6月12日 Fiction
まだジトッとする前のこと。
10年来の親友の彼女に初めて会った。
ここ数カ月くらいでできたホヤホヤのやつ。
10年仲良くしてきて、初めてのイベント。
友達の彼女なんて、これまでに何人も会ってきたし、むしろそんじょそこらの人の彼女の前じゃ相当うまく立ち回れる妙な自信はあった。でも無理だった。
出会いは突然だった。
「今から飲もうよ」って男連中のグループLINEにいつも通りの招集がかかって、適当に仕事やっつけてリュック背負ったら、
「○○の彼女もいるから 笑」
……。
急に緊張してる自分に恥ずかしくなった。
多分娘の彼氏に会う親父の気分。
駅に向かってた足を大げさに引き返して、自分で何し始めたかと思えば、仕事場にあったそこらのカメラ機材かき集め始めてた。
初めての出会いをこの手で撮ってやろう。
それっぽい仕事してるから、僕なりのサプライズかな?なんて。
ただ、たかが友達の彼女だよ?何やってんだよってね。
手汗ぬぐって。
居酒屋ついたのは、予定より1時間遅れ。
「どうも〜」
カメラ回しながら。
「すいません、お邪魔します〜〜はじめまして〜」
みんな笑ってくれて。彼女も。友達も。
ピエロピエロ。
でも、何でそんな必死なことしたかった後で分かった。
何で素直に会えなかったかって。普通に。
それは、2人がめちゃくちゃにノンフィクションだったから。
こんなネットの端っこに長文吐き出しては、抽象的な音楽とかカルチャーに逃げ込んでる夢見がちなアラサーフィクションボーイにとって、同棲とか結婚とかが透けて見えるノンフィクションな関係を直視できずにいたんだわ。
そいつに彼女ができてからずっと感じてた。
超イケメンで性格もよくて一途で、でも理想が半端なく高くて、でもそれは多分裏返したら、付き合ったら一生続くわこれって感じ。いつの間にか、そいつだけフィクションから卒業してた。いつも一緒にいすぎて気づいてないふりしてた。レンズ越しじゃないと無理。Zoffの安メガネごときじゃ、その“具体的な感じ”は屈折せず、ダイレクト。直眼球だった。
2人を新橋駅で見送った後、
いたたまれなくなって音楽に逃げ込もうとしたけど、まあアジカンとかチャットモンチーなんか体が受け付けなくて。フィクション半端ないから。
なーにが、君の街まで飛ぶための歌だ、薄い紙で指切っただ、バカ。
受験勉強もろくにせず、就職活動もろくにせず、適当に生きてきたツケが回ってきました。貯金なし、人脈なし、女運なし。あ、あと夏のボーナスもなし。もうちょっと現実的に生きてくるべきでした。
ちなみに、今週水曜にまたネットで出会った新規の女の子と会ってきます。
もう全く緊張しなくなってきました。
人の女じゃ無くて、こっちで緊張しろ、バカ。
あ、あと初めて出会う女と、普段行きゃしない神楽坂を常連ぶって行くのはもう卒業します。すいませんした。
友よ。幸せでいてくれ
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