魔女にすすめられた林檎を私は食べない。
対人関係は会った回数が多いほど良好になるという認知心理学で有名な話があります。
これは匂いや音楽についても言うことができ、何度も繰り返し嗅いだり聴いたりしていると潜在記憶が作られ、印象評価が錯覚として植えつくことが要因とされています。
1968年に米国心理学者ロバート・ザイアンス氏が発表した論文によって広く知られるようになった「単純接触効果」というものです。
会うほどに好感度が高まる事象の逆を言えば、会ったことの無いひとは特別な付加価値でも無いかぎり好感度は無に等しいです。
そこで、ひとに会った回数を大きく3つに分類してみました。
・何度も会ったことのあるひと→友人
・一度会ったことのあるひと→知人
・会ったことのないひと→他人
例えばあなたが恋の悩みを抱えた1日を過ごすとします。
友人とのランチで「いいじゃん」と言われ、ディナーの会食の話題では「やめときなよ」と言われ、帰宅後のTwitterではフォロワーに「やめなよ」と言われます。
この場合、最も採用率の高い意見は単純接触効果に基づくと、最も会っている回数の多い友人の言葉です。
悩みを抱えた本人がどのような性格であるかに対して理解が深いことももちろんですが、薄い関係の友人だとしても会った回数の多さから心理的に好感度が高く、意見の信憑性に繋がっているのです。
Twitterに投稿した恋の悩みは、ネットにしか友人がいないでもない限りリアルで得た感情の吐きだめの場です。
閲覧者は意見の場を与えられながらも、検討素材にもされないというちょっぴり可哀想な現実でもあります。
要するに、他人の意見はとても受け入れられにくいです。
手ぶらで意見をして、受け入れられる理由がまず無いのです。
さらに、ネットの記事や動画の情報は会ったこともない人の意見どころか性別も年齢も不詳の人がスピーカーとなっているので、とても信憑性に足りません。
なので、文章の書き方や、話し方でよく用いられる構成として、前半で「権威性」を示すというテクニックがあります。
要するに、「"だれが"○○を勧めているか」
そのポジショニングを言います。
これは、性別を明らかにするだけでも、意見や情報の信憑性が全く異なります。
バストアップのコツは男性が語るより女性が語っていたほうが伝わり、
ムキムキになるためのプロテイン情報は男性が語るほうが伝わるでしょう。
また、そこに経験が伴っていると権威性が強くなります。
「6ヵ月で2カップ上がった私がおすすめするバストアップ必勝法」
「42歳メタボがボディビルダーになるまでに愛用したプロテインを紹介」
これは知らないひとにアドバイスを受けたり、おすすめを受けるわけですが、権威性によって情報が武装され、親友にすすめられるバストアップ法やプロテイン情報を越えるほどの威力があります。
また、自分に経験がない場合や内容に経験が関係ない場合などは偉人の名言や参考に文献などを提示すると権威性が増します。
"1968年に米国心理学者ロバート・ザイアンス氏が発表した論文によって広く知られるようになった「単純接触効果」"
どこかで見たことある権威性ですね。
つまり、面識や交流の経験がなく、権威性が皆無な意見が受け入れられる確率は限りなく低くいです。
検討素材にもなかなか候補入りしないでしょう。
他人の意見に対して「ありがとうございます。参考にさせていただきます。」という返しの99%は社交辞令です。
本当に参考になるほどの意見なら「ありがとうございます。参考になりました。」と返ってくるはずです。
意見が上手ではないひとによくある傾向としては、「自分の意見は正しい」という思想から生み成される「正しいことは受け入れられるに違いない」といった希望的観測により錯覚に陥ります。
正しいか正しくないかは正直どうでもよく、伝えたい相手に採用されない限りは独り言に過ぎないのです。
伝え方のプロは、正しくない情報でも伝えることができます。
なので、プロのテクニックを悪用すると、詐欺が容易に行われます。
つまり伝え方と内容の正誤性は直接の因果関係がないのです。
かの有名な「白雪姫」という物語のなかでは、主人公である白雪姫が見ず知らずの魔女にもらったリンゴを食べました。
そのりんごには毒が含まれており、白雪姫は倒れてしまいました。
この物語を例に、権威性のない他人のおすすめを容易く受け入れても良いことがありません。
白雪姫はけっこうドジっ子で、
「スマホ一台で出来るネットの副業で月100万円稼げます」とDMが来ると、興味を持って食いつくタイプです。
ただ、99%のひとは他人のリンゴをかじりません。
「せっかくリンゴをあげると言っているのに受け入れる気の無い態度はなんなんだ!」
と憤怒しようものなら余計にリンゴは受け入れられません。
特定のひとに意見を伝えたいひとは、他人のことを考える以前に自分のことを鷹の目で観察すると、より伝わりやすい方法が見つかるかも知れません。
伝え方というのはとても難易度の高いことなので、伝わらないことを前提に生きていくことも一つの平和な選択肢なのかな、と。
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著者:KOH (27) / Webフリーランス、経営者、ノマドワーカー
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よくバズってます。
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