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Sam's #1

───チリンチリーン
さおん家のドアに掛かっている風鈴?のようなものが音をたててふわりと揺れた。どうやら、お客さんが来たようだ。


「おじゃましまーす」
台所で料理中のさおは、手が離せないので、台所から大声で返事をした。
「どうぞぉーー」
お客さんは、それを聞くと、靴を脱いで玄関に上がった。靴をきちんと整えている。育ちがいいようだ。そして彼女は、ドアを開けたまま、外に向かって大声で呼んだ。
「みかー!」
みかと呼ばれるその少女は、声を聞いて一目散に駆けてきた。そして玄関に上がると、同じように靴を揃えた。2人は洗面所に向かうと、丁寧に手を洗った。そしてリビングに向かった。
「あ、あのぉ…」
少女は小さい声で話しかけた。しかし、さおは料理中で炒め物を作っていたので、少女の小さな声は届かなかった。その様子を見ていたみかは、大きな声で、
「すいませーん」
と言った。すると今度はさおも聞こえたようで、
「はーい」
と返事をした。そして、
「今手ェ塞がってるからソファー座ってて」
と続けた。2人は大人しくソファーに座った。初めての体験で、緊張しているようだった。


さおが作っていたのはオムライスだった。若干焦げ目のついた、出来たてホヤホヤのオムライスだ。
ドンッ
さおは、でっかいケチャップを机に置いた。
「かける?」
「はい、少し…」
少女は、まだ緊張が抜けていないようだった。それに対してみかは、ことわりもなしにケチャップをかけている。まあ、そこが子供らしくていいと言えばいいのだけど。
「フーッ、フーッ」
3人は、アッツアツのオムライスを冷ましている。
「みぞれちゃんだよね。何で来たの?」
「えっと…電車です」
「電車!?電車だけで来たの?」
「はい、あとは歩きました」
さおん家の近くは駅が無く、最寄りの駅からはバスか車で行くくらい遠い。その距離を、歩いて来たというわけだ。
「それは疲れたね…リビングで休んでな」
「はい!ありがとうございます!」
「あと、タメ口で良いからさ」
「はい…あ、うん…!」
2人はリビングで休憩した。そしてそのまま、うとうと…。さおは、2人にそっとブランケットをかけた。
ドッと疲れが出たのだろう、2人は朝まで起きなかった。さおは風呂に入り、自分の机で仕事を始めた。0時を回り、さおはあくびをこぼした。(そろそろ寝ようかな…)さおは布団に横になった。すると間もなく、ぐっすり眠ってしまった───Sam's#2に続く

                              


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