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映画「あん」を観て、どら焼きをぱくり。

Judy、「あん」って映画、知ってる?

見たことないなあ。日本の映画なの?

そう!じゃあ一緒に観ようよ!

一体どうやって彼がこの映画のことを知ったのかは謎だが、

こんな流れで、一緒に見ることになった映画「あん」。

調べたら、樹木希林さんが最後に主演をされた作品なのだそうだ。

なかなかに切ない物語ではあるのだが、

それでも作品のあちらこちらに散りばめられた瞬間が
ほのかに温かいまま、胸に残る。そんな作品だった。

あらすじ

物語は、とある街のどら焼き屋「どら春」にて始まる。

甘いものが好きでもないのに、
とある事情から雇われ店長として働く千太郎。

ある日、徳江と名乗る老女が現れ、
「時給300円でもいいから働きたい」と千太郎に懇願する。

最初は適当にあしらっていた千太郎だったが、
ある日徳江が「食べてみて」と持ってきた粒あんがあまりに美味しかったことから
どら焼きのあん作りを徳江にお願いすることに。

次第に、徳江の作るあんの美味しさでお店が繁盛し始める。
そして、徳江と一緒に、あんと向き合いながら過ごすうちに、
千太郎の心にも少しずつ変化が起きていく。

しかし、徳江にはある秘密があった。
彼女に関する、とある噂が、次第に2人の運命を変えていく。

「少しって言ったら少しよ」

千太郎が徳江を雇うと決めると、
徳江は早速、朝早くからあん作りに取り掛かる。

いつも千太郎が使っていた、ドラム缶に詰められた出来合いのあんを見て
これじゃダメよ、と、ピシャリ。

夜明け前から、時間をかけてゆっくりと、
時に小豆に話しかけながら、あん作りに勤しむ徳江。
と、その姿に圧倒される千太郎。


ちなみに、彼はこのシーンを見ながら

「万物には魂が宿っていて、どれも尊重されるべき、っていう考え方が伝わってくる。すごく日本らしい考え方だよね」と言っていた。

なるほど。そうかもしれない。



一方、私が印象に残ったのはこんなやりとり。

「どれくらい入れるんですか」
「少しよ」
「え、少しって…」
「少しって言ったら…少しよ!」

(※記憶に頼っているのでニュアンスです)

あんを作りながら、加える材料を巡って2人が交わすやりとりだ。

思わずふふっと笑ってしまったのは、
自分の祖母もまさに「少しって言ったら…少しよ!」と言い放つタイプだから。
「いやわからないってば!」と訴えるまでがセットとなる。


上記のやりとりのように、徳江は千太郎に対して結構ズバズバとものを言う。


かと思えば、千太郎のことを「店長さん」というちょっと距離感を感じさせるような呼び方で呼ぶ。
本人が話さないことは探ろうとはしないし、自分のことも、そう多くは語ろうとしない。


一見ちぐはぐにも見える徳江の振る舞いだが、
私は、千太郎はこの絶妙な距離感に助けられたんじゃないかな、と思う。

家族でもない、利害関係もない、
たまたま人生ですれ違ったことから始まった関係。

その始まりが、なんとも不思議な、でも心地の良い距離感を生み出したのかもしれないなあ。

何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。

私達はこの世を見るために、聞くために、生まれてきた。
この世は、ただそれだけを望んでいた。
…だとすれば、何かになれなくても、私達には生きる意味があるのよ。

これは徳江が千太郎に向けて語る言葉の一つだ。



生まれてきたからには、何か成し遂げないといけない。「何か」にならないといけない。
そうやってもがき苦しむ人たちをどっしり受け止めてくれる温かさと、

「いま目の前にある光景を、日々をまずは大事にしながら生きていこうよ」
そんな風に語りかけて、一歩立ち止まる勇気をくれる、力強さがある。

徳江の生い立ちを思うと、なおのことこの言葉が沁みるし、
きっと、千太郎もこの言葉に感じるものがあったのではないかと思う。

何かを成し遂げるために、夢を叶えるために一生懸命になれるのは、素敵なことだ。

でも、「何かになれたこと」だけが人生の価値を決めるわけではない。
例え、なにも成し遂げられなかったとしても、
生きてきた意味も、今生きている意味も、
そしてこれから生きていく意味も、全部、ちゃんとここにある。
そう思えることもまた、人生を豊かにしてくれるのかもしれない。

どら焼きが食べたくて

徳江の作るあんこが、とにかく美味しそうで、
見終わる頃には、すっかりどら焼きが食べたくて仕方なくなった。

スーパーとかコンビニで売ってるの、と言うよりは
和菓子屋さんで売っているような、手作り感のあるどら焼き。

映画を見終わり、彼が眠りについてから、
私はてくてく歩いて、和菓子屋さんへ。
お目当てのどら焼きを手に入れて、ホクホクで帰宅した。


きっとどこかで、徳江さんのように、
誰かが丹精込めて、あんこを作ってくれているのかな。

そんな風に思うと、
久しぶりに和菓子屋さんで買ったどら焼きは
いつもよりずっと、あったかくて甘くて、たまらなく美味しかった。


「今日のおやつ、どら焼きにしたよ」

彼に写真を送ると、「いいなあ」の嵐。

今度会えた時は、一緒にどら焼きを食べながらこの映画を観ることにしようか。

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