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EAP(緊急時対応計画)の作り方

ジョンズ・ホプキンス大学によると、米国では約3,000万人の子供と10代の若者が何らかの組織化されたスポーツに参加しており、毎年350万人以上の負傷者を出しています。スポーツ傷害による死亡はまれですが、スポーツ関連による主な死亡の原因は脳損傷だそうです(*¹)。

これらのスポーツ傷害の半分は、安全装備を適切に使用したり、競技環境を改善したり、ケガ防止のためのスポーツ規則に従うことで防げるものです。それでもスポーツにケガはつきもの。有事の際に備える準備、それがEAPです。

Sunbears は スポーツセーフティージャパン と共同でEAPを簡単に作成できるソフトウェア EAP Draw を開発し、会員に提供しています(*²)。今回は、プロでなくても指導者が簡単にEAPを作成できる方法を5つのステップで解説していきたいと思います。


EAPとは?

EAPとはエマージェンシー・アクション・プラン(Emergency Action Plan)の略で緊急時対応計画を意味します。ケガや深刻な病状などの緊急事態の際に迅速かつ最善の措置がとれるよう、関係者の役割を調整するために文書化した戦略的・視覚的な計画です。

日本におけるEAP

スポーツ現場におけるEAPの重要性は理解していても、具体的にどのように作ればいいのか分からないという指導者も多いのではないでしょうか。

「活動しているのは少年団のチームなので、ドクターや看護師、アスレティックトレーナーなどの専門スタッフがいないからEAPは作れなさそう……」(指導者)

「EAPにエリア別マップがあれば分かりやすくなるけど、コンピューターの作業が苦手なので作れない……」(先生)

(出典:スポーツセーフティジャパン)

日本のスポーツ現場でEAPの作成が推奨されるようになったのは、2020年東京オリンピックなど近年日本で開催された大規模な国際イベントが大きく影響しています。それでも日本におけるEAPの認知度や普及率はまだ低いのが現状です。

米国ではEAPは必須であり、専門のスタッフがいない高校などの現場では指導者が作成しているそうです。日本のスポーツ現場でもEAPの利用が当たり前となり常態化するためにも、まずはEAP作成の知識を持つことが重要です。

スポーツ中のケガ(イメージ写真)

EAP作成のポイント

EAP作成の前に大事なのは、どのような緊急事態が発生するかを想定しておくこと。スポーツの現場で想定されるのは、心疾患、頭頸部損傷、熱中症で、これらは日本国内外を問わずスポーツでの死因として最も多いものだそうです。スポーツセーフティジャパンでは、このスポーツ死亡事故の3大原因を「Heart、Head、Heat」のトリプルHと呼んでいます。このほか骨折、脱臼、落雷事故、プールなどでの水難事故なども忘れてはならないでしょう。

こういった緊急事態を想定し、全ての関係者(選手や保護者、監督やコーチなど指導者、施設や団体、周辺の医療機関)との連携でいかに迅速にアクションを起こせるか、ケガ人を搬送できるかの体制を考えてみましょう。

<EAPを作成する際のポイント
● 簡潔で見やすいこと
● 施設・場所別に作成
● イベント別に作成
● チーム単位で作成
● 実戦での迅速な対応を想定したシミュレーション訓練
● 定期的な検証・更新
● 関係者と共有するための配布・掲示
● 消防署や医療機関など関係者への協力要請

(出典:スポーツセーフティジャパン)

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では、EAPを作るための5つのステップを見ていきましょう。

ステップ1:EAPに記載する情報の収集と記入

最初のステップは、記載する情報の収集と記入です。誰がどこにいて、何がどこにあるのか、どこに連絡すればいいのか、また各関係者の役割は何かといった情報が必要になります。

そして一旦EAPが完成したら、施設の安全管理者、施設管理者、周辺の医療機関などに情報を共有し連携の協力を要請しておく必要があります。

EAPに盛り込まなければならない必須コンテンツは以下の通りです。

  • 施設・エリアごとの地図とそれぞれのルート

  • 救急救命用具の設置場所

  • 基本情報(大会名、施設名、住所など)

  • 緊急連絡先(緊急時対応人員と、タクシーや病院などの緊急連絡先)

  • 役割分担

ステップ2:施設(エリア)別マップの作成

Googleマップから会場周辺の地図をスクリーンショットし挿入する方法が一般的です。ただしスタジアムや屋内スポーツの場合は、周辺との位置関係はわかりますが、フィールドやコートの中までは見えません。

Sunbearsとスポーツセーフティージャパンが提供している EAP Draw では、各競技のフィールドやコートがすでに用意されており、絵を描くようにカーソルを操作しEAPを簡単に作成することができます。

ステップ3:施設(エリア)別マップに必要事項を記入する

次にAEDや救急セットなどの救命救急用具の設置場所などを記入していきます。ここで必要な事項は下記になります。

  • 各ルート(救急車・救急隊員ルート、落雷避難ルートなど)

  • 緊急時対応人員の待機場所(事務所、控え室、医務室・処置室など)

  • 用具設置場所(AED、スパインボード、車いす、救急箱、製氷機など)

  • 階段、段差、ゲート、ドアなど搬送の障害となるもの(鍵の場所や担当者)

必要な項目が記載されていても、分かりにくければ迅速な対応ができません。ひと目で分かるような見やすさを心がけてください。スポーツ現場によっては、応急処置の設備や人員により、緊急時の対応が異なる場合があります。また、観客を安全な場所に誘導するためのアナウンスや誘導方法を明確にしておくことも必要です。

ステップ4:役割分担を記入

最後に役割分担を記入します。スポーツ現場で緊急事態が発生した場合、4つの役割があります。

  • 処置(心肺蘇生、AED、応急処置など)

  • 連絡(救急車、レスキュー)

  • 調達(AED、スパインボード、救急箱などの、処置の補助・記録)

  • 誘導(救急車、観客、選手など)

この4つの役割は、誰がケガ人かによって異なる場合があります。試合中に選手が倒れた場合は指導者や審判が中心となって対応しますが、観客が倒れた場合は大会運営者や施設管理者が率先して対応することになるでしょう。

また、指導者である自分自身が倒れる可能性を想定し、そのような状況を自分だけの問題とせず、指導している子どもたちに与える影響に配慮することも大切です。

救命救急用具の設置だけでなく、心肺蘇生やAEDの基礎知識も重要(写真はイメージ)

ステップ5:シミュレーション訓練によるEAPの検証と反映

EAPが完成したら必ず、緊急事態が発生したという想定でシミュレーション訓練を行い、計画通りに対応できるかどうかを検証してください。問題があった場合には、問題点を解決してその内容をEAPに反映させることが必要です。

訓練の時間を計測し、事前に対応時間を把握しておくことも大事です。特にAEDが必要な心臓疾患などの緊急時に備えた対応時間はしっかりと検証しておくことをお勧めします。

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「備えあれば患いなし」ーーEAPを準備しておけば日頃の心配事は軽減します。なにより生死にかかわる緊急事態が発生したようなときにも、パニックに陥らずに冷静な行動がとれるはずです。最悪を想定した準備ーー今からでも遅くはありません。選手や子供たちの命を救うためにもEAPの作成を!

注:
(*¹) 統計はジョンズ・ホプキンス大学がNational SAFE KIDS Campaignおよび米国小児科学会からとして引用
(*²) EAP Drawは有料会員が利用可能

<参考文献>

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