巨人の肩の上に立つボードゲームデザイン考察vol.4「奉行問題とその解決方法」
今日もやっていきましょう。
Sunnyです。
今日はAdvent Calendarじゃなくて、とあるツイートについて考えてみます。
Q「巨人の肩の上に立つボードゲーむデザイン考察とは?」
2014年12月から毎年12月に行われている、I was gameさんの企画であるAdvent Calendarを読み進めながら考察を進めていくコラムです。他にも参考になるものを読みながらまとめていきます
奉行問題とは
狂人にょっきさんのブログより引用します。
奉行というのを
特定のプレイヤー(たち)が
その他のプレイヤーに対し
考える余地を与えずに
次にやることを指示あるいは命令する
と定義し、そこから奉行問題を
特定のプレイヤー(たち)がその他のプレイヤーに対して半ば強制的に行動を指示することによる、その他プレイヤーの気分、感情の阻害、ゲームに対する達成感の喪失、特定のプレイヤーへの不満を煽る問題
と定義しています。
おおむね私も同様に考えています。
特にこの奉行問題は、「協力ゲーム」というジャンルで発生している認識です。
なぜなら、プレイヤーVSプレイヤーの場合は、勝ちというゴール(目標)が個人で設定されていますが、協力ゲームの多くは勝ちがゲーム全体で設定されているからです。(●●を倒したら勝ち、●●以上を獲得したら勝ち、みたいな)
この記事では、「協力ゲームにおける奉行問題」を取り扱います。
何が問題か
じゃあ、この奉行問題がどういう問題かというと、翻訳記事から引用します
これはムカつくし、イライラする。欲求不満と怒りを感じるし、楽しくとも何ともない。終わった後、もう二度とジョンと遊ぼうと思わないだろし、このゲームで遊ぼうとも思わない。そして、協力型ゲームも金輪際お断りだと思うだろう。
つまり、奉行問題の本質は「プレイヤーが自ら選んだという感覚」が減ることにあると思います。(実際に選んだかどうかはさておきます、選んだ!という感覚が得られることが大事。)
別の記事で僕はそれをナラティブ性だと書きました。
①ユーザーが選べる要素
②ユーザーの選択に応じて結果が変わること
③結果によって自分が選んだんだという感覚を得られること
これがゲームにおける面白さだと思っていて、奉行問題はそれを壊してしまう。
勝ちを目指すんなら、確かに、自分よりいい答え(選択肢)を出す人に従うのがいいのかもしれません。
でも、そこに面白さがあるのか?従う側はそれでいいのか?奉行する側もそれでいいのか?と僕は思ってしまいます。
(まぁ、奉行側は気持ち良いかもしれません)
ある程度ボドゲをやっている人でも、この奉行問題があることを考えると、初心者がやる時も特に問題になりそうです。だって、面白さが減っているから。
解決方法
そこで、色んな人がその奉行問題を減らすように協力ゲームを作っています。
①裏切り
②ディスコミュニケーション
③隠匿情報
④情報過多
この4つについては、すごく納得がいくジャンルだったので、ここについて考えてみます。
HANABI
ドイツ年間ボードゲーム大賞2013を受賞した作品。自分だけが自分のカードを見ることができずに、色か数字のヒントのみを伝えながら場に揃えていく協力ゲーム
https://bodoge.hoobby.net/market/items/208
このゲームは、②ディスコミュニケーションと③隠匿情報というジャンルになりますね。「ヒントを喋っちゃいけない」「ヒントが全て見えているわけじゃない」というのがミソです。
ザ・クルー
ドイツ年間エキスパートゲーム大賞2020を受賞した作品。トリックテイキングのゲームで、プレイヤーに設定された集めなきゃいけないカードを、会話無しに集めていく協力ゲーム。
https://bodoge.hoobby.net/market/items/3474
これも、HANABIと同様に②ディスコミュニケーションと③隠匿情報というジャンルになりますね。
HANABIとザクルーは奉行問題を解決していますが、察するということを大きく要求するので、すごく抽象的な概念で(ハイコンテクストで)奉行してくるプレイヤーも居そうなのが難しいところ。
狂気山脈
カードを出していきながらミッションをこなして山頂を目指して狂気山脈を登頂する協力ゲーム。
https://bodoge.hoobby.net/market/items/660
このゲームは、②ディスコミュニケーションと③隠匿情報と④情報過多というジャンルになります。
このディスコミュニケーションは、会話困難というディスコミュニケーションでありながら、時間制限もあるため制約上の会話困難であり、かつその時間内での情報過多が大きく面白さに寄与しています。
ディスコミュニケーションも、会話してはいけない、という縛りではなく、「●●と言ってはいけない」「後ろを向かなきゃいけない」など限定的な縛りなので、プレイヤーの試行錯誤が出来うるとこがポイントです。
また、このゲームはそのディスコミュニケーションが面白い、という登頂すること以外の面白さをゲームに持ってきているのも大きいです。
奉行問題が起こる前に、面白さを提供している形です。
ボルカルス
2019年発売。怪獣プレイヤー1人と人間チーム1〜3人による対戦&協力ゲームで、東京を攻める怪獣と東京を守る人間のせめぎ合いが特徴のゲーム。
https://bodoge.hoobby.net/market/items/2533
このゲームは、②ディスコミュニケーションというジャンルになります。
これは、ディスコミュニケーションの中の「時間制限」というジャンルで、自分の陣営のアクションを決めるときに時間制限があります。
そのため、勝つための方法を模索している間に(議論している間に)時間が尽きてしまいます。かつ、時間を過ぎたら相手陣営がランダムに決めることが出来るので、焦りも生じます。
これは奉行問題の強い解決方法で、奉行が生じても(時間制限のため)奉行が活躍しなければいい、という考え方だと思います。
TWO ROOMS
2020ゲームマーケット秋にて販売。2人専用の協力ゲームで、相手手番に目を閉じて、アクションを行っていくゲーム
https://bodoge.hoobby.net/games/two-rooms
最近出たゲームですが、奉行問題を視覚制限という点で解決しているんがポイント。実際にやったことがありますが、HANABIなどを違って察することを大きく要求されない(感じることが出来ない)のがすごく良かったです。
そして、その視覚を制限するというゲームシステムと、その表現としてパッケージデザインに落とし込んでいるところが本当に素晴らしい。
無駄なコンポーネントが一切存在せず、UIとして落とし込んでいる。
こういう点では、五感制限というのは何かしらの光がありそうです。
まとめ
というわけで、ゲームを紹介しながら奉行問題を解決する手法を見ていきました。
❶奉行問題は昔から議論されてきており、そのたびに色んな解決方法でボードゲームは作られてきている。
❷奉行問題の問題点は、ゲームの面白さ(プレイヤーの選択感=ナラティブ性)が喪失してしまうところ。
❸奉行問題の解決方法は大きく4つのジャンルに分かれており、「①裏切り/②ディスコミュニケーション/③隠匿情報/④情報過多」がある
❹今後の奉行問題のポイントは五感のいずれかを制限していく(口と目以外にも、耳や手など?)流れが生まれるのではないか
奉行問題は個人的にも結構苦手なので、色々模索していきたいです。
今後は❹の新しい制限を考えていきたいです。
Q「この記事を書いた人はだれ?」
2018年1月頃からボードゲーム製作を行っているひよっこボードゲームデザイナーです。代表作は「Wacryll」「鍋代官」です。色んな所にひたすら疑問を投げかけていたら、noteのフォロワーが増えました。よろしくお願いいたします。
札幌出身、福岡育ち、東京住みのSunnyと申します。 働きながらボードゲームデザインをしています。いただいたご支援は、ボードゲームデザインに使わせていただきます。