VCE科目の選び方 教育@オーストラリア

日本の教育とオーストラリアの教育の大きな違いは、大学受験コースで英語以外全ての履修科目を選べることだ(10年生までは必須4科目English, Maths, Science, Humanities+選択2科目など、※学校によって異なる)。大学受験システムも全く違う。
日本の大学受験では、志望大学が作った試験を個々に受けるが、オーストラリアでは大学受験コース(ビクトリア州で言えばVCE)で学び、統一試験を受け、そして得たスコアによって、進路先が決まる。スコアが分かってから志望校の登録も変更できるため、進学先がないということはない(浪人という概念がない)。
※VCEの詳細は別の投稿をご参照ください。
VCEについて 教育@オーストラリア|Sunny|note

科目を自由に選べることはとても良いことだが、その選び方も重要になるので、長年留学生アドバイザーをした経験と、我が子の子育ての経験から感じたVCE科目の選び方のポイントや注意点をご紹介する。現地進学する場合(高得点を狙う方)と、日本の大学に進学する場合(特に英語力が不十分な留学生)では選び方のポイントが若干異なる。
※あくまでも、私個人の意見として捉えていただきたい。

【現地の大学に進学する場合】※高得点を取りたい方向け
①大学の志望コースのEssential Requirementsに合った科目を選ぶ

コースによっては、履修していなければいけない科目がある。
例えば、メルボルン大学の医学部では、Chemistry(化学)とMaths MethodsまたはSpecialist Mathsを履修していないとApplyできない。
※以下、抜粋
Compulsory: Units 3 and 4: a study score of at least 30 in English (EAL) or at least 25 in English other than EAL; Units 3 and 4: a study score of at least 25 in Chemistry; Units 3 and 4: a study score of at least 25 in one of Maths: Mathematical Methods or Maths: Specialist Mathematics.

つまり、進路を決めるYear12になってこのコースに行きたいなぁと思っても、指定されている科目を履修していなければApplyができない。特に化学やMaths MethodsやSpecialist Mathsは、大抵の学校でUnit3/4からの履修が認められない難しい科目なので、VCE科目を決める10年生の段階で興味のあるコースのRequirementsを調べて、11年生(早期履修する場合は10年生から)からその科目を取っておく必要はある。

※以下のVTACのHPでFind Coursesで検索すると、各大学のコースで定められているRequirementsも掲載されている。本も毎年出版される。
VTAC Home - VTAC

※Maths MethodsはRequirementsに入っているところが比較的多い科目なので、志望コースを決められない人はとりあえず履修しておくことをお勧めする。

②Scale upされる科目を選ぶ
科目の難易度によってStudy Scoreの調整が行われるため、ATAR Scoreで高得点を狙うなら、VCE科目の中で難しいとされるScale up(加点)される科目(言語科目、Specialist Maths、Maths Methods、Chemistry、Physicsなど)を取ると良い。(逆にScale Downされる科目もある)
※当然のことながら、苦手なのに難しい科目を履修することはお勧めしない。非常に低い点数しか取れないなら、Scale upされるからという理由だけで選ぶことは逆効果である。ましてや、単位を落としてしまったら意味がない。つまり、Scale downされる科目でも、高得点を狙えるならそちらの方が良いということだ。

③高得点を狙える得意な科目、学んでいて楽しい好きな科目を選ぶ
学んでいて楽しくない科目より、当然好きな科目を履修した方が高得点を取りやすい。得意な科目も当然点数は取りやすいと思う。例えば、数学が得意な人は、数学の科目が3科目あるから、3科目全て履修すると、英語と数学3科目で高得点が狙える。
※この例で言うと、数学ばかりやる羽目になるから、そこまで好きでなければお勧めはしない。あくまでも「高得点を狙う」という目的を達成するための科目の選び方と捉えてほしい。

④大学で進みたい希望のコースに合った科目を選ぶ
制度的には、日本のように理系だったら数学と理科の科目を履修していないと出願できない、などという決まりはない。つまり、たとえば大学でChemistryを専門的に学びたいと思っていても、高校でChemistryを履修しないといけないと決まりはない。ある大学で化学のコースで教鞭をとっていた方が、高校で化学を履修していた人としていない人の学力差が激しく、教えるのが大変だとおっしゃっていた。当然、基礎知識がないまま大学で学んでも、単位を落としてしまう可能性だって高くなる。将来学びたいことに関連する科目は高校で履修しているに越したことはない。

【日本の大学に進学希望の留学生の場合】
高校留学している方で、日本の大学に進学を希望する場合は、ご自身の英語力を加味して科目を選択することをお勧めする。以下は、あまり英語力が高くない方向けと捉えてほしい。
①確実に単位を取得できる科目を履修する
留学生の最大の目標は、単位を確実に取って、卒業することである。
当たり前のようだが、留学生の場合は、言語の壁によって授業内容を理解することに苦労し、単位を落としてしまう人が少なくない。
日本のように、試験で赤点を取ったら追試だが、合格させるための簡単な追試ではないため、追試で合格点が達しなければ、明日から授業に来なくていいよと言われてしまう。結構厳しい(しかし、厳しさは学校と先生による。だから学校選びは非常に大事。これについては、いつか別途説明したい)。
特に、日本人は英語を書くこと(エッセーライティング)に慣れていないため、記述形式(特にエッセー形式)での回答を求められる科目は、英語力が低めの方にはお勧めしない。 多少学術的専門用語がわからなくても、学んでいる内容がイメージできる科目なら良いが、心理学など、これまで学んだことがなく、日本語でもない基礎知識がない科目の場合、面白そうだからと興味本位で履修すると、授業内容を理解するのに苦労し、テストで解答するのに苦労し、大変な目に遭うから注意が必要だ。

②簡単な科目(少しでも好成績を取れそうな科目)を選ぶ
日本の大学受験では、現地の高校での成績も多少は見られる(もちろん、大学により、あまり成績を見られない大学もあるが、国立大学や慶應大学等は確実に成績を見られている)。その科目が難しいかどうかは、大学側はわからないのだから、比較的簡単な科目を履修して、好成績を狙うのは得策である。
例えば、数学には
Specialist Maths
Maths Methods
Further Maths(Unit1/2はGeneral Maths)
の3科目があって、Specialist Mathsが一番難しいとされているが、頑張ってSpecialist Mathsを履修したところで、それ自体は評価されないわけだ。
Specialist MathsでDの成績を取るくらいなら、Further MathsでAやBを取る方が、大学受験では好印象だということだ。

③グループワークの多い科目は要注意
これは生徒の性格と環境(同じ科目を履修する仲間や先生)による。誰とでも仲良くなれるタイプの人はグループワークの多い科目は、仲間に助けてもらえるので、非常に良い。しかし、逆に英語ができないからと黙ってしまうタイプやグループで取り組むのが苦手なタイプは、グループワークの多い科目(例えばメディアや演劇など)は非常に苦労する。孤立していると、それだけで成績にも大きく響く。一人でじっくり取り組む方が好きなタイプは、多少難しくても数学や化学、生物などの理系科目を選び、頑張って勉強した方が良い(理科科目は実験はグループでやることがあるが、グループワークがメインではない)。
※メディアはグループで動画制作等を行うので、グループワークが非常に多い。

④芸術系科目は要注意
アート系だと簡単だと思いがちだが、侮ってはいけない。なぜなら実技だけでなく必ず理論があるからだ。たとえば、運動が好きだからという理由だけでPhysical Educationを履修すると、体の部位(体の部医は単語が長くて覚えるのが大変だ)を全て覚えなくてはいけないし、トレーニングプランを自分で考える、などという単元もある。
ダンスが好きだからと言ってダンスを履修すれば、歴史から表現の理論まで学ぶため、「こんなはずじゃなかった」と途中で止める人も多い科目の一つだ。音楽やStudio Artも同様。Visual Communication & Designは理論に加え、提出しなければいけないデザイン案の数が半端なく(特にUnit3/4)、受験勉強との両立が非常に大変である。
各科目それぞれ大変さがあるので、芸術系科目は「好き」だけで安易に選ばず、じっくり科目概要を読んで、本当に自分ができるか見極めた方が良い。

⑤自分が進みたい大学の学部・学科に合った科目を選ぶ
自由に科目を選べる利点を生かし、志望大学の学部・学科に合った科目を選んでおくと、大学受験の書類や面接でアピールしやすい。
特に高校時代にアピールすることがない人は、勉強面でアピールできると良い。例えば、経営学部に進みたい人がAccountingを学んだり、経営学部に学びたい人がEconomicsを学び、それに加えて何か体験を加えられると話が膨らむ。以前だとVET科目が選択できたので、ホテル業界に興味がある人が学外でやHospitalityを学んだり、車に興味がある人がAutomotiveを学んだりでき、その経験を志望理由書等に書いてアピールする人もいた。残念ながら、現在留学生はVET科目を履修できないので、学内で履修できる科目のうち、自分の興味のある分野を履修してアピールに繋げるのもアリだ。

⑥実技やOralの試験がない科目を選ぶ
現役で日本の大学に進学したいと考えている人は、実技試験(演劇や音楽など)やOral exam(言語科目)がない科目を選んだ方が良い(ただし、Japanese as First Languageに関しては、前倒しでYear11に履修した方が良い)。実技試験やOral Examは例年、10月上旬に実施され、日本の大学受験期と被っている(※志望校による)。日本の大学の例年の試験日が10月にある大学を志望している場合は、実技試験やOral Examがない科目を選ぼう。

オーストラリアは、現地校の大変な時期(Final Examの直前)と受験シーズンが被る上に、既に卒業して受験勉強に専念している北半球組と対等に戦わなくてはいけない、という非常に不利な状況にある。志望校に合わせて、履修科目を吟味して慎重に決める方が良い。

一度希望科目を出した後に科目変更も可能だが、時間割の関係上、変更できない可能性もあるので、最初の希望提出の際にしっかり吟味して希望科目を決めることは非常に重要である。現地校では、科目決めの面談があるはずだから、学校の先生にわからないことは面談時にしっかり質問しよう。

【参考資料】
VCE科目のStudy Designs
Pages - VCE Study Designs (vcaa.vic.edu.au)

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