スニフ村的歌詞がすごい曲その12"寝癖"
感情は髪に出る
どうもスニフ村です。
ここ最近noteを書いていて1番と言ってもいいくらい嬉しいことがありまして、私の書いたnoteが巡り巡ってアーティストさん本人の目に届いて直接リプをもらうなんてことが起きました。
めちゃくちゃ驚きましたし嬉しかったです。
これからもチマチマnoteを頑張ろうかなと思った出来事でした。
さて、今回は逆になぜこのアーティストを今まで紹介しなかったんだろう…?って思わず感じてしまった言葉遊びの天才の楽曲でやっていきます。
さあ音楽を聴こう。
やっていきます。
クリープハイプ「寝癖」
【曲全体を聴いての感想】
僕がこの曲の魅力に気づいたのは数年前に開催されていた「クリープハイプのすべ展〜歌詞貸して、可視化して〜」の展示を見た時でした。
今回のアイコン写真にもなっているこの展示の素晴らしさが、寝癖という曲をしっかりと聴くきっかけになりました。
そして曲から、展示以上の魅力を感じたことを覚えています。
それ以来僕のクリープハイプで1番好きな楽曲になっています。
人の心情や感覚を比喩にすることに長けている尾崎世界観の真髄が遺憾なく発揮されているこの楽曲。
人々が口々に「天才」と呼ぶ尾崎世界観。
何が彼の魅力で、何が彼の凄さなのか。
彼にしかできない比喩に着目しながら紐解いていければと思います。
【あたしの気持ち】
「君が嘘をつく次の日は 決まって変な寝癖が 無造作なんて都合の良い言葉では誤魔化せないくらい凄いのが あたしはいつでもそれに気づいてないふりをして 癖っ毛で情けない 言うこと聞かない自分の 気持ちを誤魔化す もうこれでやめようかな もうこれで決めようかな 切ってもすぐに伸びてくるこの気持ちは 嫌になるくらい真っ直ぐで」
ここの歌詞は彼女側の視点だと僕は解釈しています。
いきなりなんですが、尾崎世界観はこの曲で、カップルのお互いの心情や動きを髪で例えます。
まずここがおかしい。
普通に考えて、そんな発想は出てきません。
何か思いつくきっかけでもあったのであれば教えて欲しいくらいの発想力です。
取り乱しました。
彼女側から見て、彼氏が嘘をつく次の日は決まって変な寝癖がつく。
自然にできたようなものではないくらいの寝癖が。
おそらくここでの「髪」は、彼氏の行動を例えているんだと思います。
人が嘘をつく時に癖があるように、不自然なほどの癖が彼につく。
「寝癖」なのが良いですよね。
朝帰りした日に不自然な態度で「友達とカラオケでオールしてた」なんて言って実は別の女性と寝ていた。
その時にできた寝癖。
なんて捉え方ができます。
そしてそれに彼女は気づいていながらも、自分の気持ちを誤魔化す。
そのキッパリと言えない彼女の気持ちが、癖っ毛として現れている。
うねっていて、いくら櫛で溶かしても言う事を聞かない。
そんなうねってモヤモヤした気持ちを誤魔化す。
だからもうやめようかな。
気づいてないフリをして自分に嘘をつくのはやめようかな。
彼氏のことを諦めようと切っても生えてくるこの気持ちは、嫌になるくらい真っ直ぐで。
もう、どうしようない彼氏への愛すら感じます。
もしかしたら、愛ではなくて依存なのかもしれません。
恋は盲目とよく言いますが、自分の気持ちを誤魔化してまで、付き合う相手が、本当に自分を幸せにしてくれるのかは、僕の年齢ではまだわかりません。
だからきっとみんな悩むんだろうなと思います。
そんな彼女の葛藤が見え隠れするこの歌詞。
その全てを髪の毛を使って表現できることが、正直僕は驚きでした。
サビへ続きます。
「君の髪が白くなっても そばにいたいと思ってるよ あたし髪が白くなるくらい ずっとそばにいたいよ」
言葉数は少なくても、彼女の気持ちが一気にストレートに入ってきます。
ここでも素晴らしいのが髪の毛を2人の時間に例えること。
君の髪が白くなるということは、年老いてもそばにいたいということ。
あたしの髪が白くなるくらいずっとそばにいたい。
老後も2人で過ごしたい。
そんな彼女の気持ち。
ただ、この「あたし髪が白くなるくらい」という部分。
果たしてあたしが年老いても一緒にいたいという意味だけなのでしょうか。
もう1つ、このフレーズの解釈が僕は浮かびました。
彼氏の寝癖に気づいていないフリをして、自分を気持ちを誤魔化すことは、非常にストレスが溜まると思います。
ストレスが溜まった時に髪に生じること。
そう。
髪が白くなるんです。
もしかしたら、「あたしは髪が白くなるくらいあなたからストレスを感じても、それでもずっと一緒にいたいんだよ」という彼女の決意もこのフレーズには含まれているのかもしれません。
【僕の気持ち】
「気づいてないふりの君に 気づいてないふりをして そっけない態度で 言ってしまいそうな本当の 気持ちを誤魔化す もうこれで決めようかな もうこれでやめようかな 切ってもすぐに伸びてくるこの気持ちは 嫌になるくらい曲がってて」
こちらは彼氏側の視点だと僕は解釈しています。
自分の寝癖に気づいてないふりをしている彼女に気づいていないふりをして、突き放すように本音を言ってしまいそうな気持ちを誤魔化す。
もしかしたらこの彼氏は、彼女に気づいて欲しいのかもしれません。
「君にもう気持ちはないよ。」と。
だからわかりやすく不自然な寝癖をつけて、彼女から突き放されるのを待っている。
そうでもしないと、彼女を突き放して、傷つけてしまいそうだから。
とことんダメな男ですね。
多分この彼氏は、こう言った行動が1番彼女を傷つけていることに気づいていないんだと思います。
だから彼女に気づいてもらおうと、態度や行動で示して、自分の気持ちを蓋をする。
でもそんなことをしても彼女は気づかないふりをして、自分を許してしまう。
だから堪忍袋の尾が切れて、もうここで言って終わらせてしまおうかな。
それとも、もう一度彼女を愛してみようかな。
そうやって考えても生まれてくる僕の気持ちは、ひん曲がっていて不誠実。
だからまた寝癖がついてしまう。
そしてまたサビへ続きます。
「君の髪が白くなれば その気持ちも変わってるかな 君の髪が乾くまでは ここにいると思うよ」
ここも髪の毛を使って時間を表現しているのですが、彼氏は髪が白くなるくらい時間が経てば気持ちも変わるかな。
でも少なくとも、今ドライヤーをしている君の髪が乾くまでは、ここにいるんじゃないかな。
これも、「髪の毛」を「気持ち」に置き換えると、「君の僕への気持ちが乾くまではここにいると思うよ。」となるんですね。
つまり、彼氏は彼女にフラれたかったんだと僕は思います。
もう僕の髪の毛(君への気持ち)は乾いているから、君の髪の毛(僕への気持ち)が乾くのを待っているよ。
そんなメッセージなんじゃないでしょうか。
本当に言葉の使い方が巧みで考えることが楽しいです。
そして、彼女側の視点の時のサビで僕が提示した2つ目の解釈。
実はこれが彼氏側の視点のサビでも当てはまります。
最初の「君の髪が白くなれば その気持ちも変わってるかな」というフレーズ。
これももしかしたら、ストレスで髪の毛が白くなることを表していて、「僕によるストレスで君の髪が白くなったら、もう僕とは続かないことに気づいてくれるかな?」という彼氏による最悪すぎるメッセージも含まれているのかもしれません。
ただ、この場合彼氏は一貫してフラれようとしているところから、本気で彼女を嫌いになったわけではないことが汲み取れるので、一概に悪い奴とは言えないなと思います。
正直同じ男として気持ちはわかります。
ただやってることは最悪ですけどね。
【2人のその後】
「いつも同じシャンプーの匂い いつも同じリンスの匂いで ずっと一緒にいたいって 思ってたよ ドライヤーの音が消える 新しい君の髪型は もう全然似合ってなくて こんなことになるなら 寝癖のままでよかった」
ここでまた彼女側の視点に戻っていると思います。
一緒の家で過ごして、一緒のシャンプー・リンスで髪を洗って、同じ匂いでいれると思ってた。
だけどドライヤーの音が消えて、私の髪は乾いてしまった。
このドライヤーを止めたのは果たしてどちらなんでしょうか。
正直、僕にはわからなかったです。
こういった含みを持たせて、聴き手に考えさせることが尾崎世界観は本当に巧みだと思います。
ただ、この次の歌詞を聴いて僕はドライヤーを止めたのがどちらなのか分かった気がしました。
ドライヤーの音が消えて、彼はまた別の誰かと付き合うようになった。
そんな次の相手は彼氏に全然合ってなくて、こんな思いするなら、寝癖を見逃していればよかった。
そう。
おそらくドライヤーを止めたのは彼女だったんです。
だから「寝癖のままでよかった」
そしてまたサビへ
「君の髪が白くなってもそばにいたいと思ってるよ あたし髪が白くなるまで ずっとそばにいたいよ ずっとここにいてね」
これはもう、寝癖をつけていた彼氏へ向けた言葉ではないんじゃないかと僕は思っています。
また新しい彼氏ができて、その彼氏へ向けた言葉だと僕は解釈しています。
でもやっぱり学ばないのは、彼女は誰かに依存してしまうところ。
ただ、ここでの髪が白くなることは、時間の経過で年老いて白髪になっていくことを表していると思います。
前の彼氏みたいに、どこかへ行って変な寝癖はつけないでね。
あたしは年老いてもあなたと一緒にいたいよ。
ずっとここにいてね。
そんな彼女の気持ちは、新しい彼へ届いているのでしょうか。
どんな相手であれ、相手を真っ直ぐ愛するその髪型は、変わらないでいてほしいです。
【最後に】
いかがだったでしょうか。
正直クリープハイプの楽曲でこのnoteを書きたいと思った時は、「寝癖」だけはやめようと思っていました。
この楽曲の比喩の幅広さはもうすでに様々なところで噛み砕かれていて、今更自分が噛み砕いても面白くないと思っていたからです。
ただ、やはり曲を聴くとこの歌詞の凄さをアウトプットしたい。
1番好きな楽曲だからこそ、いくら噛み砕かれていても、自分なりに噛み砕きたいと思い、今に至ります。
ある程度の解釈が出きっている中で、僕独特の解釈はなかったかもしれませんが、自分の言葉で、自分の好きなアーティストの1番好きな楽曲について形として残せてよかったなと今は思います。
このnoteを書いていると、歌詞の中の人物への感情移入が物凄くて、改めて尾崎世界観の偉大さを感じました。
彼は天才だと再確認させられました。
【次回作】
次回も全く決まっておりません!
毎回曲選びに時間がかかって書く時間が取れないので、いい加減楽曲を決める納期とか決めようかなと思っています。
正直本当に次はどうしようとか全く考えていないので、逆に自分が楽しみです。
まあ誰も待っていないでしょうがお楽しみに。
それでは皆さん良い音楽を。
スニフ村