃刀機】デッキ。
知ってる人も多いと思いますが、このデッキは《閃刀姫-レイ》と、彼女からリンク召喚できる"閃刀姫"リンクモンスターで立ち回るクロック・パーミッション戦略を用います。
そして、その動きをするためには、初動で《閃刀姫-レイ》または"閃刀姫"リンクモンスターに繋げられる《閃刀姫-ロゼ》《閃刀機-ホーネットビット》などを使いたいわけですが、そんな中、一部の【閃刀機】使いがこのような内容を語っています。

曰く「《強欲で貪欲な壺》もこのデッキの初動枠である」と。

デメリットが地味に大きいが2枚ドローは偉大

確かに、今でこそ《閃刀起動-リンケージ》の実装で"閃刀姫"リンクモンスターにアクセスするカードが12枚前後取れるようになりましたが、それ以前は9枚前後(初手にその類のカードを引き込む確率は75%。少なくはないがデッキのキーカード枠としては物足りない)しか採用できなかったため、こういうカードを初動枠と考えるのもあり得る話です。

しかし、もし仮に他の初動要員を引けず、初動で《強欲で貪欲な壺》を使ってキーカードを探しに行く場合、実際にそれらのカードを引き込める確率というのは、いかほどのものでしょうか?
実際に計算してみましたが、そのシチュエーションなら、余りのデッキが34~35枚、手札が5~6枚。
そして、デッキ内のキーカードの枚数が9枚前後なので、2枚引いて、そのドローが上手く行く確率は大体50%ほど。
決して低い確率ではありませんが、安定して引き込めるものでもないですよね。
第一、このカードは《金満で謙虚な壺》のように複数枚見るサーチ行為をせず、そのまま2枚ドローするだけなので、見た目以上に特定のカードを探すのには不向きなのです。
にもかかわらず、このカードを明確な初動枠として計上しているプレイヤーは少なからずいるわけで。
"初動枠"という概念の捉え方が違っていたりもするんでしょうが、少なくとも筆者は、このデッキにおいて「初動枠の《強欲で貪欲な壺》を引き込めたから、この手札は事故っていない」という考え方はナンセンスだと思っています。
異論は認めますが。

では、この手のドローカードはどういう風に計算すればいいのかというと、それはずばり、デッキの総枚数から差し引いてしまうのが一番です。
例えば、数学の問題でこういうのを見たことがありませんか?
「10枚のくじの中から1枚引いて、1枚ある"当たりくじ"を引く確率を求めよ。ただし、くじの中には、引くと追加で1枚引ける"ボーナスくじ"が2枚ある」といった問題。
真面目に考えると"当たりくじ"を引く確率と"ボーナスくじ"を引く確率を考えなければいけなさそうですが、実はこれ、くじの総枚数(今回は10枚)からボーナスくじの枚数(2枚)を予め差し引いておくだけでいいのです。つまり正解は1/8と。
なにせ、引いた時に追加で1枚引けるということは、引いても(くじの総枚数が10枚から9枚に減っていること以外)状況が変化しないため、実質的に"ボーナスくじ"は引いても引かなかった扱いにできるんですよね。
なので、引いた場合がどうこうと考えるより、存在しないものとしてカウントするのが一番手っ取り早いと、そういうことです。
……筆者はあまり数学が得意ではないので、分かりやすく解説できないのが非常にもどかしいですが、まぁ、それはそれとして。

ともあれ、この"ボーナスくじ"が、遊戯王における《成金ゴブリン》や《強欲で貪欲な壺》などのドローソースと非常に近しい性質を持っていると筆者は考えています。
引いた時に1~2枚引けるカードというより、デッキの総枚数を減らす"デッキ圧縮カード"という、そういうイメージですね。

余談ですが、《金満で謙虚な壺》など、複数枚の中から選ぶタイプのドローカード(選択式ドロー)に関しては、この限りではありません。
特に、デッキの上から3枚以上確認して1枚手札に加える系。流石に3枚もデッキを掘れると"当たりくじ"を引き当てる確率にも関わってくるので。
逆に言えば、2枚以下は誤差の範疇ということでもありますが。
《強欲で貪欲な壺》を《成金ゴブリン》の延長線上と捉えているのも、そのためです。

プラマイゼロ、むしろプラス?

さて、ここまで《成金ゴブリン》がいかに"ドローするカード"として頼りないかを語ってきましたが、だったらなぜデッキを43枚にしてまで【ブラック・マジシャン】デッキに《成金ゴブリン》を3枚採用したのか、謎は深まるばかりですよね。
《成金ゴブリン》を"デッキ圧縮カード"というなら、なおさらデッキは40枚にまとめ上げるべきではないのか?
もちろん、基本的にはその通りです。"デッキ圧縮"を目的としてこのカードを採用しているのならね。

しかし、この【ブラック・マジシャン】デッキの《成金ゴブリン》には、単純な"デッキ圧縮"とは別に、もうひとつ重要な役割があるんですよね。
それは、ずばり、

①効果で見たカードは好きな順番でデッキの一番上に置かれる
①効果でブラマジカードをデッキの一番上に置く

これらのトップ操作カードと組み合わせ、状況に合わせて欲しいカードを自在にサーチする"疑似サーチカード"としての役割です。

例えば、《黒の魔導陣》の①効果でデッキの上3枚を確認し、魔導陣では手札に加えられないこのデッキのキーカード《イリュージョン・オブ・カオス》が見えた際に《成金ゴブリン》が手札にあれば、《魔導陣》でそれをデッキの一番上に仕込み《成金ゴブリン》で引き込むことが可能です。

同様に、《魂のしもべ》の①効果で積み込んだブラマジカードを《成金》で引き込むこともできますね。
《しもべ》は②効果のドローに条件があるので初動で使いづらいですが、《成金》と合わせることで大分使いやすいサーチカードに化けます。

要するに、このデッキでは《成金ゴブリン》が他のカードとの組み合わせで強烈なシナジーを発揮するので、《成金ゴブリン》なしの40枚デッキにまとめあげるより《成金ゴブリン》ありの43枚デッキにする方がデッキの回転率は上がるというわけです。
もちろん、これは口で言うほど単純な話ではありません。
後攻の時の初手に手札誘発を引く確率が下がるとか、《成金》を重ね引きした時に相手に与えるライフポイントが多すぎるとか、いろいろな問題を抱えてはいます。
しかし、デッキ構築に対するアプローチのひとつとして、これは"あり"な部類だと判断したので、この形を変える予定は今のところはありません。
今のところはね。

ちなみに、デッキの一番上を操作するカードというのは現代遊戯王のカードプールの中でも比較的珍しい方です。
そのため、これは【ブラック・マジシャン】デッキにだけ起こりうるレアケースなのかと思われるかもしれません。
ただ、実は他にも《成金ゴブリン》でデッキを嵩増しした方が良い(かもしれない)ケースはいくつかあります。

一番分かりやすいのは【エンディミオン】などの"魔力カウンター"を扱うデッキでしょうか。

大体こんな感じのデッキだったはず

魔法カードの使用回数がデッキの動きの中心になっているので、手札消費なしに魔法カードの使用回数を増やせる《成金ゴブリン》はこのデッキにとって、地味に重要な潤滑剤です。
他にも、《魔導書の神判》のために魔法カードを同一ターン中に複数回使いたい【魔導】や、墓地に魔法カードを3枚以上溜め込みたい【閃刀機】なども、この条件に当てはまります。

いずれにしても、何らかの理由で《成金ゴブリン》とデッキのメインギミックがシナジーし、しかしデッキのメインスロットをなかなか空けられない場合、デッキを41枚以上にしてでも《成金ゴブリン》を採用するメリットはあるというわけです。
もちろん、ケースバイケースではありますけども。

40枚デッキに対する誤解

いやいや、それでもデッキは最低枚数にまとめあげるべきだろう。
メインギミックは本当にそれで必要最低限か?手札誘発等を減らす余地があるのではないか?というか《成金ゴブリン》は2枚以下でもいいのでは?
デッキを40枚にきっちりまとめ上げることができなくても、せめて40枚に近づける努力を怠ってはいけないだろう。
そう考える人も少なくないと思います。
この構築に至る前の自分も、同じようなことを考えていました。

しかし、敢えて強い言葉で言いましょう。
「デッキを最小限の枚数でまとめるべき」というのは旧世代のセオリーであると。
……いや、本当に、そこまで大袈裟に言うことでもない気がするんですが、それなりに語気強めに言わないと通じない気がするので。

そんなわけで、デッキを40枚にまとめ上げることを「古い」とまで言い放ったのですが、もちろん、それ相応の理由もいくつかあります。

まず1つ目は、このセオリーが生まれた当時と今とではカードプールに差があるという点。
まず大前提として、この「デッキを最小限の枚数にまとめ上げるべき」という概念は、かなり昔からありました。
出自はおそらくカードゲームの始祖である"MTG(マジック・ザ・ギャザリング)"でしょうね。あちらがかなり早い段階(少なくともプロツアーなどの競技イベントが開催されるようになった90年代後半)でデッキを最小限の枚数に整えるというセオリーを確立していたため、その情報が後世のカードゲームにも知れ渡っていたのだと思います。

しかし、このセオリーが普及していった真の理由は、当時の少ないカードプールでは"ぶん回り"の動きとそうでない時の動きに大きなばらつきがあったからです。
例えば、1996年に"MTG(マジック・ザ・ギャザリング)"の世界選手権で"ネクロの夏"と呼ばれる一強環境を作り出した【ネクロディスク】というデッキは、《ネクロポーテンス》や《トーラックへの賛歌》、《露天鉱床》といった現代でも通用する凶悪強力なカードを多数採用していたことが最大の強みですが、その脇を固めるカードまで強かったのかと問われると、若干疑問が残ります。
初手《暗黒の儀式》絡みでないと若干スペック不足感が否めない《惑乱の死霊》や、膨大なマナが必要になる《生命吸収》など、上記のパワーカードと肩を並べるには実力不足にも思えるカードが、多くの【ネクロディスク】に採用されていました。
そういうカードまで動員しなければ、そもそもデッキを成立させることすらできなかったということですね。
……まぁ、初手《暗黒の儀式》から出てくる《惑乱の死霊》(俗に"A定食"と呼ばれる動き)は十分強かったと思うんですけどね、えぇ。

少々わかりづらい例えだったことも否めませんが、とにかく、昔は今よりも使えるカードが少なかったため、いわゆる"上振れ(ぶん回り)"への期待値を1%でも上げることが、当時の勝率向上の最大の近道だったわけです。

しかし、今は昔とは違います。
カードのバリエーションも増え、"MTG(マジック・ザ・ギャザリング)"の一番使えるカードが少ない"スタンダード"というフォーマットでさえ、多彩で、かつ安定感のあるデッキを組めるのが当たり前になりました。
そしてなにより、遊戯王はMTGとは違います。
土地カードという事故要因をデッキに入れる必要がなく、かつ、大抵のデッキに十二分なサーチカードを用意できるため、無理にデッキを切り詰めずとも、多くのゲームで安定した"ぶん回り"を披露することが可能になっています。
そのため、"ぶん回り"への期待値を数%上げるよりも大事なことがあれば、そちらを優先することもやぶさかではなくなりました。
もちろん、過度に"ぶん回り"の可能性を損なうような構築にはしたくありませんが。

そして、それと関連する40枚否定の理由その2として、その"ぶん回り"の期待値よりも優先すべき事柄が増えたことも挙げられます。
例えば、先の【ブラック・マジシャン】デッキ。

このデッキに採用している《幻想の見習い魔導師》は、このデッキの"ぶん回り"とは全く関係のないカードです。

"ブラマジ"カテゴリ専用の《オネスト》

にもかかわらず、このデッキにこのカードを採用している理由は2つ。

①:このカードが《イリュージョン・オブ・カオス》や《魂のしもべ》などのサーチカードに対応している。
②:このカードを使うことでしか突破できない盤面がある。

①に関してはいまさら言うことでもないかもしれませんが、《幻想の見習い魔導師》の主な使い方は、各種サーチカードで必要になった時のみサーチする(いわゆる"シルバーバレット戦略")ためのものです。
当然、このカードが《イリュージョン・オブ・カオス》などのサーチ対象でなければ1枚も採用しませんし、そこまで多くのゲームで引きたいカードというわけでもないので2枚目以降も採用する意義は薄いです。

そして②ですが、こちらは【ブラック・マジシャン】のデッキ事情と深く関係しています。
まず、この【ブラック・マジシャン】デッキはメインギミックによる相手への妨害を《黒の魔導陣》の除去に依存しています。

②効果を繰り返し使うのがこのデッキの強い動き

そのため、例えば「破壊されない」効果や「破壊された場合~」といった効果を持っているカードに対しては強く出られますが、一方で「効果の対象にならない」系の効果を持つモンスターには手を焼くことが多いです。
例えば、汎用リンク4モンスターの《双穹の騎士 アストラム》など。

《I:P マスカレーナ》を素材とすることで強固な耐性を得られる

こういった効果耐性に対処するため、戦闘破壊を補助する《幻想の見習い魔導師》が必要になるというわけですね。

しかし、先にも述べた通り、《幻想の見習い魔導師》は決して、このデッキの"ぶん回り"に必要なカードではありません。
むしろ、必要のない時に素引きして頭を抱えることもしばしば。
それでも、このカードでしか対応できない状況があることや、サーチカード1枚で出来ることを増やしてくれる可能性から、なんだかんだで《幻想の見習い魔導師》はデッキの(ほぼ)必須枠として確固たる地位を確立しています。

こういうパターンが、自分の"ぶん回り"より相手への"対応力"を求めた典型例のひとつでもあります。
もちろん、自分の"ぶん回り"の確率を最低限確保する必要はありますが、ある一定のラインを超えると、その確率に躍起になるより、もっと他の可能性に目を向ける方が勝率の増加に貢献する場合が増えていきます。
特に、現代遊戯王はどのデッキにもサーチカードが豊富で、最低限の安定感を確保するのは容易いので、サーチカードを絡めた際の手数を増やすのは地味に重要なファクターです。
何事も、最後の一押しに必要なのは"隠し味"ということですね。

そして、40枚デッキを否定する最後にして最大の理由。
それは、そもそもデッキを数枚増やした程度では、たいして確率の変動は起きないという点。
おそらく、これが一番多くのプレイヤーを勘違いさせている部分であり、筆者がいろいろ調べていく中で40枚デッキを諦めた最大の理由でもあります。

例えば、40枚デッキで初動に必要なカードが12枚あるとします。
この場合、40枚の中から5枚引いて12枚採用したカードが1枚以上引ければいいので、それが叶う確率は約85%ほど。
大体これだけの確率があれば、多くのゲームで安定した動きが可能になります。

そして、このデッキに追加でカードを3枚採用し、43枚デッキとした場合。
体感では「3枚もカードを増やしたら初動要員を引く確率はガクンと下がるはず」と思うところです。
しかし、実際はそうではありません。
43枚の中から5枚引いて、12枚採用したカードが1枚以上引ける確率は、なんと約82%
3枚もカードを増やしたのにも関わらず、元の40枚デッキと3%ほどしか違いません。

また、この増やした3枚の中に初動要員としてカウントできるカードが1枚でもあれば、その時点で初動を引ける確率は40枚デッキの時と同様に約85%となるため、差し引き2枚も自由枠を増やせる結果となります。
実際は初動枠のほかに手札誘発などの汎用カード枠もあるので、言うほど好きにカードを増やせるわけではないですが、それでも、そのバランスさえ取れれば、40枚デッキだろうが60枚デッキだろうが、ある程度安定して動けるデッキに出来るというわけですね。

実際、前回の解説記事で紹介した【ブラック・マジシャン】も、40枚デッキの時からメインギミック枠と汎用カード(手札誘発など)枠の比率はそのままにしてあります。

これが40枚の時
増えたのは《成金ゴブリン》《儀式の準備》と汎用カード枠1枚

普段12枚しか採用しない汎用カード枠が13枚になっているのも、そのためです。

要するに、カードを数枚増やした程度でデッキが安定しなくなるなんてことはそうそうないんですよ。
むしろ、十全なメインギミックカードと汎用カードさえ確保できれば、40枚デッキも60枚デッキも大差ないとすらいえます。
当然、それが出来るテーマはそれなりに限られますが、例えば潤沢なサポートカードを持つ【HERO】なんかは60枚デッキにしても十分安定すると聞いたことがあります。本当かどうかは知りませんが。

いずれにせよ、カードプールの増加でデッキの採用圏内に入るカードが昔とは比べ物にならないぐらい多くなり、限界まで"ぶん回り"に固執する必要性も薄くなり、おまけにデッキ枚数を増やしてもたいして安定感を損なうわけではない以上、デッキを最小限の枚数にまとめ上げる意義はもう過去のものと考えても差し支えないと筆者は考えているわけです。
実際問題、《隣の芝刈り》を採用した60枚デッキや、雑に強いカードをかき集めた【60枚グッドスタッフ】デッキなんかもたまに環境で見かけますしね。
60枚デッキの実用性は今更語るまでもないでしょう。

ただし、ここでいくつか注意点があります。
まず1つ目は、当然ですが、デッキ枚数を無理やり膨らませるために弱いカードを採用すれば、それだけデッキのスペックは落ちます。

これは昔、筆者が戯れで組んだ【60枚ブラマジ】ですが、追加の初動枠として《宣告者の神巫》を採用せざるを得なくなり、そのために元々のデッキよりEXデッキが圧迫され、かえってデッキの手数は減っている印象がありますよね。
それ以外にも、細々としたところで安定感を欠くような要素があり、少なくとも、わざわざデッキを60枚に膨らませた意義は薄かったように思います。
これはこれで面白いデッキではあったんですが、少なくとも、純粋に勝ちを望むようなデッキではないですよね。

なので、デッキ枚数を増やしても差し支えないのは、あくまでも採用圏内に入れても差し支えないレベルのカードが余っている場合のみです。
例えば、古いテーマのカードなど、サーチカードの枚数がギリギリというような。そういうデッキは変にデッキ枚数を増やすと事故率の増加に繋がるので、こういう調整があまりオススメできません。

それと、もう1つ。
これは少し話の本題から逸れる内容ですが、デッキ枚数の増加によって引きたいカードを引く確率がたいして減らないということは、逆説的に、引きたくないカードを引いてしまう確率もたいして減らないという点。
これも地味に重要な話です。

昔から、デッキを41枚以上にする人の言い分として「引きたくないカードを引く確率を減らしている」というものがありますが、先に挙げた通り、デッキを数枚増やした程度で引きたくないカードを引かなくなるわけではありません。
例えば、先の【ブラック・マジシャン】デッキでは《ブラック・マジシャン・ガール》をあまり素引きしたくありませんが、これを初手で引いてしまう確率は40枚デッキの時で約13%
それに対して、43枚デッキの時の確率はというと、約12%
四捨五入した分を含めても、およそ1~2%しか違いません。
また、これが50枚デッキになった場合でも、その確率は約10%なので、結局ほぼ誤差みたいなもの。
60枚デッキになれば8%にまで落ち込むので、流石にここまでくればいくらか効果は出てきますが、それでも、たった5%のためにデッキを20枚も増やすのは流石に不合理ですよね。

実際はもっと状況に合わせた計算が必要になりますし、これはあくまでもシンプルな一例として挙げただけですが、いずれにしても、デッキを数枚増やした程度で引きたくないカードを引かなくなるというわけではないことだけ頭に入れておいた方が良いと思います。
このへん勘違いしている人、結構いそうなので。

結局デッキは40枚にするべきか?

では、今回の結論。
まず大前提として、デッキをデッキとしてまとめ上げることは、カードゲームにおいて非常に重要なファクターです。
デッキのメインコンセプトを見失わず、多くのゲームで自分のやりたい動きをきちんと実現できるよう、カードの枚数配分に最大限気を遣う。
これがデッキ構築で一番重要と言っても差し支えないぐらい、デッキのバランスというのは大事なことです。

しかし、今時は"デッキをまとめ上げる=デッキを40枚にする"がイコールで繋がらなくなっているとも思います。
カードプールの増加(特にサーチカードの増加によって"ぶん回り"の再現度が高くなっている点)やカードパワーの総合的なインフレ、メタゲームの多様化など、現代遊戯王は昔よりも遥かに一筋縄ではいかないゲームとなっています。
そのため、デッキを最低限の枚数に無理やりまとめ上げるより、ほんの少しだけ羽根を伸ばして、デッキの手数を増やす方が結果的に良い選択になりやすいと、そう感じる場面も増えてきました。

もちろん、繰り返しにはなりますが、デッキを最小限の枚数に抑え込むこともある程度は必要です。
デッキコンセプトを明確に定め、無駄な要素を出来るだけ削ぎ落とす。そういう"意思のある調整"の下でしか、本当に良いデッキというのは完成しません。
しかし、デッキが41枚以上に膨らんでいるにもかかわらず、それら全てにきちんとした役割がある場合、それを無理に削り落とす必要性は薄くなっているのかなーとも思います。
流石に50枚近くもあったら削ぎ落としの必要も出てくるでしょうが、45枚ぐらいならそのままにしておく選択肢もあるやもしれません。
そのまま実践に持ち込んで調整するという手もありますしね。

なので、昔ほどデッキ枚数に躍起になる必要はないのかなーと、そんな風に思うわけです。えぇ。
……なんか、若干緩い結論な気もしますが、あまり強く断言できることでもありませんし、こういう落としどころが一番かなーと。

まとめ

いかがだったでしょうか。
前回のブラマジ解説記事でもちらっと触れましたが、今回のこの内容は、かつてその記事で触れようとして、あまりの長さにお蔵入りになったものです。
そのせいか、今回の記事は今までで一二を争うほど執筆に時間がかかりましたが、まぁ、それなりの内容にはなったかなーと思います。
もっと簡素にまとめ上げられなかったのかと思わなくはないんですが、まぁ、あまり時間をかけすぎてもモチベーションが持たなくなるだけなのでね。
このへんで勘弁してください。
それでは、また。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?